海外要人との会談が続く岸田総理の「今後の外交政策」
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が4月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田総理の外交政策について語った。
立て続けに海外要人との会談が続く岸田総理
岸田文雄首相の対面外交が活発化している。4月18日にはスイスのカシス大統領兼外相が来日し、官邸で首脳会談に臨んだ。4月はニュージーランドのアーダン首相、ドイツのショルツ首相の来日も続く。
飯田)岸田政権の外交政策ということで、昨日(18日)はスイスのカシス大統領兼外相と岸田総理が官邸で会談を行いました。岸田総理の予定を見ると、海外の要人が立て続けに来るようです。
宮家)ゴールデンウィークは海外出張ですよね。そのあとバイデン大統領が来て、クアッドの首脳会合がある。そしてドイツでG7サミットが開催される。オーソドックスだけれども、やるべきことを着実にやっている感じがします。
国防費をGDP比2%に引き上げるドイツ
飯田)ドイツのショルツ首相との会談も、4月末に予定されています。
宮家)ドイツはメルケルさんが16年、首相を務められました。メルケルさんはEUを重視しつつ、プーチンさんとの関係については随分我慢していました。今回、ウクライナの問題でドイツがどう対応するかを心配しましたが、杞憂でしたね。完全にドイツは目が覚めたというか、起き上がった感じがします。
飯田)ドイツは。
宮家)ショルツさんは国防費をGDP比2%に引き上げて、「時代は変わったのだ」とスピーチしていました。日本も参考になることが多いと思います。メルケル政権のドイツは、車を売るために中国には行くけれど、「日本に行ってもいいことはない。話すことはない」といって日本には寄らなかった。しかし、いまの状況はまったく違うわけです。
飯田)状況は変わりました。
宮家)日本のウクライナに対する対応も、相当な政策変更です。対露政策の変更という意味では、ドイツほどではないけれども、かなりの覚悟でやっています。それは勿論中国、台湾、南シナ海があるからなのですが。
飯田)中国、台湾、南シナ海。
宮家)私は、欧州と日本には話すことがたくさんあると思います。先日、ある欧州の大使公邸にお邪魔しましたが、いまこそ欧州といろいろなことを話すチャンスだと思いました。
日本の外務大臣がNATOの外相会合に呼ばれるようになった
宮家)「欧州の問題はロシアだけかも知れないけれど、日本はロシアと中国の両方があるのだ」と言ったら、「我々も中国の問題はよく理解している」と言っていました。そうは言っても、欧州にとって中国はここまで近くはないわけですから。「日本はNATOに入るのか」とも聞かれましたが、日本はNATOの防衛義務を履行できないので、入っても仕方がないのです。
飯田)防衛義務を履行できないから。
宮家)安倍政権の1期目から、NATOとの話し合いは始まっていますが、いまは日本の外務大臣がNATO外相会合に呼ばれるわけですから、ずいぶん時代は変わりました。いずれは首脳会談にも声がかかる可能性があります。
飯田)そうですね。
宮家)そういう意味では、NATOに入らなくても、連携は十分可能です。だからドイツは中国には行かず、日本に来るのです。やるべきことをやっていることの成果が、こういう形で出てきているのではないかと思います。
クライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで大破した車両が放置された道路を歩く住民(ウクライナ・ブチャ) EPA=時事 写真提供:時事通信
ロシアへのメッセージは中国へのメッセージでもある
飯田)この件に関してドイツと日本が変わったということで、特に海外メディアは注目していますね。
宮家)していると思います。ドイツの目が覚めるのは当然です。
飯田)目の前ですし。
宮家)色々な「しがらみ」があったにもかかわらず、よくあそこまで方針を変更したと思います。日本にとっても対岸の火事ではありません。いつ似たようなことが起きてもおかしくない。だからこそ、「ロシアと同じようなことをしたら大変な目に遭うぞ」と、歯止めをかける必要があります。「経済制裁が厳しくて、国の経済が立ち行かなくなるぞ」というメッセージを送らなければいけないと思います。その観点から言うと、いま日本がやっていることは極めて合理的だと思います。
ゴールデンウィークにはベトナム、インドネシア、タイの東南アジア3ヵ国とイギリスなどを歴訪する岸田総理
飯田)岸田さんの外交に関して、ゴールデンウィークはベトナム、インドネシア、タイの東南アジア3ヵ国とイギリスなどを歴訪する方向で調整に入ったようです。
宮家)イギリスは「AUKUS(オーカス)」のこともあるし、太平洋に関心もある。更に「クアッド」首脳会合もあるとなると、抜けているのは東南アジアになりますから、そつなく重要な国を訪問するのはよいと思います。いずれは韓国でしょうが、いまの状況では、まだ大統領が就任されていませんから。そういう意味では、まんべんなくやっているという感じですね。
東南アジア各国のロシアへの向き合い方
飯田)韓国は今週末に次期政権の代表団が日本に来て、話し合いをする予定になっています。
宮家)この間、同様の代表団がアメリカに行きましたね。日本に来るということ自体が良い傾向ではないでしょうか。いままでの事情をすべて水に流すことはできませんが、韓国側の出方をよく見るという意味では重要だと思います。
飯田)東南アジア各国、韓国も一部そうかも知れませんが、ロシアとの向き合い方としては日本やドイツほど踏み込まず、少し抑制的であるということも言われています。
宮家)ロシアに対しては中東、アフリカなど歴史的経緯がある国や、食料を依存している国など、いろいろありますから、なかなか難しいでしょう。
中国と東南アジアの関係
宮家)東南アジアの場合はロシアの問題もさることながら、中長期的に見た場合、中国との関係をどのように考えるのかということです。
飯田)中国との関係。
宮家)例えばラオスに行くと、国境の近くには中国の巨大なショッピングモールがあるわけです。陸続きですから、中国の影響力は拡大している。中国資本の不動産デベロッパーが入っている国もあります。
飯田)高速鉄道を通すという話もありますよね。
宮家)ロシアの問題も大事だけれど、中国との付き合い方について議論し直すことも大事です。そう考えると、やはり東南アジアは重要です。
国会中でも閣僚が海外出張できるようにするべき
宮家)さらに言うと、国会を大事にしすぎではないかと思います。この間は外務大臣が欧州に海外出張して、また欧州に行くのだから現地にいればいいのに、一度戻ってきましたね。
飯田)ポーランドに行き、ウクライナ難民支援の話をして、国境まで見に行った。しかし、「難民の方々を連れて帰らなければいけないのだ」と言って戻ってきたということでした。
宮家)国会開催中は、閣僚の海外出張は難しいのです。1つ手続きを間違えると行けなくなってしまいます。そうなると「何のために副大臣をつくったのか」ということになりますよね。代わりに答弁をする筈ではなかったのかと。もちろん副大臣も政務官も、一昔前に比べれば権限は強くなりました。しかしせっかく副大臣をつくったのなら、大臣にはもう少し自由に海外出張させて欲しいというのが本音です。
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