「ミサイルによる爆撃音が徐々に近付いてくる恐怖」ウクライナ在住ボランティアが語る

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ウクライナ在住のボランティア・高垣典哉氏が4月28日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。現地からウクライナの状況について語った。

「ミサイルによる爆撃音が徐々に近付いてくる恐怖」ウクライナ在住ボランティアが語る

【ウクライナ侵攻】ロシア軍の攻撃で破壊されたマンション=2022年4月22日、ウクライナ・ボロディアンカ 写真提供:産経新聞社

ロシア軍が南部完全支配へ攻勢、隣国モルドバから越境侵攻

ロシア軍は4月27日、ウクライナ南部の完全支配を狙ってミサイル攻撃などで攻勢を強めている。一方、ウクライナ軍は26日、隣国モルドバ東部の親ロシア派支配地域「沿ドニエストル共和国」に駐留するロシア軍部隊が「戦闘態勢に入った」との見解を表明した。ロシア軍が越境してウクライナに侵略する可能性があると見て警戒を続けている。

スーパーは時間指定で営業

飯田)ロシアによるウクライナ侵略から2ヵ月が過ぎましたが、高垣さんご自身はどのような状況でしたか?

高垣)2月24日に爆弾がキーウ近郊に落ちました。その日から逃げ出す人がたくさんいて、大統領令として外出禁止令も出ました。それからはずっと軟禁生活のような形で、お店もずっと閉まっていました。

飯田)そのようななかで、生活必需品などを確保するだけでも大変だったのですね?

高垣)スーパーだけは午前11時~午後4時まで、時間指定で開いていました。その間にみんな並んで物資を買わなければいけないのですが、欲しいものは早く行かないとなくなってしまいます。

ミサイルによる爆撃音が徐々に近付いてくる

飯田)「キーウはあと数日で陥落する」と言われていた時期もありました。高垣さんご自身も精神的にかなりタフだったと思います。

高垣)遠くから爆弾の音が徐々に迫ってくるのです。包囲されている外側からミサイルを撃ってくるのですよ。私の家から5~6キロほどにあるスーパーマーケットも、ミサイルで破壊されてしまいました。

飯田)お知り合いの方に被害などはありましたか?

高垣)私の知り合いがブチャで殺されました。

飯田)そうでしたか。危険が身近に迫っている状況のなかで過ごされていたのですね。

高垣)そうですね。

「ウクライナのためにできること」としてボランティア活動を

飯田)高垣さんはボランティア活動をされていますが、いつごろから活動されているのですか?

高垣)戦争が始まって2週間ぐらい経ち、とりあえず私の家族を近くの村に逃がしました。代わりに私の会社の弁護士が家に来てくれて、いまはその弁護士と暮らしています。

飯田)弁護士の方と。

高垣)その弁護士が義勇兵に志願するというので、私も行ってみたのです。しかし、キーウ周辺にはたくさん兵士がいて、武器も足りていないので、「また緊急事態になったときに連絡します」と言われて帰ってきました。

飯田)そうですか。

高垣)それでもウクライナのために何かしたいという気持ちがありますので、「自分にできることは何か」ということを考えて、いまボランティアをさせていただいています。

「ミサイルによる爆撃音が徐々に近付いてくる恐怖」ウクライナ在住ボランティアが語る

【ウクライナ侵攻】破壊されたまま放置された戦車=2022年4月18日午後、ウクライナ・キーウ近郊 写真提供:産経新聞社

一般市民としては「どのような形でもいいから、終わらせて欲しい」

ジャーナリスト・鈴木哲夫)一般市民の方は、いまどのような思いで暮らしていらっしゃるのでしょうか?

高垣)「ロシア軍に帰ってもらいたい、戦争を終わらせたい」という思いがいちばんです。

鈴木)しかし、手立てがないですよね。その辺りの市民の気持ちはどうなのでしょうか?

高垣)若い人は「戦争に勝ってロシアを追い出す」と思っている人が多いのですが、私たちとしては、他力本願ではないですか。ですので、「どのような形でもいいから終わらせて欲しい」と思っています。続ければ続けるほど、多くの人が被害に遭って亡くなってしまいます。民間人がみんな殺されていますからね。

生活は普通にできる ~それでも未だに電気や水がない地域も

飯田)暮らしのなかでいま必要なものとしては、どのような要望がありますか?

高垣)ミサイルを撃たれただけなので、キーウのなかでは、ライフラインに被害はさほど出ていません。普通に生活はできます。ただ、ロシア軍が撤退するまでは、物資が足りませんでした。いまは普通の状態に戻りつつあるのですが、それでも支援に行けていない地域へボランティアとして入ると、未だに電気やインターネット、水がないという環境のところもあります。

インフラを潰しながら入ってくるロシア軍

飯田)インフラが破壊されているということですが、ロシア軍の仕業なのでしょうか?

高垣)もちろんそうです。ベラルーシの方から入ってくるロシアの部隊が、連絡を取れないようにするため、まずはインフラをすべて潰しながら入ってくるのです。電気やインターネットも全然つながりません。きょうも朝7時~12時前までボランティアに行ってきたのですが、キーウに入るまではインターネットがまったく使えない状態でした。

飯田)そのような地域の復旧はこれからですものね。

高垣)そうですね。

情報もない場所へ政府と一緒にボランティアとして救援に向かう

飯田)現地から情報が出てこないとなると、そこで物資が足りているのかどうかもわからず、手を差し伸べることも難しいという状況でしょうか?

高垣)行ってみないとわかりません。政府も入っていない場所に行きますから。

飯田)政府もまだ入っていない場所というのは、高垣さんが1人で行かれるのですか?

高垣)そのときは政府の人間と一緒に行きます。

「ミサイルによる爆撃音が徐々に近付いてくる恐怖」ウクライナ在住ボランティアが語る

クライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで大破した車両が放置された道路を歩く住民(ウクライナ・ブチャ) EPA=時事 写真提供:時事通信

護衛として兵士も一緒に行動

飯田)政府が初めて入るときに、一緒に入っていくのですね。

高垣)ロシア軍が隠れているかも知れないということで、兵士も一緒に護衛として行きます。

飯田)そのようなところは、地雷などが仕掛けられているのではないかという報道もされています。

高垣)そうなのです。それで亡くなった人もいるので、「兵士から離れるな」と言われます。

ボランティアとしてウクライナの人を助ける高垣さんの気持ち ~ご家族は日本への避難を決意

飯田)そこまでのリスクを背負いながらもウクライナのために活動するのは、それだけウクライナという国に対しての愛着心など、いろいろな思いがあるということでしょうか?

高垣)私は日本人ですが、私の家はいまここにあります。15年前にこの国に来ましたが、いまでは妻も子どももウクライナ人です。ですので、現状を見過ごせないのです。

飯田)お子さんたちを近くの村に避難させたというお話もありましたが、高垣さんのツイッターなどを拝見させていただくと、日本へ避難させるというお考えもあるようですが。

高垣)妻の父親が半身不随で動けなくて、妻が何年も面倒を見ていました。ロシア軍が最初に来たとき、私は「日本へ行って欲しい」とお願いしたのですが、父親が動けないので行かないと言っていたのです。ずっと説得しているような状況でした。しかし、ようやく説得に応じてくれて、日本に行くと言ってくれました。

今後もウクライナに残ってボランティア活動を続ける

飯田)ご家族が日本に行かれたあと、高垣さんはどうされる予定ですか?

高垣)私はここに残ってボランティアを続けようと思っています。

飯田)危険な状況で、このような活動をしている日本人がいるということは、ウクライナの人にとっても驚きなのではないですか?

高垣)そうですね。兵士の人に「写真を一緒に撮ってくれ」と言われます。東洋人が全然いなくなりましたね。

飯田)みんな避難したということですか?

高垣)中国人や韓国人がかなりいたのですが、いまは全然見ません。

飯田)最後に、日本としてウクライナに貢献できることとして、どのようなことがありますか?

高垣)日本には手厚くやってもらっています。今後もウクライナのことを忘れずに、復興のときになったら、また手伝っていただきたいと思います。

*編集部注)高垣さんはYouTubeで「ウクライナ情報局」を開設されています。

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