若者の投票率を上げるためには何が必要か
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月29日放送)に元内閣官房副長官で慶應義塾大学教授の松井孝治が出演。選挙における若者の投票意欲について解説した。
衆院選 若者の投票意欲について
選挙のたびに課題となる若者の低投票率問題。「投票しても何も変わらない」との無力感が背景にあるとも言われるが、ここでは慶應義塾大学教授である松井孝治氏に若者の投票意欲について訊く。
一般的には「政治に関わるのはどうも」という学生が多い
飯田)衆院選の若者の投票意欲について。松井さんは大学でも若い人と接していらっしゃると思いますが、政治に対する関心はどうですか?
松井)一般的に低いです。ただ、コロナ禍を1つの契機に、「君たちの生活は政治判断によって大きく影響するよね」という問いかけはしています。ロックダウンをどう捉えるか、いろいろなイベントの開催制限や、自分たちのアルバイトがなくなる可能性などについては、彼らも思うところがあるでしょう。いまの2年生などは、まだキャンパスに来たことがないという子もいるのです。
飯田)2年生になっても。
松井)それらの判断は、最終的に政治が判断せざるを得ないわけで、どういう人をリーダーに担ぐのか。例えば、東京都知事の小池百合子さんのような方であれば、制限の解除については非常に慎重ですし、「そうではないのではないか」という方々も出ています。それに海外を見れば、歴然たる差があるわけです。イギリスは再拡大していても、人流制限のような対策はしないという判断をしている。
飯田)国によっても違う。
松井)「そういう政治判断は皆さんにとって身近なことなので、選挙に行ってくれ」という話はしています。私の授業を取って議論してくれるような子たちは、ある程度理解していると思いますが、一般的には、「あまり政治に関わるのはどうも」という感覚を持つ若者が多いです。
リスクを取らずに安全サイドで政治判断してしまう
飯田)コロナ禍でクローズアップされたと思うのが、「結局どう判断しても、いずれかの批判は出る」ということです。感染を完全に撲滅したいという人にとっては、少しでも緩めたら、それだけで批判対象になる。一方で、人々の生活を考えて落としどころをどう捉えるかについて、「これこそが政治の役割だったのだな。でも、それから逃げる人もいるよな」ということも含めて、いろいろな見方がありました。
松井)リスクを取らないというのは、「安全サイドに行く」ということなのです。安全サイドというのは特に感染において、ここ1ヵ月くらいは違いますが、初期段階でワクチンがまだ行き届かないころは、高齢者の方々の危機感が強かった。そこに引きずられて、若者は活動したいのだけれど、高齢者の方々は自分の命に関わるものですから、自粛を求める。そうすると政治は批判されることを敏感に恐れる。
飯田)なるほど。
松井)そのため、強めの営業規制をなかなか解除できない。本来であれば自由主義を標榜すべきリベラル勢力の方々が、むしろ「なぜ、こんなに解除するのだ」と言って、圧力をかけるというねじれた状況も起こってしまい、今日に至った。
とても臆病な日本の政治判断
松井)ここへ来て感染者が激減したのは、人流抑制が効いたのか効かなかったのか、今後、検証しなければなりません。ある局面では絶対に必要でしょう。その辺りで政治判断はとても臆病だなと思いました。みんなリスクを取らないで、右へならえになる。では本当にロックダウンのような法規制を考えるのかというと、そういうことは誰も考えないで、空気に縛られてしまう。そういう日本政治の特徴が出てしまった。落ち着いたいまだからこそ、そろそろ議論をしなければならないと思います。
官邸のなかというのは空洞だった
飯田)松井さんのキャリアのなかでは、官邸内にも入られて、官僚としてお仕事をされたこともある。そして、そのあと政治家として動くこともありました。論壇誌に「なかに入ってわかったけれど、官邸のなかというのは空洞だった」と書かれています。意思決定の弱さというか、空気によっての縛りというのが、コロナ禍で顕著になった気がするのですが。
松井)安倍政権は安倍1強と言われて、「官邸官僚」などという言葉も生まれた。それでも7~8人くらいでしょうか、官邸で安倍さんを囲んだ総理秘書官や、一部の国家安全保障局長や内閣情報官の方々がいた。秘書官の方まで含めたら十数人くらいのグループがいて、そこがいろいろな判断をした政権だと思います。
飯田)官邸で。
松井)でも、それをやると1強などと言われて、各省の役人からすると、「我々が蔑ろにされている」という声が出るくらい、基本的に各省が中心になって判断するのが伝統的な判断のやり方なのです。でもバランス的に、官邸内に政権と運命を共にするような人たちが、もう少しいてもいいのではないか。ただ、あまりそれが大きくなり過ぎると、アメリカのように政権独自の集団が3000人くらい、政権交代に伴って変わるようなことになってしまいます。
政権と運命を共にする形で安倍政権を支えていた人たちは十数人だった
松井)日本は逆に、すごく少ないわけです。内閣人事局などをつくって、そういう人を増やすと、批判も出るわけです。「誰を見て仕事をしているのだ」と。批判されるような案件も確かにあったと思います。難しいところなのですが、日本は伝統的に官邸が弱い。安倍政権だって本当に支えていた人は十数人だと思います。政権と運命を共にする形で支えていた人たちは。
飯田)この30年間はその形を求めて来たけれども、実際にできたらどうなったかというところは、これから検証して行かなければなりません。
松井)使う方も「忖度政治」という言葉が流行りましたが、忖度するような人を可愛がってしまうところがある。特に菅さんが官房長官として内閣人事局を活用し、やや官僚のスクリーニングをし過ぎたという批判があって、安倍さんとはニュアンスが違うのですけれどもね。
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