ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。3月5日に開幕した中国の「全国人民代表大会(全人代)」について解説した。
中国で全人代が開幕、2022年の経済成長率の目標は5.5%前後
中国で3月5日、重要政策を決める「全国人民代表大会(全人代)」が開幕した。李克強首相は2022年の経済成長率の目標を5.5%前後にすると表明している。
飯田)今年(2022年)は秋の党大会が1つのポイントになると言われていますが、その前の全人代です。昔は「保八」、8%を維持しないと回って行かないというようなことが言われていましたけれども、ずいぶんと低くなりましたね。
須田)そうですね。2021年はコロナショックの反動もあって高い成長率を示したのですけれども、それは反動であり、本来の経済の実力を示すことにはならないだろうと言われていて、2022年にどの程度実現できるのかということです。「8%成長」という話がありましたが、ここ近年は6%の成長を目指して来た経緯があります。
共同富裕政策に国民が納得するか ~不満が爆発する可能性も
須田)それを下回るという状況に、中国国民が満足できるのかどうかというところが、1つのポイントになります。大前提として、いまの習近平体制のなかでは「共同富裕」がある種最大のスローガン、一枚看板のようなところがあります。しかし、この共同富裕という言葉が李克強首相の政府報告のなかで、たった1回しか言及されていないのです。
飯田)そうなのですね。
須田)共同富裕が民間企業の活力を削いでしまったり、個人消費を抑制してしまったりするという点から考えると、経済成長を抑え込むような作用になっているのではないでしょうか。
飯田)共同富裕が。
須田)不動産投機を抑えるために不動産税、日本で言う固定資産税ですが、これが導入される方向なのです。ところが、この不動産税に関する言及が一切ありません。
飯田)導入されるのに。
須田)本来であれば、「投機的な不動産投資には手を出すな」というようなメッセージを送るべきはずで、それについて実行する予定があるのに、まったく言及がないのです。この共同富裕政策に関して、国民の納得が得られているかどうか。また、これを進めることによって不満が爆発するのではないかという感じもしなくもないですね。
飯田)不動産に関しては、最大手が破綻するのではないかと言われ続けているくらいです。これは喫緊の課題ですから、本当は何らかのメッセージを出さなくてはいけないですよね。
民間企業を国有化するなど、逆の方向に向かっている部分も
須田)先ほど申し上げた民間企業の活力や、国民の投資意欲を煽って高度成長して来たわけではないですか。ところが、それがいま逆回転していて、民間企業を国有化するなど、逆の方向に向かっている部分があります。また、一部の不動産マーケットなどはバブルなのですよね。そのバブルを抑えるために、さらに大きなバブルをつくるということもしています。そうして問題になった企業の債権や事業を買い取るに当たって、国が融資をするわけです。それはどうなのかということです。しかも官営企業です。
IT企業への締め付けが厳しくなっている
飯田)アリババのジャック・マー氏が表に出ることもなくなってしまいましたが、IT系企業などへの締め付けが激しくなって来ているという話もありますよね。
須田)いまウクライナ危機でロシアがやっているよりさらに激しいバージョンで、不都合な情報に関しては全部封印して行く。情報統制することによって、不都合な情報は目に入らないような方向に行くと、ますます危険な兆候になるのではないでしょうか。
前年比7.1%増となる中国の国防費
飯田)国内で不満が溜まって来るとなると、今度はそれを外に向けた打開策を見つけて行くことにもなりかねないですよね。
須田)その傾向が見て取れるのが、国防費の増額です。前年比で7.1%増になったということで、異例の伸びを示しているのです。
飯田)伸び率は2021年よりも増加しているということです。
須田)我々のように中国の周辺にいる国にとっては、危険な兆候だと思います。
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