ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月13日放送)に多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授・事務局長の井形彬が出演。日本による「対中非難決議」について解説した。
対中非難決議
自民党の高市政調会長は1月11日夜に出演したテレビ番組のなかで、中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権侵害行為を非難する国会決議について、1月17日召集予定の通常国会で採択を目指す考えを示した。
飯田)2021年の通常国会、それから臨時国会と流れ続けてしまっているものですが、井形さんは列国議会連盟にも関わっていらっしゃいますから、この話は半分、当事者のような形ですか?
今年も「タイミングではない」という判断をする可能性も
井形)この「対中政策に関する列国議会連盟(IPAC)」というものは、日本版もあるのです。「人権外交を超党派で考える議員連盟」というものですが、そこがウイグルや香港の問題に関して、さまざまな議員連盟と一緒になって非難決議を出すべきではないかということで、去年(2021年)も頑張ったのですけれど、残念ながら出せませんでした。
飯田)出せなかった。
井形)今回のニュースも「採択を目指す」ということですので、果たして通るのかというところも、若干、難しいのかも知れません。
飯田)茂木幹事長が前回の臨時国会で、採択しない理由について、あの当時、まだ外交ボイコットについて日本政府が何も出していなかったため、「タイミングが悪い」という話をしていました。でも、「出したではないか」という話ですよね。
井形)今年(2022年)は今年で、また「タイミングではない」という判断をする可能性も、もちろん残っているわけですので、まだ予断を許さない状況だと思います。
輸入・輸出ともに20%近くを中国に依存している日本に「いいタイミング」などない
飯田)「タイミングではない」と、もし出して来るとしたら、理由は何になるのですか?
井形)何かしら理由は考えられると思います。
飯田)「日中国交正常化50年だから」などですか?
井形)それもありますし、日本と中国の経済関係を考えたときに、輸入・輸出ともに20%近くを中国に依存している日本にとっては、「いいタイミングなどない」という考え方もできなくはないのです。
あとから表明したことで、米中両方の信頼を失った可能性がある
飯田)いいタイミングがないのならば、早くやってしまった方がいいのではないかとも思うのですが。
井形)外交ボイコットに関して、アメリカ、イギリス、カナダなど、いろいろな国が次々に「外交ボイコットをします」と表明しました。日本も外交ボイコットをするのであれば、どさくさに紛れてというのは言い方が悪いですが、そこで言ってしまえば、「日本も外交ボイコットをしたのだ」ということが、そこまで目立たなかった可能性もあると思うのです。
飯田)アメリカやイギリスなどと同時にやっていれば。
井形)それを日本はやらなかった。「いつやるのだ」と引き延ばして、最終的に日本だけ独自で「やはり外交ボイコットをします」と言うことによって、結果的には欧米から見ても、「日本は結局ゴネてからようやくオッケーしたよね」と。中国から見ても「結局ボイコットしたよね」ということで、両方の信頼を失ってしまった可能性があるのかなと思うと、そこは残念ですね。
飯田)日本時間の2021年12月7日にアメリカが表明し、日本が表明したのは12月24日だった。タイミング的にも、とんだクリスマスプレゼントだとなりました。
井形)アメリカが正式に発表したのは12月6日(現地時間)ですが、その3週間くらい前からさまざまなメディアが、「アメリカ政府はこういう方向性に行きそうだ」と報道していたのを見ると、あれは明らかに政府側からのリークです。世論対策のためにリークしていたのであれば、もちろん同盟国である日本に対しても、そのタイミング、あるいはそれより前のタイミングで伝えていたはずなので、考える時間はあったはずです。
飯田)そうですよね。
井形)日本がなぜ遅れてしまったのかということに関しては、今後の検証が必要になるのではないかと思います。
バイデン政権と向き合うためにも、「人権外交をどう行うか」を考えなければならない
飯田)アメリカ議会下院のペロシ議長などは、去年の初めごろから「外交ボイコットをするべきだ」ということを言っていました。
井形)ペロシさんは本当に人権を重視していて、昔はダライ・ラマ法王とも直接会ったりしている方です。アメリカの民主党は、「人権は普遍的価値として守らなければならない」という立場で動いている。そのバイデン政権が少なくともあと3年は続くので、バイデン政権、民主党政権とどう日本が付き合って行くのか。日本として、どのような人権外交をして行くのかということに関しては、しっかりと考えなければならないと思います。
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