立民・馬淵国対委員長が「野党国対委員長会談」を今後開催しない「本当の理由」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月9日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。立憲民主党の馬淵国対委員長が、これまで定期的に開催して来た「野党国対委員長会談」を今後開催しない方針を国会内で明らかにしたというニュースについて解説した。

立民・馬淵国対委員長が「野党国対委員長会談」を今後開催しない「本当の理由」

記者会見を開き、2019年11月に交通事故で負ったけがの順調な回復を報告する馬淵澄夫衆院議員=2020年1月6日 奈良県庁 写真提供:産経新聞社

野党の国対委員長会談 ~今後開催しない方針

立憲民主党の馬淵澄夫国会対策委員長は12月8日、共産・社民両党と定期的に開催して来た「野党国対委員長会談」について、今後は開催しない方針を国会内で明らかにした。馬淵委員長は「必要な場合は適宜関係する野党各党と協議して行く」と述べ、各党と個別に協議して行く考えだ。

つくるために壊す

飯田)これを受けて、新聞のなかには「共産離れだ」ということを書くところもあります。これも泉体制で変わったところなのでしょうか?

鈴木)「どう見るか」ということです。私はいま指摘された内容とは、まったく逆だと思っています。「ブレイクアップ・トゥ・メイクアップ」と言うのでしょうか。つまり、「つくるために壊す」。壊して、そしてつくって行くということだと思います。

飯田)つくるために壊す。

鈴木)いまの立憲民主党は支持率が下がり、なかなか成果が出ていないし、選挙の傷も残っているけれど、泉体制になって執行部の人事が決まりました。女性の幹部も増やして。

飯田)執行役員の半数が女性です。

ポイントは国対委員長の馬淵氏

鈴木)幹事長に女性が就いて、政調会長には人気のある小川さんが就任しました。この一連の人事でいちばんのポイントは、国対委員長の馬淵さんなのです。

飯田)馬淵澄夫さん。

鈴木)政調会長や幹事長というのは、もちろん対外的にも仕事はありますが、基本的には内向きの仕事です。内向きと言うと、言葉があまりよくないかも知れませんが、党のなかでしっかりと政策をまとめて行くなど、党内へ向かっての大変な仕事です。しかし唯一、外交と言ってもいいのですが、他の政党や外と接するのが国対委員長でしょう。国対委員長は他の党と折衝します。

飯田)与野党ともに、ですね。

鈴木)この部分がいちばん大きい。そこに馬淵さんが就いたということは、どういう意味か。現職が辞めて、彼が繰り上げで戻って来ましたよね。当時、枝野さんから「ぜひ立憲に戻っておいで」と、また玉木さんからは「国民民主に」と強い誘いがあったけれど、全部断ったのです。

飯田)2017年の選挙で落選して、そのあと繰り上げ当選されました。どうするのかなと思っていたら、ずっと無所属でいましたよね。

馬淵氏が長い間、無所属でいた理由 ~無所属であれば誰とでも会える

鈴木)無所属は割がいいかと言うと、よくないわけです。でも、それは馬淵さんなりの覚悟と計算があった。無所属でいれば、いろいろな人と同じ距離で会える。しかし、1つの政党を背負っていると、「この人はこの政党がバックにいる」となります。

飯田)色がつく。

鈴木)無所属であれば、誰とでも同じ距離で会える。枝野さんとも会えるし、玉木さんとも会えるし、小沢一郎さんとも会える。共産党とも会える。れいわの山本太郎さんとも会える。

飯田)勉強会を一緒にやっていましたよね。

鈴木)連合とも会えます。馬淵さんがよく言っていたのは、財界の人たちとも会えると。つまり、無所属でいるということは、同じ距離でいろいろな人と会えるということです。そして、ここが1つになるときに、彼は信頼されるわけです。

飯田)各方面から。

鈴木)後ろに影が見えていると、その人が一生懸命に話したところで信用できないでしょう。疑われてしまうではないですか。しかし、彼はみんなと同じ距離を取っているのだから、「彼にはまともに話してもいいかな」ということで、結束時にはパイプ役というか、中心になれる。

立民・馬淵国対委員長が「野党国対委員長会談」を今後開催しない「本当の理由」

2021年12月6日、衆議院本会議で所信表明演説を行う岸田総理~出典:首相官邸HP(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202112/06shu_san_honkaigi.html)

野党をまとめる役目となるのが馬淵氏

鈴木)馬淵さんがこれまで行っていたのは、「野党が1つの政党になることがベストだ」ということです。それができなくても、「野党の大連立政権をつくればいいのだ」と。いまの政権だって、自民と公明の連立ではないですか。だから野党の連立政権でもいいのです。そういう意味で、彼は野党をまとめるために無所属を貫いたのです。

飯田)話を聞いていると、薩長同盟を成し遂げるために、坂本龍馬が浪人として間を駆け回ったような。

鈴木)そういうことなのです。そのスタンスを貫いて来て、やっとそれを成就できるポジションが国対委員長なのです。

飯田)ある程度そこは固まって来たから、「俺は立憲に入る」となったのですか。

野党が1つになるための、また違う方法にいま踏み出した

鈴木)泉さんはそこにすべてを任せているわけです。野党がバラバラになるのではなく、これから野党が1つになる方法、「馬淵流の野党統一の方法」を、泉さんが任せた。馬淵さんはそれをいまから行う。そのためには、「一旦、全部の政党とまた同じ距離を保ち、信頼を持って1つになりましょう」という方向で動いて行く。「馬淵さんなら信頼できるから本音を話せるね」と、各党や財界、連合も含めて思えるように動く。そして、1つになる方法を進めて行くというのが、今回のスタートなのです。

飯田)離れるという話ではないと。

鈴木)つくるために、1回壊しますということです。実際に成功するかどうかはわかりません。これからまたいろいろ変わるとは思うけれど、基本的には、その方向で始まって行く。共産党を切るなどという、個別の矮小化した話ではなく、野党が1つになるための、また違う方法にいま踏み出したということです。

参院選に向かい野党が1つになって戦える材料を探す

飯田)タイムリミットとして、来年(2022年)夏の参院選が頭にありますよね。

鈴木)そうです。そうなると、時間がないのです。12月に入って、皆さん気付かれたと思うけれど、早い政党は街のなかに来年の参議院候補のポスターを貼っています。もう臨戦態勢なのです。そのなかでどのようにまとめて行くかということです。

飯田)参院選に向かって。

鈴木)おそらくですが、来年の通常国会のなかで、野党が1つになって戦える材料を探すでしょう。そこで、国対の馬淵さんを中心に「1つになりましょう」ということで、対立軸をつくり、参議院選挙の1人区の調整に持って行く。そういう流れだと思います。

飯田)なるほど。

鈴木)来年の通常国会で、野党がみんなで戦えるものを探すのでしょう。その前例として言うと、今度の文書通信交通滞在費です。維新と国民民主が共同提出して、立憲が一緒に「やる、やらない」という話で揉めていたでしょう。でも、話し合いで1つにまとまっていますよね。

飯田)まず法案を提出するという話になっています。

鈴木)これがすべてではないのですが、こういう形になって行く。もし、野党がいままでのように国対の定例会議をやっていたら、おそらく維新や国民民主はそれを背負って「一緒にやりましょう」と言っても、「後ろに共産党がいるよね」などと、違う話でまた崩れてしまう。

新しい1つの塊をつくって行く

鈴木)そうではなく、対等に話ができる。そして、新しい1つの塊をつくって行く。馬淵シナリオはそういう方向だと思います。泉さんは「それでいい、それをやって欲しい」ということで、馬淵さんに託したのです。

飯田)政策イシューごとに、「入る、入らない」で1つ1つ前例をつくって行き、その先に選挙もあるという形に持って行くという。

鈴木)維新がそこに入ることは難しいかも知れませんが、ある種、股裂きのようになってしまうけれど、国民民主は「1人区の一本化」に入って来る可能性もあります。そのベースを政策で、何か1つになれるものを探して行く。

選対委員長に馬淵氏の盟友の大西氏

鈴木)あと1つは、選対です。

飯田)選挙対策委員長には、大西さんが就任しました。

鈴木)馬淵さんの盟友です。一緒に行動して来ているのです。

飯田)「サンデー毎日」の記事には、政策秘書も務めていたとあります。

鈴木)選対委員長というポジションも外交です。

飯田)一本化するには。

鈴木)そういう意味では、「野党共闘については馬淵さんに任せましたよ」ということです。馬淵さんの現実路線。対等にみんなと距離を取りながら1つになって行こうという、その路線と見ていいと思います。

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