自衛隊の大規模接種センターに予備自衛官の医師・看護官が参加できない「不可解な現実」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月25日放送)にジャーナリストの有本香が出演。自衛隊が運営する大規模接種センターでの新型コロナワクチン接種が始まったというニュースについて、佐藤正久参議院議員を電話ゲストに迎えて解説した。

自衛隊の大規模接種センターに予備自衛官の医師・看護官が参加できない「不可解な現実」

国が運営する新型コロナウイルスワクチンの大規模接種センターで、接種済証交付の受付で案内をする係員=2021年5月24日午前8時44分、大阪市北区の大阪府立国際会議場(代表撮影) 写真提供:産経新聞社

自衛隊の大規模接種センターがスタート

東京と大阪で自衛隊が運営する大規模接種センターで、5月24日から新型コロナワクチンの接種が始まった。東京の会場では、24日の1日で5000人が接種を予約していたが、目立ったトラブルはなかった。来週からは1日あたり東京で1万人、大阪は5000人まで接種人数を増やす。大規模接種は8月下旬までの予定だ。

飯田)自民党外交部会長で参議院議員の「ヒゲの隊長」こと、佐藤正久さんと電話がつながっています。佐藤さん、おはようございます。

佐藤)おはようございます。

飯田)まずは大規模接種センターが始まりましたが、佐藤さんはどのように感じていますか?

国家安全保障会議を開いて自衛隊の運用を決めるべきであった

佐藤)まずは順調な滑り出しということなのだと思いますが、最低でも3ヵ月の長期戦なので、気を緩めることなくオペレーションを継続してもらいたいと思います。しかし、危機管理の観点からは国家安全保障会議を開いて、今回の自衛隊の運用を決めた方がよかったと思います。自衛隊の本来任務は日本の防衛警備です。また、これから梅雨の時期なので、災害派遣もありますから、総理指示という形よりも、国家意思としてもっと早めに国家安全保障会議を経た自衛隊の運用が筋だったと思います。

飯田)今回は1月くらいから、内々に限られた人数で検討されていたという報道がありますが、きちんとした機関決定をするべきだったということでしょうか?

佐藤)そうだと思います。これだけ大規模に自衛隊をワクチン接種という形で動かすというのは、本来任務ではありません。本来の任務に少なからず影響が出る以上は、国家安全保障会議を経るということになれば、その穴埋めを国家全体でやろうと、他の省庁も動きやすくなります。

「如何に自治体の大規模接種を支援するか」が自衛隊のメインストリーム

飯田)コロナ全体が有事だと考えれば、対応を1本化することも考えられるかと思いますが、その辺りはいかがですか?

佐藤)今回は総理も「自衛隊は最後の砦だ、前面に立って欲しい」と。これは総理の危機感と覚悟の表れだと思いますが、最後の砦である自衛隊を動かす以上は、やはり準有事というぐらいの発想で全部を動かして欲しいとも思います。

飯田)準有事として。

佐藤)自衛隊が前面に出て、その姿を見ることで自治体の大規模接種、たくさんの方々の士気の高揚にもつながると思いますし、今回の自衛隊の教訓を自治体の大規模接種の方に促すのも大事なことです。国と地方が一体となってやらないと意味がなくて、自衛隊がやるのは1日あたり最大1.5万人分ほどです。150万回のたった1.5%です。冷静に考えると、「如何に自治体の大規模接種を支援するか」ということがメインストリームになります。そこを勘違いしない方がいいと思います。

自衛隊の大規模接種センターに予備自衛官の医師・看護官が参加できない「不可解な現実」

報道陣に公開された新型コロナウイルスワクチンの自衛隊東京大規模接種センター。はじめに開かれた、編成完結式=2021年5月17日午前、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

災害が起きたときにはそちらが優先される

有本)私も実は大手町の大規模接種センターの前を通りかかって、自衛隊の方々の姿が垣間見えて、まさに有事というか緊急事態なのだな、という印象を強くしました。そのなかで佐藤さんがいまおっしゃったように、少し心配されているのが、大規模接種センターに割かれている人員は限られてはいますが、これから災害の多いシーズンになることと、東京オリンピックも控えています。自衛隊にとっては相当な負担増になるという考えでいいのでしょうか?

佐藤)災害が起きたときは人命救助の方が最優先ですので、場合によっては大規模接種センターの規模を縮小することもあり得ると思います。オリンピックの方は、自衛隊の医療関係者がかなり抑制されるという方向にならないと無理だと思います。全体が準有事だという発想でやらないと、例えば今回の予算は、立ち上がりだけでも50億円近くかかるのです。おそらくもっと上がって行きますが、これを防衛予算の枠内でやれというのも変な話です。

有本)そうですよね。あれは本当に変でしたよね。

災害派遣ではなく、予備自衛官は参加できない~準有事と考えるならば参加できるが

佐藤)これは予備費等も含めて取る努力を我々もしますし、隊員の手当ということもできますが、今回少し変なのは、災害派遣ではないのです。千代田区の方が施設を病院のように指定して、「巡回診療」という形を取っているのですが、災害派遣ではなく普通の自衛隊の病院運営なので、予備自衛官が参加できないのです。予備自衛官の医師、看護官や薬剤師の方からすると、「なぜ自分たちを使わずに民間の看護師を使うのか」と。

飯田)派遣された看護師さんがやるわけですよね。

佐藤)準有事と考えるならば、使える隊員は使うべきで、予備自衛官が参加すれば現役隊員の負担も減って、本来任務の方にも運用できます。そのような準有事的な発想は必要だと思うのです。

水際対策での自主隔離の管理がまったくできていない

有本)水際対策然り、すべてにおいてなのですが、どうしてここまで有事というモードにならないのでしょうか。その根源的な理由は何ですか?

佐藤)霞が関を含めた日本政府が、平時モードから有事モードへの切り替えができない。これが、簡単なようで全然簡単ではない。例えば、今回の水際対策1つを取っても、フォローアップセンターの14日間の自主隔離、これはフォローアップセンターがしっかりメールで確認もしますし、位置情報確認アプリも活用して、ビデオ通話もします。また、警備員を派遣して確認をしてもらう。2月ごろからこの方向性が出て、3月下旬には「やります」と明言していたのです。ところが、蓋を開けてみれば4月はほとんどやっていなかった。この前の部会でも、メールで確認できない人が約22%、位置情報アプリを使っても3割近くの人と連絡が取れない。警備員の人が行こうと思っても、人数も1日20件、それも4月30日から始めています。しかし、「集合住宅に行ったらなかに入れませんでした」と。それでは意味がないわけです。

有本)見回りなんて不可能だと思います。だったら入国させないことの方が大事だと思いますが、どうして入国させているのでしょうか?

佐藤)日本人はなかなか憲法の関係で難しいのですが、再入国も含めた外国人の方については、もっとハードルを上げた方がいいと思います。いまインド株はアジア全体に拡がっています。インド周辺6ヵ国だけを止めても、もうタイやベトナムなどにも拡がっているので、イギリス株と同じように周辺国家から日本のなかに入って来る。タイやベトナムの場合は、空港では抗原定量検査だけで、仮にそれが陰性であれば14日間の自主隔離です。そのチェックも十分にできていないとなると、また市中感染が拡がる可能性もあるので、同じ失敗の繰り返しになります。この辺りは厚生労働省が鍵になります。いくら言ってもなかなか動きが遅くて、まさに逐次戦闘加入、小出し感満載ではないですか。

自衛隊の大規模接種センターに予備自衛官の医師・看護官が参加できない「不可解な現実」

【新型コロナウイルス】自衛隊大規模接種センターの予約が始まった。開始時間と同時に混雑状態となった予約サイト=2021年5月17日午前11時1分、東京・大手町 写真提供:産経新聞社

イギリス株の教訓があったにも関わらず、防げなかったインド株の流入~1ヵ月遅かった措置

有本)インド株に関して、インド周辺諸国からの入国を事実上停止するというのも、感覚的で申し訳ないのですが、2週間は遅かったという気もするのです。

佐藤)今回の小出し感としては、5月1日、10日、14日、21日、そして25日に強化されます。

有本)なぜそのように徐々にやるのでしょうか? 普通に考えれば逆だと思うのですが。

佐藤)危機管理の観点から言うと、大きく被せて強い措置を取るというのが基本ですよね。ところがまったく逆なのです。相手の国のこと、国内でのいろいろな影響などを考えているのだと思いますが、1ヵ月遅いですよね。

有本)そうですね。そう思います。

佐藤)イギリス株の教訓を経れば、インドであのくらいの状況になったとき、速やかに大きく被せなければいけなかった。しかし、日本の市中にインド株が入って来てしまった、防げなかったということは、同じ失敗の繰り返しと言われても仕方がないと思います。

有本)それで国民には自粛しろと、緊急事態宣言が最初は短期でと言っていたものが、1ヵ月以上やるわけですよね。

佐藤)緊急事態宣言が延長するのであれば、やはり予備費を使った強力な経済対策と同時に、水際も強くしなければいけません。国民には「行動範囲を自粛しなさい」と言いながら、外国人がどんどん入って来るような状況では理解されないと思います。

有本)まったくその通りですね。

オリンピックでの水際対策~海外の要人やプレスからの感染をどう防ぐか

飯田)水際で入れないというのは、水際対策をしているとオリンピックが遠のくというようなことも、頭のなかにはあったりするのでしょうか?

佐藤)オリンピックはまた別なのです。これは非常に複雑で、大変なのです。選手やアスリートで1.5万人ですよね。外国のプレスや要人は別です。外国の要人に言うことを聞かせるというのは簡単な話ではなくて、外国のプレスの方なども自由に市中で取材などもしたいでしょう。

有本)それをやられたら、たまったものではないですよね。

佐藤)バブルがパンと弾けますよ。

飯田)関係者や選手はバブルできちんと守りますからね。

佐藤)彼らは参加資格を失うことになりますから。向こうの首相などが来たときに、大使館の人間が空港に迎えに行きます。そして大使の車に乗った瞬間にバブルは弾けます。若い大使の人はワクチンを打っていませんから。そのようなことを考えると、大使館の人間も優先的にワクチンを打たないといけないのです。

有本)それはそうかも知れませんね。

佐藤)いま、「65歳以上でないと接種できない」という同じ基準に外交官も当てはめています。日本人というのは、規則通りに何かを運用することが得意な分野ですから。これは不公平だとか、上級国民だとか、そのような不満がすぐ出て来ると思いますが、必要な人にはすぐ打つべきだと思います。

フランス軍やアメリカ軍はワクチンを打っているが、自衛隊は打っていない

有本)そのような点で言うと、自衛隊の方々は接種していないのでしょうか?

佐藤)自衛隊の医療関係者は打っています。そして、厚生労働省からモデルナの先行接種健康確認を依頼されていますので、24日から打ち始めました。特に、自衛隊は海外へ訓練に行きます。この前もフランスの方と一緒に訓練をしましたが、フランスの方は打っているのです。

飯田)向こうは打っているのですか。

有本)当然ですよ。

佐藤)また、米軍は打っているのですが、自衛隊は打っていない。このような状況は非常にまずいので、今回は先行接種健康確認ということを利用しながらも、数万人に打てるような方向で調整しています。

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