立憲民主党に「政策提案型」より必要なもの

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月19日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。1月19日から3日間にわたり、衆参両院の各党代表質問が行われるというニュースについて解説した。

立憲民主党に「政策提案型」より必要なもの

記者会見で質問に答える立憲民主党の泉代表=2021年12月24日午前、国会 写真提供:共同通信社

通常国会、1月19日から3日間の代表質問

1月17日、通常国会で岸田総理大臣が施政方針演説を行ったのに続いて、1月19日から3日間、衆参両院の各党代表質問が行われる。野党側は政府のコロナ対策は不十分だとして追及するとともに、改善策を積極的に提案する方針だ。

飯田)施政方針演説では、さまざまなことを言っていましたけれど、新型コロナ対応は最優先課題だということでした。

政策提案型に転換した立憲民主党に注目

佐々木)立憲民主党が泉健太代表に変わり、批判ばかりの野党から政策提案型に転換するという方針を出していたので、どういう形で今回の国会に影響するのか注目しています。先日、立憲民主党の川内博史さんが『女性自身』というメディアでインタビューに答えていました。

飯田)衆院選で残念ながら落ちましたが。

川内博史氏 ~民主主義を前進させるためには「正しい批判」が必要

佐々木)そこで、「批判こそ必要」だとおっしゃっているのです。提案型野党への転向を危惧しているというようなことが書かれていました。何らかの立論、政策提案に対して、それに反論があって議論を昇華させる。

飯田)議論を昇華させる。

佐々木)そして結論に持って行く。そういうまっとうな批判が、民主主義を前進させるためには必要だとおっしゃっていました。まさしくその通りです。批判というのは別に否定するためにあるわけではなく、いい結論を招くための議論には必要だということです。

重箱の隅をつつくような批判をして来た立憲民主党

佐々木)議論するためには何らかの対立が必要であるというのは、その通りなのだけれども、そういう批判をきちんと立憲民主党がして来たかどうかというと疑問です。重箱の隅をつつくような批判を延々として、そこが立憲民主党の問題だと言われて来た。

飯田)そうですね。

佐々木)結局そういうロジックのない、理念のない批判のための批判をしていると、受けて立つ側も守りに入ってしまうわけです。

重箱の隅をつつくのではなく、国会の議論に合った「いい議論」をして欲しい

佐々木)本来、国会の議論というのはある程度タブーに踏み込んでも、「どうすればいい結論が出るか」という方向で積極的に議論し合い、その結論を尊重するというものです。タブーなき議論をするからこそ、少数派の意見も尊重されるわけではないですか。

飯田)タブーなき議論をするからこそ。

佐々木)ところが、そこで重箱の隅をつつくような批判のための批判をしていると、ひたすら守りに入るような、防御のための答弁になってしまうわけです。

飯田)「ご指摘の事柄に関しましては、慎重に検討の上、政策にも反映させていただきたいと思っております」ということを繰り返している。

佐々木)いわゆる霞が関文学ですよね。役人の答弁になってしまうわけです。でも政治家には、霞が関答弁のようなことをやってもらっては困るのです。国民の耳に届くような、わかりやすい議論をして欲しいのです。

飯田)国民の耳に届くように。

佐々木)重箱の隅をつつくのではなく、いい議論をして欲しいのです。今回の国会に必要なテーマというのは、そこに持って行けるかどうかなのだと思います。

立憲民主党に「政策提案型」より必要なもの

立憲民主党の新ポスターを紹介する泉代表=2021年12月24日午前、国会 写真提供:共同通信社

感染抑制に走ると「経済が回らない」と騒ぎ、経済を回す方に行けば「感染が増える」と批判する ~この2年間の野党とメディアの批判

飯田)国会の議論のなかで、大臣の無謬性のようなものを突いて行く、「あのときああ言ったのに、こうだったではないか!」というような議論ばかりになってしまうと、当然ながら守りに入りますよね。

佐々木)コロナ対応はその典型で、感染抑制をするのか、それとも経済を回すのかという二極対立があるわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)どちら側に振れすぎてしまってもいけない。完全に感染抑制をすれば、経済が動かなくなります。

飯田)中国のようにロックダウンをすると、完全に人が動かず、経済も動かないと。「それでもいいのですね」ということであれば別ですが、資本主義、民主主義国家でそれをやったら終わってしまう。

佐々木)そうなのですよね。逆に言うと、「完全に経済を回すのだ」とイギリス的なやり方をして、感染者が膨大な数になってしまった場合、それを日本社会は許容するのかと言えば、許さないわけです。

飯田)許しません。

佐々木)そうするとその真ん中、「どこにバランスを取るのか」ということが重要なのだけれど、批判する側から見れば、感染抑制に走ると「経済が回らない」と騒ぎ、経済を回す方に行けば「感染が増える」と言う。いくらでも批判できてしまうわけではないですか。批判する側にとってはオールマイティですよね。

飯田)批判する側にとっては。

佐々木)それをやって来たのが、この2年間のメディアと野党だったのです。

「どの辺りでバランスを取るのか」という落としどころを双方で考えながら議論しなければいけない

佐々木)岸田政権になって、厳しい感染抑制の方に走っていますよね。

飯田)そうですね。

佐々木)菅政権よりもかなり強い方に回っています。世論をよく見ていて、感染抑制をする方が批判されるのか、経済を回す方が批判されるのかというところです。毎日「きょうの感染者は何人」と感染者数が出るではないですか。だから批判するときにわかりやすいのですよ。そうすると、感染を抑制した方がメディアや野党から批判されにくいということが、明らかに数字でわかるので、そちらに振った方が支持率は高まるだろうと。実際にそれでいま支持率は高いですよね。大して何もしていないのに。

飯田)高いですね。

佐々木)全振りで、どちらに行っても批判できるというやり方をしていると、いい結論には回らない、至らないということがわかってしまう。だから全振りせず、「どの辺りでバランスを取るのか」という落としどころを、双方で考えながら議論しなければいけないということが、まさに今回のコロナ禍でよくわかったのではないかと思います。果たしてそれに立憲民主党やメディアが気付いたのかどうかですよね。

民主党政権での経験

飯田)かつて民主党が政権を獲ったときに、その難しさや、やせ我慢の矜持のようなものを感じたと思うのですが。

佐々木)あの瞬間はわかっていたはずなのだけれど、いまの立憲民主党の人に聞くと、「当時の民主党といまの立憲民主党は違いますから」と言うのです。

飯田)全否定してしまう経験だったのかというと、それはそれで違うような気がしますね。

佐々木)実際に再び政権を獲ったら、バランスを取る中庸なところに戻れるのかという話です。そこに対しての危惧があるから、支持率が落ちているのではないでしょうか。

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