都合のいいように「歴史を悪用する」プーチン大統領
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慶應義塾大学教授・国際政治学者の細谷雄一が4月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。プーチン大統領がロシアの都合に合わせて使う歴史の誤用について解説した。
自分たちの都合のいいように歴史を部分的に捻じ曲げて使っている
国際政治学者の細谷雄一氏が、近著である『ハンドブックヨーロッパ外交史 ウェストファリアからブレグジットまで』に触れ、ロシアのプーチン大統領がロシアの都合のいいように使う歴史の誤用について語った。
飯田)細谷さんの近著である『ハンドブックヨーロッパ外交史 ウェストファリアからブレグジットまで』(岩間陽子・君塚直隆・細谷雄一編著)がミネルヴァ書房から刊行されます。ウクライナ情勢もあり、注目される分野です。
細谷)ウクライナ情勢に関連して、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大についてなどが、歴史をさかのぼって議論されています。
飯田)そうですね。
細谷)しかしプーチン大統領は、自分たちの都合のいいように、歴史を部分的に捻じ曲げて使っているところがあります。
飯田)NATOの東方拡大がロシアを刺激したという説に関して、NATO側はロシアを巻き込んで包摂していこうと、いろいろな形でアプローチしてきた歴史があります。
細谷)ロシアでは部分的に史実をつまみ取って、都合がいいように利用するというような様子が見られています。最新の研究成果を参考にして、「どのように論じられているのか」ということへの理解を深めることが、ウクライナ情勢を知る上で鍵になるのではないかと思います。
ウクライナへの侵攻について目的に応じて使い分けるプーチン大統領
飯田)細谷さんがツイートされていましたが、先日のプーチン氏の会見で「『NATO』という言葉が入っていただろうか?」と。あれだけNATOの東方拡大について語って、戦争まで起こしたのに、なぜ今回は言及しなかったのでしょうか?
細谷)プーチン大統領は「なぜ戦争が始まったか」ということについて、その時々の目的に応じて使い分けています。最初は「NATOの東方拡大」ということを話していました。また、あるときは「ネオナチがいるから非ナチ化する」と。「ゼレンスキー大統領がネオナチの親分なので、彼を処罰しないといけない」と言った。
飯田)言っていました。
細谷)しかし、キーウ陥落が不可能になってきましたから、今度は東部に兵力を結集させています。既にロシアが化学兵器を使ったという話もありますが、これからロシアは化学兵器を多用してくると思います。以前にもチェチェンとシリアで行ったことですから。
飯田)化学兵器を。
細谷)そうなると、今度は「東部にある化学兵器工場の大量破壊兵器を止めるために介入したのだ」という論理に変えてくると思います。もうNATOの東方拡大や、ゼレンスキー大統領の非ナチ化という主張はどうでもよくなってしまうのです。こういうことに注意しなければならないと思います。
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