アイホ女子代表「スマイルジャパン」 世界との体力差を補うために行った「想像を絶する練習量」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、北京オリンピックで初の決勝トーナメント進出を決めたアイスホッケー女子代表「スマイルジャパン」にまつわるエピソードを紹介する。

アイホ女子代表「スマイルジャパン」 世界との体力差を補うために行った「想像を絶する練習量」

【北京五輪2022】<アイスホッケー女子 1次リーグB組 日本対スウェーデン>第1ピリオド、ゴールを決め喜ぶ小池詩織(右)ら日本代表=2022年2月3日、五棵松体育センター 写真提供:産経新聞社

連日、日本人選手の活躍が続く北京オリンピック。なかでも快進撃を見せたのが、オリンピック出場4大会目にして初の決勝トーナメント進出を決めた、アイスホッケー女子代表「スマイルジャパン」です。

開会式前日、日本選手団の先陣をきって登場すると、スウェーデン相手に3対1で勝利。続くデンマーク戦では、何と6点を奪って快勝。これまで日本の1試合最多得点は、平昌大会のコリア戦(南北合同チーム)で挙げた4得点でしたが、それを2点も上回る圧勝劇でした。

3戦目は中国戦。“大アウェー”のなかで延長戦の末に敗れたものの、勝ち点1を得て3位以内が確定。初めてオリンピックに挑んだ1998年長野大会から24年、悲願の決勝トーナメント進出を果たしました。

また、今大会で日本がゴールを決めると、試合会場ではアイドルグループ・嵐が歌う『Happiness』が流れることから、得点を決めれば決めるほどSNSでも大盛り上がり。このことも、スマイルジャパンの快進撃を後押ししました。

そんなチームを長年に渡って支えて来たのが代表キャプテン・大澤ちほです。五輪期間中の2月10日に30歳の誕生日を迎える大澤は、今回で五輪に3大会連続出場。3大会ともキャプテンを務め、9年間も代表チームをまとめ続けて来た、まさに大黒柱です。

日本の女子アイスホッケーがオリンピックに初めて出場したのは、1998年の長野大会でした。このときは開催国枠での出場で、予選は免除。戦績は全5試合を通じて得点2、失点45で、5戦全敗でした。まさに世界の壁の高さを知った大会であり、その後、しばらくオリンピック出場から遠ざかります。

オリンピックの舞台に帰って来たのは、2014年のソチ大会でした。実に16年ぶりの出場。その権利をつかんだ2013年の世界最終予選のときから、大澤は代表キャプテンを務めて来ました。

高校生のときから代表に名を連ねていたとはいえ、当時の大澤はまだ大学生。若きキャプテンのもと、「スマイルジャパン」の愛称もなかったチームが躍進を遂げ、念願のオリンピック復帰を果たしたのです。

世界を相手にまったく歯が立たなかった日本が、自力での出場をつかめた理由は、想像を絶する練習量があったからこそです。当時、カナダから招いたカーラ・マクラウドコーチは、体格で劣る世界の強豪と戦うには、試合を通して相手に負けない「持久力」、そして「敏捷性」を磨く必要があると説き、陸上部かと思うほどの徹底した走り込みを続けさせました。

そんな辛い練習を乗り切るために必要だったのが「笑顔」。試合展開でも苦しい状況になったときこそ「笑顔」を意識し、「楽しむこと」を大事にすることでプレッシャーに打ち勝ち、試合状況を好転させることができたと言います。

『オリンピック最終予選の舞台でアイスホッケーを楽しむことができました。いつも通り、どんな状況でも笑顔でプレーすることで最高の結果を残せたのです』

~『Yahoo!ニュース』2013年3月29日配信記事 『スマイルジャパンになったワケ』より(大澤ちほの言葉)

アイスホッケー女子の愛称が「スマイルジャパン」になったのは、ソチオリンピック出場が決まったあと。まさに、自分たちの普段の取り組みと結果から生まれた呼び名でした。

こうして2014年・ソチ大会、2018年・平昌大会とオリンピック連続出場を果たしたスマイルジャパン。ただ、世界の舞台で結果を残すことはできませんでした。ソチ大会はまたも全敗。4年後の平昌大会では悲願のオリンピック初勝利をあげたものの、予選リーグ敗退に終わります。

悲願の決勝トーナメントへ。そして、その先に見据えるメダル獲得へ。大澤は平昌大会後、ホッケー先進国スウェーデンでプレー。そこには、代表キャプテンとしての特別な決意がありました。

『私自身のレベルアップが、結果として女子アイスホッケーの発展につながっていくと信じて。現役選手でオリンピックを目指している今は、競技で結果を残していくことが一番だと思うし、その過程を後輩に見せていくことが私の務めです。日本代表になりたい、オリンピックに出たい、勝ち続けるチームでありたい。たくさんの選手にそう思ってもらえるように、女子アイスホッケーを引っ張っていける選手になれればと思っていますし、そのために自分に足りない部分を身につけたい』

~『アイスポ!』2019年1月3日配信記事 より(大澤ちほインタビュー)

自分自身の成長だけでなく、この競技を支えているという強烈な自負と責任感。そんなリーダーシップがあればこそ、他の選手たちは「楽しむこと」を忘れずにプレーできているのではないでしょうか。

世界を相手に走り負けないこと、苦しい状況でも楽しむことを忘れないこと、そしてこの勢い。昨夏の東京オリンピックで銀メダルを獲得したバスケットボール女子日本代表に通じるものがあります。

バスケ同様、世界を驚かす大躍進を果たせるのか? スマイルジャパンがメダルへ向け、笑顔で決勝トーナメントへ走り出します。

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