ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月24日放送)に前統合幕僚長の河野克俊氏が出演。ロシアのウクライナへの軍事侵攻について解説した。
岸田総理、G7首脳会議に向け出発
ロシアのウクライナへの軍事侵攻から1ヵ月となる現地3月24日、ベルギーの首都ブリュッセルで主要7ヵ国(G7)の首脳会議が緊急で開かれる。岸田総理もこの会議に出席するため23日夜、日本を出発した。総理はG7で日本の対露制裁強化や、急増する避難民支援で追加拠出を表明する見通しだ。
飯田)軍事侵攻が開始されて、実に1ヵ月になるというところです。ここでは、前統合幕僚長の河野克俊さんに電話をつないで話を伺います。河野さん、おはようございます。
河野)おはようございます。
飯田)軍事のプロの視点から見て、ロシアのウクライナへの侵略をどうご覧になっていますか?
河野)プーチン大統領はおそらく、短期で収める腹積もりでいたのだと思います。ロシアにとって、戦いが長引いていいことなど1つもないわけですから。この辺りの目論見が違っているのと、ロシア軍が機能的に作戦を遂行できていないように思います。特に後方支援などは追いついていないのではないでしょうか。
プーチン大統領とロシア軍のコミュニケーションが取れていない
飯田)後方支援についてはいろいろと言われていますけれども、車列が狙われているのは、ウクライナが効果的な攻撃をしているということですか?
河野)効果的に行っていると思います。戦いには兵力数や装備の差ももちろんありますが、最終的には人間同士です。ウクライナの方は、完全に祖国防衛戦争ですので士気が高い。しかし、ロシア兵は「自分たちはなぜここにいるのか」というような感じになっているのだと思います。
飯田)ロシア兵は。
河野)プーチン大統領とロシア軍のコミュニケーションがうまく取れていないのだと思います。最前線の様子がプーチン大統領にきちんと伝わっているのかなという疑問もあります。
少将や中将が5人亡くなることは異常事態
河野)中将や少将クラスの人たちが5人亡くなっているという報道がありますが、これも異常です。
飯田)将という名が付くクラスの人たちは、普通であれば、弾の飛び交う最前線に行くようなことはないのですか?
河野)基本的には兵隊を指揮する人です。中将の人も亡くなっているのですが、その方は万単位の部隊を指揮する人ですので、後方から指揮をするわけです。その方が狙われているということですから、やはり軍として機能していないのだと思います。さらに軽々には言えませんが、その場所にいるということが判明しているわけです。狙われているということは、情報が漏れている可能性もあります。
飯田)携帯電話での通話を傍受していたという話もあります。
河野)それは確実にやっているはずです。NATOやアメリカなどからも情報を得ていると思います。
ロシアが生物・化学兵器や戦術核を使用することはあり得る ~ウクライナを屈服させるまで突き進むプーチン大統領
ジャーナリスト・鈴木哲夫)気になるのは、ロシアが生物・化学兵器や戦術核を使用するのではないかということです。「ウクライナが生物・化学兵器を使うのではないか」というフェイクニュースとされるものが流れました。これはロシアが生物・化学兵器を使うために流したのではないかとも言われています。その可能性はありますか?
河野)結論から言うと、あり得ます。元CIA長官のぺトレアス氏が「プーチン大統領には勝利を与えてはいけないけれども、出口を与えるべきだ」ということを言われたと聞いています。
飯田)出口を与える。
河野)現状を見ていると、自らの出口を塞いでいるのはプーチン大統領のような気がするのです。おそらく彼は引くに引けない。思い通りに行かなければ、生物・化学兵器や核を使用しかねないようなところまで来ているように思います。あってはならないことですけれども、そんな気はします。
飯田)使う意図としては、それによって西側を足止めさせるということですか?
河野)行き詰まっているから、とにかく事態をエスカレーションさせて、ウクライナを屈服させようということだと思います。いくらウクライナがNATOに入らないと宣言したとしても、プーチン大統領は絶対に信用しないと思います。彼の目標はウクライナの非軍事化、中立化です。そこまで彼は突き進むのではないでしょうか。
プーチン大統領のやり方に現場はついて行くのか
飯田)河野さんは現役時代を含めて、ロシア軍部と関わりがあったと思いますが、現場の苦境などの情報についてはどうですか?
河野)ロシア軍制服組トップのゲラシモフ参謀総長とは、何回も交流しました。私が受けた印象では非常に冷静沈着、合理的な思考の人です。これも軽々には言えませんが、シビリアンコントロールなので当然、プーチン大統領の命令には従っていると思いますけれど、彼としては不本意であったと想像しています。
飯田)軍事的な合理性から言えば、こういう戦い方はしないということですか?
河野)しないです。後方支援が追い付いて行かないですから。最初は東部だけだったのに、あとから原発もやれ、今度は化学兵器もやれという話です。私ならついて行けません。
側近の誰もプーチン大統領に具申できる人はいない
飯田)意見を具申できるような環境があるかどうかということですか?
河野)私はそれが滞っているような気がします。
飯田)平時に受けた印象では、ゲラシモフ氏等もそういうところまで進言するような人間であるということですか?
河野)そういう人だと思います。「核を準備しろ」という指示を、プーチン大統領がショイグ国防大臣とゲラシモフ参謀総長に命令しているという映像が流れましたが、あのときも長い机で距離を空けて指示していましたよね。
飯田)そうでした。
河野)核の準備というのは、普通はひざ詰めでやるようなことです。それを、距離を空けて「やれ」という命令に、「ダー」……ロシア語で「イエス」という口の動きでしたけれども、まったく気が進まないという表情に見えました。
危惧されるのは「核戦争をちらつかせればアメリカは動かない」と中国が解釈すること
飯田)力による現状変更を許すことはできません。日本として備えるべきこともいろいろと出て来たように思うのですが、いかがでしょうか?
河野)経済制裁など、西側と歩調を合わせて断固遂行すべきだと思いますし、我々としては台湾問題です。今回、アメリカは核戦争の可能性を考慮して軍事介入しなかったわけです。これを中国は見ていると思います。
飯田)中国も核を持っている。
河野)「核戦争をちらつかせればアメリカは動かない」と彼らに解釈されるのは、よくないと思います。
飯田)23日に林外務大臣は国会答弁のなかで、「アメリカは日本が侵略されたら必ず防衛する」ということをおっしゃっていますが、そこは何度も確認すべきですか?
河野)台湾の場合も日本の場合も、絶対にアメリカは軍事介入すると思います。台湾であっても、沖縄にはアメリカの海兵隊がいるわけです。目の前で火が噴いたときにアメリカがまったく動かないなどということになれば、アメリカはアメリカではなくなることになります。そこは少しウクライナ情勢とは違います。私が危惧するのは、中国が「核戦争をちらつかせればアメリカは動かない」と解釈して、台湾に手を出すということです。
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