ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月27日放送)にジャーナリストの末延吉正が出演。クアッド首脳会合がワシントンで行われ、共同声明を発表したというニュースについて解説した。
クアッド首脳会合、共同声明を発表
日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4ヵ国の枠組み「クアッド」による初の対面での首脳会合が、9月24日にアメリカのワシントンで行われた。発表された共同声明では中国を念頭に、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向け連携して行くことで一致。今後も首脳会合を毎年開催するとしている。
飯田)クアッドについて、どうご覧になりますか?
中国を包囲するためには何が必要か~実務者協議では日本も中心的な役割になる
末延)実務的に「中国を包囲するときに何がいるのか」と言うと、5Gのインフラ、気候変動、ワクチン供与などがあります。中国が一帯一路で進んで行くなか、対抗する枠組みができて、実務的な合意がたくさんあった。ただし、共同記者会見など、政治的なメッセージを強く出し過ぎて中国を必要以上に刺激することは避けた。
飯田)必要以上に刺激することは。
末延)この時期にファーウェイの副会長が司法取引で釈放されたでしょう。
飯田)孟晩舟という人が。
末延)中国が拘束していたカナダ人も釈放された。カナダも動いたけれど、中国と話をするというところで、パイプは切れないようにする。ただし、中国の拡大路線は止まらないから、デジタル人民元を見てもわかるように、囲い込むには、具体的に5Gのインフラや半導体のサプライチェーンなど、中国に頼ってしまうところを自分たちでできるようにする。
飯田)中国に頼らないように。
末延)それを実務的に全部発表して、これから実務者協議をやるのですが、日本も中心的な役割なのです。そういう意味では、このクアッドの会合は大きい。本当は辞める総理大臣が行くのではなくて、うまく調整して新しい総理に行って欲しかったけれど。
今後、影響力を持つクアッド
末延)非常に重要です。軍事については別のニュースになっていますが、オーストラリアに米英が原子力潜水艦の技術供与をして、フランスとの契約が破棄されることになり、アメリカとフランスが揉めたでしょう。
飯田)揉めていますね。AUKUSという枠組みですか。
末延)これはいいことです。イギリスとアメリカがフランスに技術を供与して、南太平洋に中国が出て来るところをオーストラリアが原子力潜水艦で守るということは、ある種、核の抑止の一翼をオーストラリアが担うということで、軍事的には大きな変更です。
飯田)オーストラリアが一翼を担うということは。
末延)相当、中国は参ったという感じを持っています。軍事の方はこの3ヵ国でやりながら、しかし、あまりその側面を出すと、インドはインドで上海協力機構にも入っていて……。
飯田)中国やロシアとの枠組みにも入っていますね。
末延)あそこは地図を見るとわかりますけれど、インドは中国やミャンマー、イランなどと国境が近い。みんな国益が違うところがあるから、あまりインドを追い込まずにやらなければいけません。しかし、実務的にサプライチェーンや半導体、5G、インフラなどを、あまりにも中国性善説で任せ過ぎましたよね。気が付いたらみんなやられていた。
飯田)そうですね。
末延)遅ればせながらですが、クアッドはこれからいちばん影響力を持つと思います。
議長国として難しい中国と台湾のハンドリング~国際政治と国内政策が直結する
飯田)クアッドは経済安全保障という枠組みとして見た方がいいのですか?
末延)もう1つ最近のニュースで、TPPがあります。アメリカ抜きで日本が主導する、安倍政権最大の成果だと言っていいと思いますが、これに中国が参加を表明して来た。そして台湾がさらに参加表明した。2021年、TPPは日本が議長国なのです。中国と台湾のハンドリングはとても難しい。だから新政権ができてG20があり、環境会議があって……。
飯田)COP26ですね。
末延)それと合わせて、TPPのハンドリングを間違えると、大変な問題になります。「台湾有事」と言われたでしょう。このなかに「TPPのハンドリングをどうするか」ということも入って来た。国際政治の動きと国内の政策が直結しているのです。
飯田)国内の政策が。
末延)それにしては、総裁選の議論も総花的で、目の前に来ている危機に対して「どうするのか」という戦略をもっとはっきり詰めるべきです。野党は依然ドメスティックでしょう。逆に言えば、昔イギリスがやっていたようなシャドーキャビネットを用意して、主要閣僚の名前を出し、「自民党に対してこういう政策でやる」「対中政策はこうやる」というようなことをはっきり出すべきなのです。そうすれば、みんなに報道してもらえるのです。「報道しないなんてけしからん」などとメディア批判をはじめたところが危ないです。メディア批判を自由にできるというところがまたいいわけで。
日本は再び技術開発を進めるべき
末延)中国はその自由がありませんから、そういう意味では、「クアッド」と「米英が原潜の技術をオーストラリアに供与」というのはビックニュースでした。
飯田)その辺りで「日本はどうするのか」ということが、総裁選に絡んだテレビ番組でも議論になっていました。2対2で割れていましたが、高市さんや河野さんは、「原潜を持つことを視野に入れるべきだ」という話をしていました。
末延)憲法や9条について、左右に分かれて神学論争をやって来たけれども、もう終止符を打たなくてはならない。これまでサイバーセキュリティのような技術はなかったのですから。常に世の中というのは技術革新によって、その概念が変わって来ているわけです。古典的な右左のイデオロギーのレッテル貼りをやめて、日本としてどう国益を守るのかというところを、柔軟かつ具体的に話さなければならない時期に来ているのです。
飯田)具体的に。
末延)日米同盟を基軸にしながら、クアッドで協力関係をつくり、もう1度日本の技術開発を伸ばす。研究費などももっと出さないといけない。コロナ禍で私たちは、これだけ感染症に弱くて、ワクチンも自分のところでつくれないのかと。自分たちは医療大国であるとか、先進国だと言っていたのに、ガッカリしたではないですか。
飯田)そうですね。
末延)必要なところには必要な予算を投入するべきだし、アメリカに対して、日本は技術力や研究力でやって来た国です。もう1度そこに投資する、そこに人材を送れるようにしないといけない。大学を見ていても、研究費がなくて大変なことになっています。
飯田)大学でも。
末延)学術会議問題で割れたけれど、もう民政と軍事は、いままでのように簡単に線引きできないのです。野党のリベラル左派の人にも言いたいけれど、頭のなかを入れ替えてもらわないと、世界について行けなくなってしまいます。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。