ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月14日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。6月13日に閉幕したG7サミットについて解説した。
G7サミット、テーマに透けて見える中国の存在感
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イギリスのコーンウォールで開催されていた主要7ヵ国首脳会議(G7サミット)が6月13日、首脳宣言を採択して閉幕した。宣言には「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調し、両岸問題の平和的解決を促す」と明記。中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する発展途上国へのインフラ投資を進める方針も盛り込んだ。
飯田)11日から開催されていたG7サミットですが、日本時間の13日夜に閉幕しました。中国の存在感、テーマとしては、そこが透けて見えるような形でしたが、どうご覧になりましたか?
日本にとっては100点満点に近い結果に~「正面から中国に対抗する」意見の一致を見た
須田)やはり中国一色のサミットになったと思います。内容的には、菅総理や日本にとって、100点満点に近いような結果になったのではないかと思います。大きな枠組みとしては、第二次世界大戦後、アメリカとヨーロッパがつくり上げて来た「世界のルールの枠組み」を中国が壊そうとしている。そして新たなルールや枠組みをつくろうとする挑戦に対して、「正面から対抗して行く」という意見の一致を見たということが、今回のサミットの成果だったのではないでしょうか。
これまで西側先進国が放置して来た南北問題~発展途上国は振り向いてくれるのか
須田)今回、「一帯一路」構想が槍玉に挙がったわけですが、1970年代から南北問題が国際問題化していました。1970年代というと貿易摩擦の問題、西側先進国の間の問題、それから南北の経済格差の問題がありました。北半球と南半球を比べると、南半球は発展途上国など経済的に遅れた国が多いと。この経済格差をどうするのか、問題解決が図られないまま来て、結果的にその矛盾を中国側に突かれたのです。
飯田)なるほど。
須田)そして国連という数の国際政治の舞台に、中国が多数派工作をして行く。そういう点を考えてみると、これまで日本を含めた西側先進国が放置して来た問題ではないかという側面があるのです。ここに来て中国の一帯一路構想によって、いろいろな問題や矛盾が生じていますが、果たして発展途上国は西側先進国の方に振り向いてくれるのか。これまで放置していた問題に対して、どう考えているのかというところがあると思います。
飯田)確かに資金を欲する、これから成長しようという国にしてみたら、中国がいちばんお金を引っ張って来たい国というわけではないかも知れないけれども、他に手を差し伸べてくれる国がなかったではないかと。
有償、無償含めて西側先進国は途上国にどう取り組んで行くか
須田)おっしゃる通りです。手を差し伸べて来なかった西側が、中国の動きに慌てて手を差し伸べているという構図になるわけです。とは言っても、西側の考え方としては、無条件に資金や技術を援助することは難しいのですよ。
飯田)西側の考え方としては。
須田)有償、無償の問題で、無償の部分はある意味、人道的な動きがあるにしても、それだけではいけないから有償のところも出て来るわけです。中国側はそういうところに甘い言葉で入り込んで、有償のところにも何となくうまく入って行く。そして結果的に借金のカタではないけれども、いろいろな権益を取り上げる。確かにそこは問題なのですが、そういう途上国を食い物にするようなことを、他の西側先進国はやって来なかったのかと言うと、必ずしもそうではありません。
飯田)今回もインフラ支援の枠組み創設が盛り込まれましたが、環境に配慮するなど、西側らしいいろいろなエクスキューズがついている辺り、条件が緩く「何でも貸してやる」という中国にどこまで対抗できるかと。
須田)実効性を持つのかどうかというところですね。
新型コロナの途上国へのワクチン提供も遅れた西側
須田)しかも途上国に対する新型コロナウイルスのワクチン提供も立ち遅れて、自国第1主義というところに入ってしまった。とは言っても中国のワクチンはほとんど効果がなくて、日本の官邸が把握しているところで言えば、有効率10%程度というところですから、やはり西側のワクチンを必要としている部分があります。それに対して、いかにスピーディに対応して行くことができるのか。そして最近注目しているのが、中露同盟ですね。特に安全保障面での中国とロシアの同盟関係です。しかし、それは必ずしも1枚岩ではなく、バイデン大統領がプーチン大統領と首脳会談をしたいと。
飯田)16日に予定されていますね。
須田)それを提案したところ、あのプーチン大統領が喜び勇んでと。そういう形で、いろいろなところにくさびを打ち込んで行くということが必要だと思います。
中露にどう対抗して行くか~それぞれ一枚岩ではない西側
飯田)対露関係で考えると、ヨーロッパ各国はエネルギーでつながっていたりもするので、なかなか一枚岩にはなれない、融和的な国もあれば強硬の国もあるという話もありますよね。
須田)対中国にも、一枚岩ではないところがありますから、どうやってそれぞれの国の利害を調整しつつ、足並みを揃えて行くかというところが今後は重要になって来ると思います。特にドイツやイタリアなど、これまで親中的だった国々がどういう動きを示して来るのかというところがポイントだと思います。
飯田)その辺り、ドイツもフリゲート艦をアジア方面に派遣するということを出していますが、中国にも寄港することになっていて、イギリスの空母打撃群の動きとは少し違っていますよね。
TPPに入ることはできない中国
須田)はい。しかしそうは言っても、クアッドの枠組みがアジア太平洋の基本的な枠組みですから、ヨーロッパ勢に全面的に期待するということにはならない。むしろTPPへのイギリスの加入問題という方に注目しているのです。TPPはルール同盟ですから、中国が参加したいという希望を持っても、TPPのルールのなかで中国の仕組みは馴染まないのです。中国のやり方をそのまま入れようとしたら、TPPは成立しませんからね。
飯田)国有企業があって、非関税障壁も恣意的に運用できてしまうとなると、透明性の高いルールのなかでは、できないですよね。
須田)特に問題なのは、紛争解決ルールです。これは中国にとってみると、二重の国際的な紛争解決の手段と、国内ルールがせめぎ合ってしまいますから、そこだけは絶対に乗って来ることはないだろうと思います。
飯田)そうですよね。国際司法裁のフィリピンとの間の領土に関する裁定も、中国は破り捨てていますものね。そういう自分たちに不利なルールには乗って来ない。
須田)逆に「守りますよ」と言って入って来て、結果的に守らないというのが中国のやり方ですから。
飯田)WTOはまさにそれだったのですよね。
須田)そうですね。だからそこはどう扱うのかということがありますが、中国が入って来ることは、全体として考えていないのではないかと思います。
東京オリンピック・パラリンピック~新型コロナウイルスの克服に向けた世界的な結束の象徴として、安全かつ安心な方法で開催することを支持する
飯田)なるほど。そしてもう1点、G7の声明のなかにも、東京オリンピック・パラリンピックについて、「新型コロナウイルス克服に向けた世界的な結束の象徴として、安全かつ安心な方法で開催することを支持する」と明記されたようです。
須田)当然のことです。これを聞いたとき、「明記しなくてはならないの?」くらいの反応だったようです。「開催するか否か」ということが、いかに日本の国内事情というか、日本国内だけで盛り上がっている話ではないかということです。
飯田)「感染者数も少ないよね」というところで。
須田)東京オリンピック・パラリンピックは、日本国内の政治的な思惑で使われていた節が大きいのではないかと思います。
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