欧米や日本とは違う「インドから見る」ロシアのウクライナ侵攻
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地政学・戦略学者の奥山真司が4月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。4月11に行われた米バイデン大統領とインドのモディ首相の首脳会談について解説した。
アメリカとインドが首脳会談を開催
アメリカのバイデン大統領とインドのモディ首相は4月11日、オンライン会談を開催した。バイデン大統領は会談の冒頭で「アメリカとインドの関係は深く強く発展する」と強調。モディ首相はウクライナで起きている市民殺害を「憂慮している」と述べた。
飯田)米印首脳のオンライン会談が行われましたが、テーマはどの辺りになりますか?
奥山)インドは非同盟という形でどの国にも属さず、自主独立の機運がとても強い国です。
インドから見るロシアのウクライナ侵攻
奥山)彼らが今回のロシアによるウクライナ侵攻をどのように見ているかというと、シャシ・タルールさんという国連の広報担当の方がツイートしています。
飯田)シャシ・タルールさん。
奥山)「欧州大陸は2つの世界大戦、無数の内戦、ホロコースト、そして冷戦を生み出した。彼らはいつになったら『欧州では殺戮が当たり前で、平和が例外であった』という事実に気付くのか」と言っているのです。
ヨーロッパのなかの内戦であり、外の人間が関与すべきではない
奥山)「ウクライナを助けよう」などと言っているけれども、実はヨーロッパの内戦ではないかと。それに「我々のような外の人間は関与すべきではない」と、冷めた立場の意見を言っているのです。
飯田)外の人間は関与すべきではないと。
奥山)中東やアフリカのように、欧州から植民地としての扱いを受けてきた人間としては、「そのようなことは奴らがやっているだけではないか」という意識が根強いのです。
中東やアフリカなども同じように見ている ~欧米社会は偽善だと思っている
奥山)もちろん、ウクライナを助けなければいけないという見解は当然だと思いますが、一方で、中東やアフリカなどは、このように冷めた目で見ているというところも意識しなければいけない。
「冷めた目で見ている人たちがたくさんいる」という事実も忘れてはいけない
奥山)彼らは「欧米社会は偽善だ」と思っている。彼らは日本に対しても「そういう態度を取れよ」と働きかけはしてきません。働きかけはしませんが、同じ有色人種として、「虐げられてきた人間として同じような立場を取らなければいけない」ということを匂わせてくるような側面が、アフリカや中東などから見えてくるところがあるのです。
飯田)ヨーロッパはこのようなことを言っているけれど、「日本はわかるよね」という感じの。
奥山)その部分はあると思います。我々も先進国ですので、完全に同調するのではなく、ウクライナに対するロシアの蛮行はもちろん糾弾しなくてはいけません。
飯田)先進国として。
奥山)しかし、一方で「冷めた目で見ている人たちがたくさんいる」という事実も忘れてはいけない。その代表がインドのモディ首相です。インドはロシアから石油などを輸入していますが、その量は、ヨーロッパが輸入している原油や石油の1日分くらいなのです。データを使ってそのことを検証しているインドの識者もいます。
飯田)インドはロシアから兵器も入れているのですよね。
奥山)武器の供給は相当されていまして、一時期、西側だということで供給先をフランスに変えたときもあったのですが、やはり安くて質もそれなりにいいということで、続けているのです。
「偽善ではないか」と言われても仕方ない部分もある
飯田)今回、ロシアの蛮行に対する非難決議は、国連総会では140ヵ国を超える国々が賛成を示しましたが、国連人権理事会でも、ロシアの国連人権理事会の理事国としての資格停止を求める決議がありました。しかし、ここでは賛成の数が相当少なくなりました。
奥山)減っていましたね。最初の即時撤退を求める決議では141ヵ国が賛成だったのですけれども、資格停止の決議では賛成が93ヵ国に減っていました。やはり人権に関しては、「欧米が俺たちに指図するな」という気持ちが彼らのなかにあるのではないでしょうか。「君たちは差別している割に人権などと言うではないか」と。「偽善ではないか」と言われてしまうのは、歴史的な事情もありますが、仕方ない部分もあるのではないでしょうか。
国連改革が叫ばれているなかでの日本の役割
飯田)「人種差別はやめましょう」ということを世界に対していちばん最初に提起したのは、実は我が日本です。
奥山)G7のなかで有色人種として入っているのは、日本だけです。逆に中東やアフリカの方から期待されている部分は、「我々の声を代弁してくれ」ということだと思います。
飯田)常任理事国であるロシアが蛮行をした。国連改革も叫ばれていますが、日本への役割は相当求められますよね?
奥山)そうなのですが、残念ながら日本自身には政治力が少なく、そこでいつも頓挫してしまうという悲しい現実があります。もっと日本に「前に出ていってやろうぜ」と言える国民性があれば、変わっているとは思うのですが。
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