「LINE個人情報管理問題」スクープの内幕~朝日新聞・峯村健司に訊く

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月31日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。3月17日に「LINEの個人情報管理に不備」という記事をスクープした峯村氏にその内幕を訊いた。

LINEのロゴ 政府、LINEに報告要求=2021年3月19日 写真提供:共同通信社

スクープ記事「LINEの個人情報管理に不備」

3月17日に「LINEの個人情報管理に不備 中国の委託先が接続可能」というタイトルで、コメンテーターの峯村氏が「LINE」の調査報道をスクープ。無料通信アプリ「LINE」が、中国にある関連会社にシステム開発を委託するなどし、中国人技術者らが日本のサーバーにある利用者の個人情報にアクセスできる状態にしていたことがわかった。

飯田)前日のツイッターで「峯村砲いきます」と書かれていましたが、あのスクープにはきっかけがあったのですか?

峯村)3ヵ月ほどかけて行った調査報道です。最初は、「中国でLINEアプリの一部を開発しているらしい」という話を掴んで、中国の携帯を使っていろいろと探したのです。すると、それを裏付けるような「証拠」が次々と出て来たのです。

飯田)もうその時点で。

積極的に人を募集していた「LINE China」

峯村)「LINE China」というLINEの中国の子会社があるのですが、積極的に現地の人を募集していました。その募集では、AIの技術開発者やアプリ開発者、日本語と韓国語に訳せる人などの求人情報がたくさんありました。「これは何だ?」と思って、読み解いて行くと、「中国でほとんどアプリを開発していたのではないか」ということがわかりました。その証拠をもとに、LINE関係者に取材を重ねて行くと、LINEのアプリ自体は中国で開発していて、日本の利用者の個人情報が入っているサーバーにアクセスをしていたのではないかということがわかった。LINE側にも何度か取材を重ねて、3月17日のスクープに至ったという感じです。

管理もせず、数字も把握せず、ズサンな管理体制

飯田)LINE側にもかなり細かく当てて、向こうからも「対処します」というような証言も取っていますよね。

峯村)今回、相手は国や自治体の事業も請け負う重要なプラットフォームです。いかなる間違いがあってはいけないと思ったので、LINE側の幹部に3日間かけて膝詰めで取材をしました。合計時間は15時間ぐらいになると思います。

飯田)「対策まで引き出す」ということになると、相当な意思決定ができる幹部が相手ということになるのですか?

峯村)LINE社の幹部や役員クラスの人たちと事実確認をしました。LINEは日本国内で8600万人が利用する大企業。私も初日に取材に行くときは緊張しました。

飯田)緊張を。

峯村)ところが実際に取材してみると、「ズサンだ」というのが印象でした。「LINEの子会社の中国人がアクセスしているかどうか」という、こちらの知っている情報を当てたのですが、最初に言っている答えと翌日言っている答えが全然違っていたのです。彼らは「うちはしっかりと中国人従業員のチェックもした上で、日本のサーバーにアクセスできる権限を与えています」と言っていました。「では、何人ですか?」と聞くと、「ええと、数えて来ます」と言って、時間をかけて数えたら、「わかりました。9人の社員がやっていましたが、アクセスはしておらず、問題はありませんでした」と断言しました。しかし、翌日、聞きに行くと、「すみません、やはりアクセスは少ししていたみたいです」というような話になって、とどのつまりは「すみません、9人ではなくて4人でした」と。ちょっと待てと。あなたたちは「セキュリティをチェックして、しっかりとした人に権限を与えて、すべて接触したあとは見ています」と言っていたけれど、それは嘘ではないか、という話になりますよね。私が今回取材をしなかったら、その管理もできていなかった。数字も把握できていなかったというところが問題だったと思います。

すべてのデータを日本に移す~最初の計画である2021年中は無理か

飯田)あれだけ多くの人が使っているので、心配する方も多いですね。「LINEの個人情報に誰でもアクセスすることができたという問題、記者会見で情報を日本だけで管理して行くと言っていましたが、実際のところその取り組みはどこまで進んでいるのでしょうか? あまり先の情報が出て来ないので教えてください」(“やよちゃん” 八王子・51歳)というメールもいただいています。

峯村)そうですね。表向きには「すべての情報は日本国内のサーバーにあります」と説明していたのですが、蓋を開けてみたら、画像などの重いデータはすべて韓国にあったということが、私の続報でわかりました。これまでLINE幹部は国や自治体に対し「データは暗号化されており日本のサーバーに保管されています」と説明して来ました。この報道を受けて、「韓国のデータも含めて、すべて日本国内に移す」と謝罪会見では言いました。しかし、相当な分量のデータなので、最初の計画だと2021年のなかごろという話が、なかごろ以降という話になって来ています。

飯田)「シレッ」と、後ろになっているのですか。

峯村)はい。そのようなことがあって、私は今後も取材を続けて行きますが、2021年中にできるかどうかも微妙な情勢だと思います。

「日本の純正なアプリ」と虚偽の説明をしていた~ワクチン接種の情報をLINEに任せていいのか

飯田)もともとこのアプリは、日本で開発されたのだということが喧伝されていましたが、蓋を開けてみれば「韓国企業」だという話でした。そこからまた資本関係が入り乱れましたよね。

峯村)私もLINEの幹部に聞いたときは、「これは純正な日本のアプリで、日本で管理しています」と言っていたのです。国会議員の方にもそのような説明をしていたそうです。その意味では虚偽の説明ですし、この体質のまま、ワクチン接種などの情報もあの会社にやらせていいのかということは、まだ疑問に思っています。

「LINE」というニュースのプラットフォーマーに風穴を開けることができた

飯田)聞きにくいことを聞きますが、新聞にはいろいろな広告が出ているではないですか。そちらからのプレッシャーはありませんでしたか?

峯村)弊社もLINEニュースや親会社のヤフーなどと提携していますが、いかなる圧力もありませんでした。だからこそ、今回このように書けたのです。ただ、相手がとても大きな企業ですし、日本だけでなく、韓国の親会社もいるということを考えると、報道して最初の1ヵ月くらいはやはり緊張しましたね。

飯田)しかも、ニュース配信もやっているので、メディアにとっての存在感はまた別にあります。

峯村)そうなのです。実はここは穴になっているのです。「LINE」と「Yahoo!」が統合したことで、ニュースの2大プラットフォームができたわけです。そこにいろいろなメディアがニュースを載せているのです。朝日新聞なども、「Yahoo!ニュース」に乗せていただくと、アクセス数が変わります。しかし、そのようなプラットフォーマーに対する監視は、いままでなかなかできていなかったのです。そこに今回風穴を開けたということは、意義のある報道だったと自負しています。

飯田)プラットフォーマーというと、GAFAのようなアメリカ企業のものが多いので、「それはアメリカの話でしょう」というイメージがあったのですが、そんなことはないのですね。

峯村)アメリカのGAFAもそうですが、国家を上回るような存在になって来ているので、このようなところの監視は、これからも考えて行かなければいけないと思っています。

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