ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月7日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。アメリカの雇用統計について解説した。
アメリカ雇用統計
アメリカ労働省は3月4日、2月の雇用統計を発表した。景気の動向を敏感に反映する「非農業部門の就業者数」は前月と比べて67万8000人増加、失業率は3.8%で前月から0.2ポイント改善した。
飯田)米雇用統計の数字は、失業率も下がって来ているというところです。これはどう見たらよいですか?
須田)大前提として、記憶に留めていただきたいのですが、アメリカの株式マーケットが最も注目しているのが雇用統計なのです。
金融政策で最も重視される雇用統計
須田)加えてFRBの金融政策が決定されるに当たり、最も重視されているのがこの雇用統計です。場合によっては、雇用統計を改善するために、金融政策が動かされていると考えてもいいのです。
飯田)雇用統計を改善するために。
須田)今回、予想を上回る雇用統計の改善が見込まれ、就業者数の増加が実現したというところが最大のポイントだと思います。もちろん失業率も改善しているということです。
一時的に賃金は下がる
須田)その一方で賃金の動きと比較すると、若干のタイムラグが出て来ます。雇用統計が改善に向かうと、これまであまり積極的に雇用を求めていなかった人たちが、労働マーケットに入って来ます。そのために賃金については下がり始めるのです。
飯田)平均賃金が。
須田)ただ、きちんと景気が回復軌道に乗って来れば、一転して上昇基調に向かいますので、この場合の賃金の下げを気にする必要はあまりないと思います。
ウクライナ危機を考慮に入れずに利上げするアメリカ ~その影響により、何が起こるのか
須田)ただ、アメリカ国内において、インフレがものすごいスピードで進んでいます。世界全体なのですけれども。もちろんエネルギー価格の高騰がその背景にあって、ガソリン価格などが上がっているという状況にあります。
飯田)ウクライナ情勢もあり。
須田)賃金は低下傾向にあって、物価は上昇するという状況を考えると、質の悪いというか、スタグフレーションのような最悪の状況にもなりかねません。その辺りを考えてみると、FRBの利上げの方向性、スケジュール感については当初の予定通り行われるのだと思います。つまりウクライナ危機をあまり考慮に入れず、国内の経済を考えて利上げに動いて行く。しかし、一方では、ウクライナ危機によって流動性に異常が生じているわけです。そこで利上げが発生すると何が起こるのか、という見通しを立てることが今後、必要になって来ると思います。
利上げ6回説も
飯田)FRBが行う利上げの時期について、3月はほぼ確定なのではないかと言われています。それだけではなく、2022年中に何回やるかというところが焦点になって来ています。
須田)当初は4回と言われていたのですけれども、6回説というのも出て来ました。
飯田)会合毎に上げるということになりますか?
須田)まだ事実かどうかはわかりません。そういう説が出ているということで、それだけ、FRBの利上げ圧力は強いということだと思います。
新興国にとってはリスクも
飯田)アメリカの利上げがあると、アメリカ国債での運用などでも、うま味が少しずつ出て来るわけですよね。そうすると、「他の通貨よりはドルで運用しておいた方がいい」という流れが加速するかも知れませんね。
須田)外国通貨を売ってドルを買うという状況、それはすなわちドル高です。ドル高に対抗して円安。円安というのは、輸入品の価格を押し上げて行く。我々の物価上昇も加速して行くということです。
飯田)一方でドルが高くなると、新興国の通貨はどこも安くなってしまって、具合が悪いということも言われています。
須田)かつて、その状態になりました。いまはアメリカの低金利を背景に、世界的な金余りの状況です。ジャブジャブに新興国にお金が流れて行く。つまりリスクを取る代わりにハイリターンだという状況です。そのお金が引き上げられて来る。つまりハイリターンだけれども、リスクの高い国のお金が引き上げられて来ると、そういう国の経済、財政が持つのかどうか、ということになります。これはかつてもあったことですけれども。
飯田)バーナンキさんがFRBのトップだったときに利上げをしたら、新興国の経済が混乱したということがありました。
須田)アメリカは独善的ですからね。新興国の経済を考慮してFRBが動くことはありません。あくまでも自国経済というところです。
飯田)しかも国内の雇用と物価。
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