リモートワークの定着によって変化する「就職先を選ぶ基準」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月2日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。2022年新卒の採用面接が6月1日に解禁されたというニュースについて解説した。

リモートワークの定着によって変化する「就職先を選ぶ基準」

【就職活動解禁】スーツ姿で会場入りする学生ら=2021年3月1日午前、大阪市住之江区 写真提供:産経新聞社

新卒採用の面接、6月1日解禁

2022年春に卒業する大学生・大学院生を対象にした採用選考が6月1日に解禁され、大手企業を中心に本格的に面接が始まった。昨年(2020年)のようにコロナの影響で選考が停滞する動きは少なく、就活は早くも山場を迎え、民間の調査では5月1日時点で既に6割近くの学生が内定を得ていて、この5年で最も高い水準となっている。

飯田)面接をwebでやる企業が非常に多くなっています。

佐々木)去年(2020年)はどこも手探り状態でやっていたのが、1年経つと「オンラインでもいいのではないか」とだいぶ定着して来ています。この流れを見ていると、大学生の就職面接に限らず、リモートワークを認めるかどうかも含めて、相当温度差が広がって来ているという感じがします。

リモートワークを認めるかどうか~対応によって人材確保に格差が広がる可能性も

佐々木)コロナが終わったあとに、リモートワークやオンライン面接を続けるのかどうかですね。元に戻すと言っている会社も少なくありません。私の知り合いの会社でも、いまは週1~2日で出勤にしていますが、「収束したら全日出社にする」と言うところがあります。

飯田)収束したら戻す。

佐々木)オンライン面接によって、地方の学生が就職しやすくなった部分があります。いままでは交通費を使って東京に行かなければならなかったのが、上京しなくても受けられるようになった。企業側も、いままでだったら地方に埋もれていたかも知れない優秀な人材を採用しやすくなるではないですか。そうすると、オンライン面接やリモートワークを積極的に採用している企業の方がいい人材が集まりやすくなり、やっていない会社にはいい人材が集まりにくくなる。転職するときでも、「リモートワークにはどのくらい対応していますか」と聞いて、その対応度によって転職するかどうか決めるという話にもなって来るので、ここで格差が広がるのではないでしょうか。

リモートワークができない現場仕事に人材が集まりにくくなる

佐々木)一方で会社によって、エッセンシャルワーカーは特にそうですが、現場仕事をしていて、どうしてもオンラインではできないところもたくさんあるわけです。今後そこに人材が集まるかどうかという問題も出て来ます。そういう格差の問題にもなって来るので難しいところです。

地元にいながら東京の企業に就職する「地元企業離れ」が出て来る可能性も

飯田)いままでだったら「地元企業優先で」としていた人たちの、メリットとデメリットがはっきり分かれて来る。

佐々木)例えば東京の企業でも、週に1回の出勤でいいということであれば、静岡や山梨くらいなら勤められるではないですか。あとは自宅にいながら、リモートワークで働く。親の関係などで家から出ることができなかった山梨や静岡や茨城などの学生が、いままでは地元で就職していたけれど、この状況なら、東京で就職して実家に住みながら働くということも可能なわけです。実際に、出勤が週2回でいいということになって地元に戻った人もいますよね。

飯田)います。

佐々木)そうなると、今後、地元に回帰するのだけれど、地元の企業には就職しない「地元企業離れ」というパターンが新しく出て来る可能性があります。

飯田)逆に、大学で都心に来ている学生さんたちが、地方の企業にも就職しやすくなるということですか?

佐々木)それもあり得ますよね。そこで「何を基準にして就職先を選ぶか」が変わって来るでしょうね。いままでは、どこの土地で就職するかが重要でしたが、「どこの土地が」という基準が揺らいで来る可能性はあります。

テクノロジーの進化によって変化して来る「土地のあり方」~東京集中の必要性がなくなる

飯田)街づくりの仕方も変わるかも知れませんね。エンタメもいまは東京集中になっていますが、これも変わるかも知れない。

佐々木)実際にいまはアマゾンプライムやネットフリックスで新作映画が観られるわけで、地方と都市の関係が入れ替わって来ているところもあります。

飯田)いままでであれば、「人がたくさん集まるところでいろいろな化学反応が起こるから、東京や大都市に集中する」ということが説明されていましたが、それがネットによって変わる可能性があるということですね。

佐々木)これまでは、工業生産のために工場に人を集中させるということはあったのですが、いまの時代、工場に人を集める必要はそれほどないわけです。たくさんの人が集まって、そこからイノベーションが生まれるようになったのが都市の意味だと言われていますが、ズームの会議やクラブハウスのような音声で盛り上がるのであれば、「物理的に人が集まらなくても、イノベーションは生まれるのではないか」という方向性が見えて来ています。

飯田)物理的に集まらなくても。

佐々木)現在はズームにしても、喋りやすくないし、少しタイムラグがありますが、これが5G通信になると遅延がなくなるのでやり取りしやすくなる。例えばVRで目の前にいるかのように喋れるとかね。そうすると、さらに土地の意味が変わって来ると思います。

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