ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月1日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。アメリカと台湾がオンラインで実施した貿易や投資に関する協議について解説した。
アメリカと台湾が5年ぶりに貿易協議を再開
アメリカと台湾は6月30日(現地29日)、貿易や投資に関する協議をオンラインで実施した。両国の協議は1994年に署名した「貿易投資枠組み協定(TIFA)」に基づくもので、サプライチェーンなど幅広い分野の協力強化を確認した。協議は2016年以来、5年ぶりの再開となっている。
飯田)これは経済安全保障の話ですが、リアルな安全保障の方が、いま、かなりきな臭くなって来ています。
「フィナンシャル・タイムズ」のスクープ~日米がトップシークレットで、台湾有事に備えたウォーゲームをしている
峯村)ちょうど、私のワシントン特派員時代の友人で、「フィナンシャル・タイムズ」の記者、ディミトリ・セバストプロ氏から「スクープを書いたぞ」と連絡が来ました。「アメリカと日本がトップシークレットで、台湾有事に備えたウォーゲームをしている」と。
飯田)ウォーゲーム。
峯村)ドでかいスクープです。これもおそらく日本とアメリカが台湾有事への危機感を強めているということだと思います。アメリカ軍の高官なども、どうも「危ないよ」ということを言い始めているので、その辺りを受けた対応だと思います。
最近のウォーゲームでは厳しい戦いを強いられているアメリカ~台湾への距離の差によって中国が有利
飯田)峯村さんは台湾の有事に関して、去年(2020年)の8月に月刊文藝春秋にも書かれていましたが、アメリカが単独で中国と立ち向かおうとしたときに、最近のウォーゲームでは、アメリカがかなり負けているという話がありました。それは基本的に、アメリカ単独でやろうとした場合のシミュレーションということですか?
峯村)そうですね。私が参加したのは、アメリカの軍やシンクタンクが主体でやっているウォーゲームでした。いずれの結果もアメリカ側が劣勢というものでした。アメリカよりも台湾に近い、中国の方が、戦略的に有利なのです。もし、アメリカが台湾有事で部隊を展開しようと思うと、太平洋をまたぐ必要が出てくる。。では、どこに拠点を置くかというと、グアムと日本にある米軍基地、あとは空母しかない。どうしてもアメリカは地理的に不利な立場を埋めることができず、厳しい戦いに追い込まれるの状況です。
台湾有事への事態はエスカレートしている
飯田)そこで、日米同盟を含む日本の役割となります。いまのスクープというのはその部分で、中国からすると相当センシティブですね。
峯村)私もこれは超ド級のスクープだと思いますけれども、基本的には「一つの中国」の原則があるので、台湾の有事を語るのはタブーだとされてきました。特に日本では。私も自民党の部会などで、台湾有事について話したことがあるのですが、「台湾有事」をタイトルに使おうとすると、、「それは刺激的過ぎますね」と言われるのです。
飯田)刺激的過ぎると。
峯村)「台湾有事を考えている」ということを対外的にアピールすることが、1つの抑止になるのです。「我が国はきちんと考えていますよ」ということを言わなければいけないのに、それを誤魔化してしまう。そのくらいセンシティブなものなのでしょう。にもかかわらず、実際に日米で台湾有事を想定した合同演習をやっているとすると、かなり事態はエスカレートしているということです。
海上封鎖のような、武力だけではないやり方で中国が攻めて来る可能性も
飯田)しかも、現地ワシントンは6月30日だと思いますが、7月1日、中国共産党創建100年のタイミングで出して来るというのは、タイミングも計っているのですか?
峯村)その辺りはあとでデミトリーに取材してみますが、絶妙なタイミングですよね。台湾侵攻に関してはいろいろな意見があります。先日もアメリカの制服組トップのミリー統合参謀本部議長が、「2年以内に中国が(台湾に)軍事侵攻することはない」と言いました。日本のなかでも「リスクを取ってまで軍事行動は起こさない」という人の方がまだ多いと思うのですが、ミサイルを撃ち、爆撃機を飛ばすような軍事侵攻だけではなく、内部からいろいろな協力者をつくって瓦解させる、またはゲリラ戦やテロをやる。例えば海上封鎖のようなことで、武力だけではないやり方でやるのではないかというのが、私のシナリオのポイントなのです。
飯田)まさに孫子の「戦わずして勝つ」ということですね。
峯村)そういうことですね。そこも含めた包括的な想定を考えて対策を練らなければならないと思います。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。