「何のために実名報道するのか」議論が必要 ~19歳特定少年の氏名公表

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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。19歳の特定少年の氏名を初めて公表した甲府市の殺人放火事件について解説した。

事件発生から約40日経過した火災現場=2021年11月22日、甲府市 写真提供:産経新聞社

甲府市の殺人放火事件、19歳の特定少年の氏名を初めて公表

2021年10月、甲府市の住宅で50代夫婦が殺害され住宅が放火された事件で、甲府地検は4月8日、殺人などの罪で遠藤裕喜被告(19)を起訴した。18歳、19歳を特定少年と位置づける改正少年法の施行後、特定少年の氏名が公表されたのは初めてだ。

飯田)改正少年法の施行は4月1日からということで、起訴されれば実名報道も可能になります。

野村)そうですね。民法の成人年齢を18歳に引き下げたことに合わせて、少年法も適用を18歳以下にすべきではないかという議論がありました。

飯田)民法に合わせて。

野村)基本的には20歳を境として、18歳・19歳については従来と同じように、1度は家庭裁判所に送るということなのですが、18歳・19歳を特定少年と位置づけ、場合によっては実名報道も可能とする。少年法は維持しつつも、従来から問題となっていた凶悪な罪を犯した18歳・19歳の取り扱いを、少し厳しくしたというところがポイントです。

改正少年法で起訴後に実名報道が可能に

飯田)いままでも検察への逆送はあったけれど、この要件もかなり適用を広げた。

野村)従来ですと、家庭裁判所に送られたものが、もう1回検察官に戻ってきて、普通に起訴して大人と同じように裁くというのは、故意に人を死に至らしめたような殺人事件などに限定されていたのです。

飯田)そうですね。

野村)今回は少し対象が広げられ、例えば強盗や強制性交、放火などにも逆送が原則化されることになり、それに合わせて、実名報道の問題も解禁ということになったのです。逆送されて起訴されれば、実名報道もできるという形にしたということです。

「何のために罪を犯した人の実名を出して報道するのか」という議論が必要

飯田)この議論はかつてからあって、週刊誌で「野獣に人権はない」という、ある意味の信念のもとで18歳以下の少年も名前を出したケースが、綾瀬の「女子高生コンクリート詰め殺人事件」でありました。実名報道をする意味は、どう捉えればいいのですか?

野村)飯田さんも放送に携わられていて、「なぜ犯罪を報道するのか」という根本的な問題をいつも考えてこられたと思います。

飯田)そうですね。

野村)大事なのは、少年の名前を出すということよりも、大人の場合であっても、そもそも「何のために罪を犯した人の実名を出して報道するのか」という議論をしなければいけないと思います。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

「名前を出すことは制裁の1つ」とする世の中 ~ゴシップになってしまっている

野村)世の中はどちらかというと、「名前を出すことは制裁の1つ」というように思っていて、名前を隠すのではなく、「みんなに晒せ」というような議論になっていると思うのです。

飯田)晒せと。

野村)基本的に、なぜ犯罪者の名前を出すのかと言えば、社会が次に同じような事件を引き起こさないために、その人がどういう背景で、どういう事情があってその犯罪が起こったのかを知ることによって、社会を防衛していくという発想がまず大事だと思うのです。

飯田)同じようなことが起こらないように。

野村)その発想がないために、どうもゴシップになっていってしまうのです。大事な面を見失っている感じがします。

何のために名前を出すのか、犯罪防止につなげるにはどうするべきか

飯田)理由なく人が殺されているという、ある意味での社会の脆弱性の部分を繰り返さないために、どうすればいいのかを考えなくてはならない。

野村)動機がわかれば、その原因を塞ぐことによって、同じような事件が起こりにくくなるわけです。ところが、いままでだと殺人事件が起こったあとに、「誰がどんな背景で罪を犯したのか」ということを誰もわからないままにしていると、同じ動機を形成してしまう可能性があるわけです。

飯田)動機がわからなければ。

野村)海外などでは、逆に少年の名前を出すことによって、それを支える人たちが出てきます。わかっているから「この人をみんなで支えよう」という。

飯田)更生の部分ということですか?

野村)更生の部分です。しかし、日本はそういう社会ではないのです。晒したらみんなで叩いてしまう。この現状は少し考えなければいけません。何のために名前を出すのかということと、名前を出すことで、どのように犯罪防止につなげていくのかということを、もう少し議論するべきだと思います。

いまはネットで名前が晒されると生涯、残ってしまう

飯田)世間のみんなが叩いてしまうという話が出ましたけれども、一方で、そういうことが起こると抑止力になるのではないかということも言われます。これは副次的なものと考えた方がいいのですか?

野村)もちろん「名前を出されないのだから、やってしまえ」というような人がいるのであれば、それは抑止になると思います。ここで自分も世間に晒されるのだという。確かに最近は昔とは違い、ネットで名前が晒されると生涯その名前が残ってしまうというくらい、名前を出すこと、情報が出ることの制裁的意味は大きくなっています。

飯田)ネットによって。

野村)昔の映画などでは、古い新聞を辿っていったら、犯罪者が見つかったというようなストーリーもありましたが、いまはネットで検索すると出てきてしまう可能性があります。こういう状況からすると、抑止力は高まっている可能性はあります。しかし、それほど冷静な判断ができる人であれば、そもそも犯罪行為を行わないという部分もあるので、その辺りはよく考える必要があると思います。

名前を出すことによって、間違った人の名前を晒すような二次被害を防ぐ

飯田)ネット社会が進化しているということの1つの副作用として、実名を公表しないということになると、それを特定しようとする人が出てきます。その結果、間違った人の名前を晒してしまったり、間違った写真が出るという被害も起こりますし、実際に起こっています。

野村)おっしゃる通りです。関心がある人たちは、自分のところにアクセスしてもらうために、「犯人特定」というような衝撃的な見出しを付けます。これが大間違いで、罪を犯していない人に被害が出てしまうことがあります。そういう現状を考えると、きちんと名前を出すことによって、そのような悪質な行為、弊害、二次被害を防ぐという効果があるのは、重要なポイントだと思います。

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