ロシアが譲歩できないウクライナ東部「親ロシア派勢力の存在」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月24日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ウクライナ情勢をめぐり、米露外相会談が行われたというニュースについて解説した。
米露外相会談、ウクライナ情勢を協議
アメリカのブリンケン国務長官とロシアのラブロフ外相は1月21日、軍事的な緊張が続くウクライナ情勢をめぐって外相会談を行った。アメリカはロシアが求める安全保障について回答する方針を示し、今後も協議を継続する方向で一致した。
飯田)外相会談に先立ち、バイデン大統領の就任1年をめぐる記者会見も現地で行われましたが、アメリカの報道などを見るとウクライナの話が中心ですね。
須田)ロシア側の要求としては、北大西洋条約機構(NATO)のなし崩し的な東方拡大に何としても歯止めをかけたいということです。ウクライナは、そもそもかつてのソ連のときの東ヨーロッパということで、緩衝地帯としていたのですが、NATO加盟ということになると、ロシアが国境を接してリスクと対峙することになるのです。ですので、ロシア側の言い分もきちんと見ないと、落としどころが見えて来ません。
ウクライナ東部の親ロシア派勢力の存在 ~譲歩すると「自国民を捨てた」と国民に捉えられてしまう
須田)もう1つ、プーチン体制には大きな課題があります。ウクライナ東部に親ロシア派の勢力がいる地域があります。その地域の人たちは、ロシア人としてのアイデンティティを持っているのです。自分たちはロシア語を話し、ロシアの文化、宗教ですし、ロシアのパスポートを持っている。
飯田)そうなのですね。
須田)自分たちはロシア人だと思っている。ロシアがウクライナや西側諸国に対して譲歩してしまうと、「プーチン大統領は自国民を見捨てた」と国民に捉えられかねない状況なので、プーチン大統領としては引くに引けないのです。
飯田)なるほど。
須田)西側の報道だけを見ると、プーチン大統領が強硬策や理不尽な要求をしている。勝手に戦争を仕掛けて来るように見えるのかも知れませんが、ロシアサイドから見れば、プーチン体制に対する国民の信頼が揺らぎかねないという状況になっている。その辺りを含めて落としどころを見る必要があります。西側の要求だけでは絶対にロシアは引きません。それをやっている以上、必ず侵攻して来るという状況なのだと思います。
侵攻することはロシア経済にとって大きなリスクになる
飯田)ロシアとしても、必ずしも「ここは攻めどきだ」という思いだけでやっているわけではないのですね。
須田)ドイツやEUが、ロシアから来る天然ガスに対して依存度を高めているから、なかなかロシアに対して物を申せないという状況ばかりがクローズアップされていますが、ロシアにとっては国家収入のかなりの部分がエネルギー売却によって得られています。それが入って来ないとなると、国家財政が立ち行かなくなってしまうのです。
飯田)国家財政が。
須田)相互依存性を強めているので、むしろ侵攻するということは、ロシア経済にとっても大きなリスクになる。相互関係があるのだと思います。
プーチン体制を継続させるために「ドルの使用」を選ばない
飯田)「もし侵攻した場合、ドルを使わせなくする」とバイデン大統領は会見で言いました。あれはかなり効くということですか?
須田)ただ、ドルを使えないという不便さと、自国民を見捨てるということでは……。
飯田)そちらも天秤にかけなければいけないのですね。
須田)そうなのです。ドル決済はできなくなるけれど、プーチン体制は継続させるのか、ドルは使えるけれどもプーチン体制が崩壊するのか、どちらにしますかということになる。そうなると、当然のことながら「ドル決済などいらない」という話になります。
飯田)アメリカも、「在ウクライナ大使館員の家族へ退避命令を出した」という報道も出て来ています。もしかすると、緊張がそちらの方に倒れてしまうかも知れないところまで来ているのでしょうか?
須田)いくつかの国は、もう避難に向けて軍を派遣していますからね。
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