中国の赤道ギニア「軍事基地建設」をアメリカが警戒する理由

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月7日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。中国が赤道ギニアに軍事基地を建設する意向だということを報じた「ウォール・ストリート・ジャーナル」の記事について解説した。

習近平主席、SCO・CSTO合同サミットに出席(北京=新華社記者/黄敬文)= 2021(令和3)年9月18日 新華社/共同通信イメージズ

中国がアフリカ大西洋沿岸に基地建設を検討か

「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、中国が赤道ギニアに軍事基地を建設する意向だと報じた。実現すれば、中国が大西洋沿岸に初めて常設の海軍基地を持つことになる。

アフリカが三浦半島とすれば

飯田)地図で見ますと、アフリカ大陸は、横に長いサハラ砂漠辺りの部分があって、そこから南に行った、くびれているところ。地図で言うと左側です。

奥山)中国は(アフリカ東部)ジブチに、既に拠点を持っています。三浦半島で表現すると、葉山などの方、森戸海岸の辺りです。

飯田)東京湾ではなくて、相模湾の方に。

奥山)東京湾ではないですね。アフリカが三浦半島で、千葉を中国とすると、いま千葉が神奈川の方に攻めて来ている状況です。

飯田)三浦半島を獲りにかかっている。

奥山)獲りにかかっているということです。表側、千葉に近い側の、横須賀中央辺りに既に拠点を持っているのです。ところが赤道ギニアは後ろ手の方ですから、相模湾のなかに入って来て、大西洋に睨みを利かせる拠点を得てしまうのでしょうね。

飯田)大西洋に向かって。

奥山)こういう状況は、真鶴、小田原を拠点として持っている神奈川勢力としては、「目の前に来たな」という状況ではないですか。アメリカにとっては対岸の方に来たということになります。

大西洋側の反対にあるアメリカに中国が睨みを利かせる

奥山)中国はアメリカを刺激し過ぎではないかと、私は懸念しております。アメリカの目の前に来ることになりますから。

飯田)アメリカにとっては、そういう意識なのですね。アフリカの反対側にも拠点を持つということは、アフリカを貫くような形でやりたいのかなと思いますけれども、それだけではなく、海の先ですか。

奥山)その先の大西洋側に対して、中国が睨みを利かせることになるのです。そうすると、アメリカの警戒感は異様に上がると思います。

飯田)異様に上がりますか。

パナマ運河をめぐっても米中のせめぎ合いが

奥山)「ウォール・ストリート・ジャーナル」の元記事があるのですが、そこで既に、10月にジョン・ファイナー米国家安全保障会議(NSC)副補佐官が赤道ギニアを訪問して、大統領に「中国の提案を断るべきだ」と説得しているのです。わざわざこういう人たちを派遣してやっているということは、アメリカ側が警戒しているということです。

飯田)なるほど。

奥山)同じような状況は、パナマ運河でもあるではないですか。南北アメリカをつなぐいちばん狭いところ。そこにパナマ運河がありますが、あそこはアメリカにとっての裏庭になります。裏庭のいちばん大事な、船が通るところです。日本もお世話になっている船の通り道なのですけれども、そのパナマ運河を中国が投資して拡張したのです。そして中国側がビジネス的に獲ることにより、中国はパナマに台湾との国交を断行させようとした。パナマは2019年に新しい大統領になったのですけれども、今度は逆にアメリカ側が「パナマ運河という大事な公共財産を中国に渡すな」と働きかけをして、こちら側の勢力に入るようにしているということです。

飯田)獲り返している。

奥山)獲り返しつつある状況です。中国側から投資が入って来ますので、それに対していい顔をしようという人たちが出て来て、米中のせめぎあいが、アメリカの裏庭で行われている状況があるということです。

2日、英グラスゴーで記者会見するバイデン米大統領(ロイター=共同) =2021年11月2日 写真提供:共同通信社

1962年の「キューバ危機」

飯田)かつて「キューバ危機」がありました。

奥山)1962年、アメリカの下にあるキューバにソ連がミサイル基地を置くということで問題になった。世界が一触即発の危機になり、13日間の緊張状態があったのです。世界はこのまま滅亡してしまうのではないか、ソ連側からミサイルを撃ち込まれたらどうなるのだ、こちら側からも撃つしかないだろうということで、核兵器での撃ち合いになりそうでした。

飯田)『13デイズ』という映画にもなりました。

奥山)城ヶ島に千葉の勢力がミサイルを置くとなったら、横須賀の人間は怒りますよね。

飯田)「何をしているのだ」と。

中国による赤道ギニアの軍事基地建設にアメリカが警戒する理由

奥山)そういう形で、赤道ギニアの軍事基地建設に対しても、アメリカの警戒感が上がっています。中国は刺激し過ぎるところがあります。台湾の話も非常に盛り上がっていますけれども。

飯田)アメリカの歴史から考えて、東海岸に攻撃するということになると、「9.11」が唯一の例でしょうか。

奥山)大国は自分の裏庭にものを置かれると脅威を感じるのです。特にアメリカのような国はセンシティブなので、目の前に中国の基地が置かれるということになると、たとえ対岸のアフリカであっても警戒します。

飯田)地図上ではかなり離れているように見えますが。

奥山)「1つの駒をここに置いて来たな」と考えれば、警戒するのは当然だろうと思います。

戦略が下手な中国

奥山)このように刺激し過ぎるところが、中国が戦略下手なところではないかと思います。

飯田)「戦略がうまい国」というようなイメージが流布されていますが。

奥山)「戦狼外交」と言われて、警戒感を無駄に引き起こしてしまうようなことをやっています。相手の反応をしっかりと見て、変な反応をさせないようにするべきなのです。中国は2000年代初めくらいまでは、そういう形でやっていました。ところが、最近は「自信がある」ということで、かなり傲慢になってしまっています。本来であれば、そこは警戒しないといけませんし、「下手をやっているな」というのが率直な感想です。

リトアニアでも戦狼外交が裏目に

飯田)きょう(12月7日)の日経新聞の国際面にも、
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『「戦狼外交」挑発裏目に 東野篤子・筑波大准教授

圧力は裏目に出てリトアニアの方向修正は得られず、同国が加盟する欧州連合(EU)と中国の対立といった様相も帯びつつある』

~『日本経済新聞』2021年12月7日配信記事 より

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飯田)……という記事が載っています。

奥山)今度は逆に、台湾の事実上の大使館を置くことになりましたよね。

飯田)しかも「台湾」と名前が付いて。

奥山)中国は敵を無駄に増やしているという印象が大きいですね。戦略的にそれでいいのかどうか。相手のリアクションを計算できていないのではないでしょうか。

習近平氏、辛亥革命110周年記念大会で重要演説(北京=新華社記者/申宏)=2021(令和3)年10月10日 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

現在の中国は戦前の日本のよう ~武力衝突の方向に行く恐れも

飯田)ある意味で「夜郎自大」する中国は、このまま行くとどうなりますか? 特に東アジアでは。

奥山)クアッドやAUKUSのようなネットワークがさらに広がって、いつの間にか外交的な選択肢がなくなってしまい、下手をすると武力衝突の方に行ってしまうのではないかということを懸念しています。中国に対して警戒した人たちは手を握りますよね。

飯田)そうですね。

奥山)中国自身はそれほどネットワークを持っていません。自分たちが大きい国であるということで過剰に自信を持ってしまって、外交的に失敗してしまうのではないかという危惧があります。私が北京の人間であれば、「警戒するべきだ」と、「やり過ぎてはいけない」と思います。いまの中国がやっていることは、戦前の日本を見ているようで怖いのです。

飯田)しかもそこで「自制した方がいい」と言うと、「腰抜け」と言われてしまう。

奥山)その通りですね。そして、そう言える人が「言ったところで聞いてもらえないだろう」となってしまうことが、いちばん怖いですね。

問われる人権問題担当補佐官の存在

飯田)それを考えながら、我々のような周辺国は備えるしかない。

奥山)「人権を守る」というところを、中国に対して進言するような姿勢は取らざるを得ないと思います。

飯田)岸田政権がせっかく「人権問題担当補佐官」というポストをつくったのだから。

奥山)中谷さんが起用されました。

飯田)いまこそその仕事をするときですか?

奥山)そうですね。日本の国民がそれに対して「中谷さん頑張って」と言いやすい環境を、メディア側もつくって行くことが大事だと思います。北京冬季五輪の外交的ボイコットということも出て来ていますので。

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