「何のために水際対策があるのか」を理解していない日本
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中央大学法科大学院教授で弁護士の野村修也が4月11日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月10日から入国者数の上限が引き上げられた日本の水際対策について解説した。
入国者数の上限が1万人に
政府は新型コロナウイルス禍を受けた水際対策を緩和し、1日当たりの入国者数の上限を4月10日から1万人に引き上げた。
飯田)1日当たりの入国者数の上限が1万人に引き上げられたということです。対象者はビジネス関係者や留学生などに限られるということですが、学校などにも影響が出ますね。
日本に入れず、他国へ行ってしまった留学生やビジネスでの人材も
野村)大学は留学生を受け入れているわけです。留学生が日本に来たいのだけれども、鎖国に近い状態だということで、日本に来るのを諦めて他の国に行ってしまっているという現状があります。
飯田)日本に入れないから。
世界では、高度な人材の取り合いになっている ~関心の薄い日本
野村)ビジネスの世界も一緒で、日本企業で活躍したいと思って来た人が、他の国に行ってしまうということです。いま世界では、高度な人材の取り合いになっているのですが、日本はあまり関心がないのです。
飯田)人材の取り合いになっているのに。
野村)例えばデジタルの世界では、インドなどに優れた方がいるのですけれども、こういう方々を取り合っているのに、日本は平気でそのチャンスを塞いでいるということです。外国人の方に来てもらうというのは、どちらかというと、日本人があまり働かなくなっているような分野です。そういうところへ補充的に入ってきてもらうような、戦略性のないやり方をしています。一定程度の解除をすることによって、日本が国際競争に勝っていくということが重要だと言えます。
水際対策は時間稼ぎ
飯田)感染対策の名のもとに、壁をつくり続けたわけですけれども、本来は感染状況等々によって基準を上げ下げしなければいけないところでしたよね。
野村)水際対策も大事なのです。特に現在、また新しい変異株が出てきています。こういうときに、「水際対策は何のためにやるのか」という議論が必要だと思うのです。
飯田)何のために水際対策をするのか。
野村)よく言われるように、ウイルスはいずれ必ず入ってくるのです。新しいものに置き換わっていく。では水際対策とは何なのかと言うと、時間稼ぎなのです。
時間稼ぎの間に何もしなかった日本 ~水際対策の間に何を準備するのか
野村)時間稼ぎというところまではわかっているのですが、日本は時間を稼いでいるうちに何もしていないという状況で、今回のオミクロン株も国内に入ってきてしまったわけです。デルタ株はどちらかというと肺炎の症状が出ますが、オミクロン株は肺炎というより、持病の悪化を問題視される場合が多い。しかし、その対策をせず、縦割りの診療科が臓器ごとに分断しているのです。
飯田)オミクロン株の対策をせず。
野村)持病が悪化しているような人たちに対して、コロナに感染しているという状況の対策、ゾーニングなどはできていませんから、そのためにお断りされてしまう。あるいは肺炎になれば重症という整理なので、肺炎でなければ軽症扱いでお帰りいただいて、持病悪化でお亡くなりになってしまうということになる。
飯田)持病が悪化して。
野村)そんなちぐはぐな状況をつくってしまったわけです。水際対策の期間は何をやっていたのかという話です。今回もそこがいちばん大事で、水際はやはりきちんとやらなければいけないと思いますけれども、その間に何を準備するのかというところを議論しなければいけないと思います。
時間をどれくらい稼げるか、そのために何をするか、なぜ外国人を招くのか
飯田)手段が目的に変わってきてしまっている。
野村)その通りなのです。水際を目的だと思っている人が多い。「1人も入らせない」というような話ではなく、時間をどれくらい稼げるか、そのために何をするか、そしてなぜ外国人を招くのかというところを議論しなければいけないと思います。
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