中国政府が人民元をデジタル化する「本当の目的」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月12日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。中国がカザフスタンへのロシア主導部隊の派遣を支持したというニュースについて解説した。

中国政府が人民元をデジタル化する「本当の目的」

「七一勲章」授与式、北京で盛大に開催(北京=新華社記者/劉衛兵)= 2021(令和3)年6月30日 新華社/共同通信イメージズ

中国がカザフスタンへのロシア主導部隊の派遣を支持

カザフスタンでは燃料価格の引き上げに端を発して抗議活動が全土に広がり、これに対し政府は「テロ行為」だとして一掃する作戦を進めるとともに、ロシア主導の安全保障同盟に支援を要請し、軍の部隊2000人あまりが現地に派遣されている。これについて中国の王毅外相がロシアのラブロフ外相と電話で会談し、カザフスタンにロシア主導の軍事同盟の部隊を派遣したことを支持する考えを示した。

飯田)「集団安全保障条約機構(CSTO)」から部隊が派遣されたということです。カザフスタンでは160人以上が死亡したという報道も流れています。

高橋)ウクライナもそうですけれど、ロシアの周りはきな臭い話が多いですね。

飯田)そうですね。

高橋)極東に目を奪われていると思っていたら、意外とヨーロッパの方でもいろいろなことが起きています。そこに中国がしっかりと絡んでいる。中国とロシアはそれほど仲がいいはずではないけれど、「敵の敵は味方」というようなロジックで、一緒になってやっているのではないでしょうか。

飯田)敵の敵は味方。

高橋)以前であれば、冷戦は米ソということだったのだけれども、現在はソ連の代わりに中国です。そこにロシアがくっついていて、アメリカも単独では大変だということで、西側の民主主義国と一緒になって対抗している。「体制の間の新冷戦」という感じがします。

飯田)強権主義に対しての民主主義というような。

高橋)非民主主義というのは、みんな強権主義なのです。あとで振り返ると、「国際政治のなかでそういう世界になった」と言われるかも知れません。

国際的な通貨がドルではないというのは難しい ~一帯一路

飯田)カザフスタンという国ですが、場所としてはロシアの南、ロシアとアフガニスタンの間に位置しています。

高橋)旧ソ連だから、関係があることは間違いありません。

飯田)一方で、中国の一帯一路の沿線国でもある。

高橋)一帯一路は海の方があまりうまく行っていないので、ルートを変えているのかも知れないけれど、一帯一路で経済圏をつくるというのは苦しいですね。

飯田)苦しい?

高橋)国際社会から見たときに、通貨がドルではないでしょう。だから一帯一路自体が難しいですよね。

飯田)一帯一路では。

高橋)いろいろな意味で習近平さんがやっていることは、頓挫しているものが少なくありません。

中国政府が人民元をデジタル化する「本当の目的」

中ロ首脳会談=2019(令和元)年6月5日、ロシア・モスクワ(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

中国政府が人民元をデジタル化する目的 ~資本取引を管理してお金を外に持ち出させないため

飯田)人民元のデジタル化をやろうとしていますが。

高橋)デジタル化にするということは、資本取引を管理したいということだと思います。中国の人は政府を信用していないので、お金を外に持ち出すでしょう。それをデジタル人民元にすれば、全部監視できるということだと思います。逆に言えば、資本取引の規制の一環として熱心にやっているのではないかと見ています。

飯田)デジタル人民元は人民元の国際化と絡めて、「決済手段として」というようなことが言われていますが、むしろ国内的な要因の話ですか?

高橋)国内的な要因の話でしょう。資産を外に持ち出すときに「見ているよ」と、「わかっているのだよ」という、この感じですよね。

飯田)監視しているぞと。

高橋)「デジタル人民元」と言っても、全部の取引を政府が捕捉するのでしょうから。

飯田)取引データを全部見ることができますものね。

高橋)データは政府にあるから、いざ「外に持ち出そう」というときには大変でしょう。いままではこっそりやることができたけれど、それができなくなる。習近平さんがデジタル人民元に熱心なのは、そういうところにあると私は見ていますが、邪推ですかね。

OECDに中国が加盟できないのは「資本取引の自由」があるため

飯田)そうすると、先進各国は通貨、中央銀行が暗号通貨的なものの研究をしていますけれど、それとは趣が異なるということですか?

高橋)資本取引の自由というのは、民主主義国のなかでは一般原則になっています。OECDに加盟すると資本取引の自由というのがあるのですけれど、OECDに中国が加盟できないのは、資本取引の自由を言いたくないということなのです。資本取引の自由はTPPなど、いろいろな協定のなかで肝になるのだけれど、これを入れておけば中国は絶対に参加できません。

飯田)RCEPにはそれがないということですか?

高橋)ないです。ないから中国は平気で入れます。ものの取引だけで見るとわかりにくいのですが、資本取引のところを見ると、それがあるかないかで大きな差になります。

社会主義体制はお金を管理することが大前提

飯田)なるほど。RCEPの話をするときに、関税の話ばかり出て来るのですよ。

高橋)ものの取引のところはTPPと似ていますが、資本取引というお金の取引のところを見るのがポイントです。特に社会主義体制はお金を管理することが大前提になっています。資本取引を自由にすると、資本主義化してしまうから、社会主義国では必ずお金の取引を管理するのです。

飯田)野放図にやっていれば腐敗して行って、蓄財ということになりますものね。

高橋)それを外に持って行くということは、人間の常としてあります。だからそれを管理したいのです。「持って行けないぞ、持って行ったときには、わかるぞ」と。厳しいですね、これは。

中国政府が人民元をデジタル化する「本当の目的」

演説で台湾統一実現への決意を表明した中国の習近平国家主席=2021年10月9日、北京(共同) 写真提供:共同通信社

マカオ潰しもお金を管理するため

飯田)中国の一連の動きで符合するところが多いなと思うのは、マカオのカジノ潰しをやっています。特に富裕層向けのジャンケットと言われるような。

高橋)はっきり言えば、強権政治ですね。

飯田)あれもチップの差配などで、ある種のマネーロンダリング的なものが行えるのではないかと言われている。

高橋)ものに換算し、ものを外に出すことで換金できるということになれば、できてしまうのです。それなら人民元をデジタル化して、お金に全部換えてしまい、その取引を見ている方がいいでしょう。ものに換えた途端にマネーロンダリングできてしまうのです。

飯田)そう考えると。

高橋)「なぜこんなに一生懸命なのだ?」と思うでしょう。

飯田)国富の部分を一粒たりとも外に漏らさないようにと。

高橋)国富を外に持ち出したら、体制が維持できなくなるかも知れない。いざというときにはお金を外に置いておく。そして家族が外へ逃げてしまえばいいと思ったら、いろいろなことができるでしょう。

飯田)それをできないようにする。

高橋)できなくしたいと。

飯田)その先の「共同富裕」という話にもつながって行くわけですか?

高橋)おそらくはそうでしょうね。

飯田)きちんと分配するのだと。

高橋)表向きはね。しかし、お金の管理は習近平さんが「俺が管理するぞ」と言っているのに近いですよね。

ガソリン価格を下げるためにシェールガスの増産も考えるバイデン政権

飯田)他方、ロシアの方なのですけれど、カザフスタンも資源国です。ロシアも天然ガスが大量に出ますが、最近の原油の高止まりはロシアにとってはプラスですか?

高橋)プラスですよ、もちろん。バイデンさんがシェールガスを増産したら、一気に下がるのですがね。

飯田)そうですね。

高橋)中間選挙までにやる可能性があると思っていたのですけれど、「環境に悪い」と言ってやっていない。しかし、このまま行ってしまうと、バイデン政権はピンチですよね。アメリカ国内でガソリン価格が上がっていますから。そこでロシアが叩いても、アメリカがシェールガスを増産すればすぐ終わってしまいます。アメリカはエネルギー輸出国なのですから。

飯田)本来であればアメリカは。しかし、バイデン政権は環境問題で規制が強いから。

高橋)強いからやらせないということなのだけれど、理屈をつけて「関係ないです」「新技術です」と言ってしまえばいいのです。

飯田)バイデン政権はその方向を模索しているのかも知れませんね。

高橋)このまま行ったら、民主党は中間選挙に負けてしまいますからね。アメリカは単純で、ガソリン価格で決まってしまうのです。日本ではコロナの感染率で内閣支持率が決まるのと似ています。

飯田)それだけの自動車大国であるということですね。

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