ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月14日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。原案が判明した岸田総理の施政方針演説について解説した。
1月17日召集の通常国会、岸田総理の施政方針演説の原案が判明
1月17日に召集予定の通常国会で、岸田総理大臣は就任後初めてとなる施政方針演説を行う予定で、その原案が明らかになった。外交安全保障の分野では、日中国交正常化から今年で50年を迎えることも念頭に、中国と建設的かつ安定的な関係の構築を目指すとしている。さらに核軍縮について、各国の政治リーダーの関与も得ながら「核兵器のない世界に向けた国際賢人会議」を立ち上げる方針を盛り込んでいる。
飯田)さらに来年(2023年)は先進7ヵ国首脳会議(G7サミット)の議長国であることを睨みながら、「新しい資本主義」の実行計画を春に取りまとめた上で「資本主義の変革に向けて世界の議論を先導する」と宣言することが盛り込まれているようです。
まだ出ていない「成長と分配のバランス」の答え
宮家)私は経済学者ではないですから、どこまで確信を持てるかわかりませんが、成長と分配のバランスは永遠の課題だと思います。資本主義ができて弱肉強食の社会となった。その結果、格差が非常に広がり、そこから社会主義が生まれる。しかし社会主義にはいろいろな問題もある。
飯田)社会主義には。
宮家)日本はどうしたかと言うと、ある意味で社会主義的な政策を真面目にやって、しかもある程度成長できた。おそらく70年代~80年代では世界の優等生だったと思います。しかしそれが行き詰まり、バブルが弾けた。そのあと政府の関与を減らして新自由主義的にやったのですが、実はそれで格差が更に広がってしまった。
飯田)そうですね。
宮家)中国もある意味では、国家新自由主義をやったのです。その結果、格差が広がって、中国も失敗しているわけです。だからこそ「共同富裕」などということを言っているのです。
飯田)習近平氏が。
宮家)となると、「成長と分配のバランス」という命題には、まだ答えが出ていない。もしかしたら永遠に出ないかも知れない。日本にはいい意味でも悪い意味でも、失われた数十年があって、その間いろいろなことを学びました。90年代の日本の政策もずいぶん叩かれましたが、バブルが弾けて、いわゆるバランスシート不況になり、そこから試行錯誤してここまで持ち直して来たわけです。日本のいろいろな経験と知見を考えると、新しい資本主義と呼ぶかどうかは別として、成長と分配に関する新しいやり方や方針を示すことはできると思うのです。
日本のやり方が1つのモデルになる可能性も ~緩和する部分も必要
宮家)中国が失敗して、アメリカもなかなかうまく行っていないときに、日本のやり方が1つのモデルになるという可能性は十分あり得ると思います。ただ、その代わり、ある程度は規制緩和し、改革しなければならない部分もあるかも知れません。
飯田)政府が関与する方法のバランスも問われていると。
宮家)そう思いますね。どのような形で考えをまとめられるのか。「文藝春秋」に出るそうなので、まず読まなければいけないですね。
経済が伸びなければ安全保障はできない
飯田)この部分と経済の強さが、安全保障にも絡んで来るということですか?
宮家)そうですね。経済が伸びなければ当然、安全保障の強化はできない。そして高齢化が進めば、社会保障費を増やさなければならない。「では防衛費とのバランスはどうするのですか?」となります。「中国は桁違いに増やしていますよ」というところがポイントでしょうね。
2023年に開催されるサミットがどこで行われるか
飯田)なるほど。その辺も含めて、今年(2022年)はいろいろな意味でターニングポイントになりそうですか?
宮家)世界中で選挙がたくさんありますから、それによって国内情勢も当然変わります。もう1つはサミットが日本のどこで行われるかということも気になります。
飯田)2023年に日本で行われるG7サミット。前回は伊勢志摩でした。
宮家)広島で行うことも1つの選択肢だと思います。警備の問題などもあり、いろいろ難しいとは思いますが、そういう象徴的なことができたらいいなと、個人的には思います。
飯田)岸田さんは広島のご出身ですしね。外相時代にはオバマさんを呼んでいました。
宮家)あれは和解を象徴する極めて重要な会合だったと思います。勿論、サミットはサミットということですけれども。
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