「自公連立」が抱える「いくつかの不安要素」

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月24日放送)にジャーナリストの鈴木哲夫が出演。岸田総理が自公連立について、その枠組みを今後も変えるべきではないと強調したというニュースについて解説した。

「自公連立」が抱える「いくつかの不安要素」

【政治 2021衆院解散】衆院が解散し、公明党の山口那津男代表(右)へあいさつする岸田文雄首相=2021年10月14日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

岸田総理、自公連立について今後も変えるべきではないと強調

岸田総理大臣は2月22日、現在の自民・公明両党の連立政権の枠組みについて、両党の強固な連立基盤の上に成り立っており、その枠組みは今後も変えるべきではないとの考えを示した。

新行)一部では「自公連立23年目の危機」などという報道もされています。

鈴木)2022年の参議院選挙をめぐって、自民党と公明党の間でお互いに推薦する、しないという問題で揉めています。これが今回の「23年目の危機」の根拠になっているのですが、選挙協力をめぐるゴタゴタというのは、いまに始まったことではありません。

岸田体制に変わったことで参院選の調整が遅れる自公 ~自民党からの返事が来ない

鈴木)公明党は、連立を組むことによって政権に入っているので、メリットはありますし、嫌な言い方をすると、美味しい思いができているという面もあります。

新行)公明党としてのメリットが。

鈴木)その分、選挙で自民党にお返しをするということになるのですが、公明党からすると、あまりにも協力しすぎではないかと。100あるうちの1を獲るために、他の99ではすべて自民党を応援するというような状況が底辺にあったわけです。そこまで選挙協力しているのだから、「政策の方ではもう少し公明党の方に譲ってくれよ」という思いが根底にあるのです。

新行)政策面でもう少し譲って欲しいと。

鈴木)今回は参議院選挙までの時間が短いなかで、自民党が岸田体制に変わり、自民党から公明党への反応が遅れました。総選挙が終わってすぐに、2022年の参院選について、お互いに調整したいと公明党が言っても、自民党からの返事が来なかった。公明党としては、「もう時間切れだ」とイライラが積もったということだと思います。

難しい複数区での調整

鈴木)参議院選挙は衆議院選挙と違って、1人区や複数区があります。衆議院選挙の小選挙区だと1人を決めるので、自民党と公明党で誰か1人を出してやります。

新行)衆院選では。

鈴木)しかし、参議院選挙の複数区で定数が3となると、自民党も出すし、公明党も出すわけです。東京もそうですよね。自民党も出るけれど公明党も出る。ここは敵同士なのです。その代わり、参議院選挙は全国に32の1人区があります。このようなところは1人の候補しか通りません。ですので、自民と公明で一緒にやるけれど、複数区では自民と公明が戦うので、もともと調整が難しいのですよ。

新行)複数区は調整が難しい。

鈴木)兵庫などが象徴的で、定数が3人で自民党も公明党も出る。そして関西は維新も強い。野党では立憲、共産などが統一候補をつくって来る。4人で3つを争うというのは、相当激しい選挙になります。そうなると、自民党は公明党の推薦など出せない。そんなことをすれば、自分たちが落ちて公明党が獲ってしまうかも知れないのです。

新行)そうですね。

鈴木)この調整は難しいし、形式的に「相互推薦」という形を取ったとしても、選挙戦で本当に協力してやるのかと言うと、私は難しいと断言します。

新行)難しい。

鈴木)選挙が終わり、どのような結果になるのかによって、尾を引く、引かないということになるのではないでしょうか。ただ、政権にいるということは、公明党にとってはメリットもあるので、そこから離れるというところまでは行かないと思います。

「自公連立」が抱える「いくつかの不安要素」

2022年1月4日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202201/04kaiken.html)

自公をつなぐパイプがない岸田政権

鈴木)もう1つのポイントは、岸田政権になってから、自公のパイプがないということです。これまでは裏で強固なパイプがあって、裏で話をつけるということがありました。

新行)裏での強固なパイプが。

鈴木)具体的なところで言うと、昔、野党時代には大島理森・元幹事長、漆原良夫・元国対委員長がいて、自公として緊密な仲だった。安倍さんの場合は、当時の公明党の太田昭宏さんとサシでハンバーガーを食べながら30分ほど話して、次の政局の流れを決めたということもあるくらいです。

新行)ハンバーガーを食べながら。

鈴木)菅さんは公明党最大の支持団体である創価学会の佐藤副会長と、選挙から政策まで、軽減税率なども2人で話し合いながら決めていました。しかし、いまはこのようなパイプがないのです。すぐにはつくれませんし、どこかでご飯を一緒に食べたらもう親友です、ともならないので、この辺のパイプ不在もこれからの不安材料ですね。

選挙において公明党の協力が不可欠な自民党

新行)公明党から離れるということは、岸田さんは考えないのでしょうか?

鈴木)それはないと思います。公明党の選挙協力がなかったら、自民党は衆議院で100議席近く落とすのではないか、ということを言う人がいるぐらいです。自民党にとって、公明党の支援は絶対に選挙では必要なのです。ですので、公明党から離れることはできない。

新行)なるほど。

鈴木)公明党も政権にいるメリットというのはある。それが簡単に崩れることはありませんが、細かいところからヒビが入って行くということはあるかも知れません。

公明党のポジションは「与党内野党」 ~今後も考えられる政策的な衝突

鈴木)もう1つ、これからの自公の関係でポイントだと思うのは政策です。新型コロナに関しても、私はまだまだ収束とは言えないと思っていますが、コロナ対策についても給付金など、自公の間でぶつかることは多かったですよね。

新行)そうですね。

鈴木)それから憲法改正の問題です。逆に言うと、維新の周辺がボールを投げ込んで来ている。自民党は維新などと組んで憲法改正に流れて行けますが、公明党は慎重なので、「待った」という話になる。この辺りの政策的な衝突は今後もあると思います。

新行)自公の政策的な衝突が。

鈴木)公明党のポジションは「与党内野党」だと思うのです。すべて自民党を助けて、「わかりました。やりましょう」ではなく、大衆の政党として「それは反対だ」と政権内で明確に言えるかどうかが、公明党の存在感だと思います。野党がまとまっていないから、自公で安心して内輪で揉められるということもあります。その意味では、政治全体がコロナ禍の最後の局面でゴタゴタしているけれど、それでいいのだろうかと私は思います。

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