テロとの戦いで何の成果があったのか ~「アメリカ同時多発テロ」から20年

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(9月13日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。9月11日で事件から20年を迎えた「アメリカ同時多発テロ」について解説した。

テロとの戦いで何の成果があったのか ~「アメリカ同時多発テロ」から20年

世界貿易センタービルに接近するハイジャックされた航空機(左)と、衝突炎上する世界貿易センタービル。手前右に見えるノースタワーに続きサウスタワーに2機目の民間機が衝突した(アメリカ・ニューヨーク) AFP=時事 写真提供:時事通信

「アメリカ同時多発テロ」から20年、グラウンド・ゼロで追悼式

2977人が犠牲となったアメリカ同時多発テロから9月11日で20年が経ち、ニューヨークの世界貿易センタービルの跡地「グラウンド・ゼロ」では追悼式典が行われた。式典には遺族の他、バイデン大統領とジル夫人、オバマ元大統領やクリントン元大統領などが出席した。

新行)日本人24人を含む2977人が犠牲となった、アメリカ同時多発テロから20年。8月末にはアフガニスタンからアメリカ軍が撤退したこともあり、20年にわたるテロとの戦いは、大きな転換点になっています。

須田)実は、私は2001年9月11日の前日まで、マンハッタンで取材をしていました。特に世界貿易センタービル、当時はツインタワーと呼ばれていたのですが、ここへ9月10日に取材に行っているのです。だから1日ずれていたら、場合によっては私もここで話していないのです。当時、取材させていただいた方は全員亡くなっています。

新行)そうなのですか。

須田)それまではアメリカ経済は絶好調でして、株価も上昇しているという状況でした。そのなかで、アメリカの中枢であるニューヨークでテロが起きた。アメリカは建国以来、本土が攻撃されたことがないということを1つの誇りにして来たのですが、テロによって世界貿易センタービルなどが標的にされ、攻撃されたのです。

新行)そうですね。

須田)アメリカはもう、冷静になって考えられないくらいに復讐の方向へ舵を切りました。そしてアフガニスタンとの戦争に踏み切った。そういう流れでした。

捜査資料の一部をFBIが開示

新行)それが撤退ということになった。これは大きな転換点になりますが。

須田)アメリカ同時多発テロに関する捜査資料について、バイデン大統領の指示でFBIの捜査資料の一部が開示されました。当時はどういう状況だったのか。マスコミが指摘していたのは、黒幕としてのサウジアラビアの存在です。オサマ・ビンラディンという主犯がサウジアラビア出身ということもあって、その関与はどうだったのかというのが、いくつかあるうちのポイントの1つだったのです。

新行)サウジアラビア出身ということで。

須田)開示された資料によると、「それは証明されていない」、「具体的な記述はなかった」ということなのです。

新行)なるほど。

須田)もう1点、ある種の陰謀論めいてしまうのだけれども、「アメリカの諜報機関は事前にテロが発生するであろうことを察知していたけれども、それを防ぐことなく黙認した」というような噂もあります。「アメリカの軍産複合体が戦争を欲していたから、戦争に踏み切らせるために黙認した」という話もあったのだけれども、それについても未だ立証されていません。

アメリカ国民の2割は同時多発テロのあとに生まれている

新行)アメリカで同時多発テロが起きたとき、私は小学生でしたが、報道によりますと、アメリカ国民の2割は同時多発テロのあとに生まれているということです。この記憶をどうつないで行くかという部分もあると思うのですが。

須田)ただ、跡地へ行きますと、そのときのメモリアルが展示してありますし、ロウアーマンハッタンにあるバッテリーパークの公園には、世界貿易センタービルにあったオブジェが置かれています。高熱で溶けているのですけれど、展示されて見ることができるようになっています。アメリカ本土がテロによって攻撃されたということを風化させないようにする動きは、やはりあります。

新行)私も2年ほど前に、9.11のメモリアルミュージアムに9月に行って見ました。

須田)「どなたが亡くなったのか」というところも全部刻印されていますし、蝋燭が灯されています。このテロは物理的にアメリカに大きな傷を残したということに加えて、アメリカ国民の精神的な部分にも大きな傷跡を残したのだと思います。

テロとの戦いで何の成果があったのか ~「アメリカ同時多発テロ」から20年

26日、アフガニスタン首都カブールの空港付近での爆発で負傷し、手当てを受ける男性(UPI=共同) 写真提供:共同通信社

20年間のテロとの戦いで何の成果があったのか~テロが中央アジアに拡散する恐れも

須田)もう1つの大きな傷跡は、この20年間、テロとの戦いをやって、何か成果があったのか、何か結論を出したのかということです。確かに首謀者のオサマ・ビンラディンはアメリカ軍が殺害しました。ただ、テロとの戦いが終焉に向かったかというと、そうではない。もともとタリバンがオサマ・ビンラディンを匿っていて、アメリカの要求に従って差し出さなかったというところから、空爆が始まっているわけです。そのタリバンがここへ来て、アフガニスタンの支配者に復帰しているのです。

新行)そうですね。

須田)そのなかにアルカイダは残っているし、アルカイダから分派したさらに過激なISもいます。アフガニスタンには5千人の戦闘員がいると言われていて、今回、タリバンが実権を掌握したことによって、それが拡散して行く。例えば中央アジアや中国へ拡散するのではないかという懸念が出て来ています。むしろ、テロとの戦いが深まっているのかなと思います。

新行)またアフガニスタンがテロの温床になるのではないかという懸念ですよね。

須田)もう十分なっているのだろうと思います。

新行)既に。

須田)近隣の国はそれが怖いものだから、タリバンに資金を提供する。それによって、テロが拡大されて行く可能性もないわけではないと思います。

アメリカは今後、アフガニスタンにどう向き合うのか

新行)今後、「アフガニスタンに対して、アメリカはどう向き合うのか」ということは、課題になりますか?

須田)実効支配はしているけれども、民主的な手続きでできた政権ではありません。西側先進国にしてみると、タリバン政権を承認するのはかなりハードルが高い。だからといって放置すると、テロの温床になる可能性が出て来る。これに対して、なかなか実効的な対策を講じるのが難しい。タリバンを交渉相手にしなければならないのだけれども、その一方で、手続き上に問題があるということで、非常に悩ましい状況になると思います。

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