論文が世界9位となった「沖縄科学技術大学院大学」の可能性
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沖縄経済同友会の代表幹事・渕辺美紀氏が5月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。これからの沖縄経済のあり方について語った。
沖縄本土復帰50年、これからの経済のキーワード「万国津梁の島・沖縄」
5月15日、沖縄が本土に復帰してから50年を迎えた。今回はホテル「百名伽藍」総支配人で沖縄経済同友会・代表幹事の渕辺美紀氏が、今後の沖縄経済について語る。
飯田)沖縄のこれからの経済について、どうご覧になっていますか?
渕辺)次の振興の1つは沖縄県、あるいは日本だけでなく、世界をどう呼び込むかということが大きなポイントではないかと思います。これまでの沖縄は、「日本の片田舎」という位置付けですよね。
飯田)そうですね。
渕辺)しかし、アジアの中心であるという意識を持ち、国際ハブがあるなど、その機能も持ちつつあります。そこを活かして、世界をマーケットにし、かつ人材も世界から呼び込むというところに早く切り替える必要があると思います。
飯田)世界をマーケットにして。
渕辺)「万国津梁の島・沖縄」が1つのキーワードではないかなと思っています。
世界で9位となった沖縄科学技術大学院大学の論文
渕辺)琉球王朝のころから、例えばいろいろな沖縄独自のものがありますが、1つは沖縄科学技術大学院大学(OIST)です。沖縄だけにしかありません。世界から学生が集まっていますし、教授陣も来ています。この大学院大学の論文が世界で9位という評価をいただいているのです。東大が40位、京大が60位というなかで、素晴らしい論文がたくさん出ています。
飯田)世界で9位。
渕辺)それをどのようにビジネスにつなげるか、これが今後の振興策の大きな起爆剤になると期待しています。
沖縄を特区にして世界からお金が入る仕組みをつくる
飯田)学術の研究から会社を設立して、ビジネスにつなげるということですね。人を入れるとなると、ビザの規制などもありますが、沖縄を特区にするようなビジョンもあるのでしょうか?
渕辺)いいことを言ってくださいました。沖縄はそもそも、「国家戦略特区」になっているのです。「国際観光イノベーション特区」ですから、「観光」が付いてはいるのですけれども、これをうまく活用する方法はあると思います。そこでできたノウハウや技術を県外、または世界に出していく。知的財産を守りながら世界に出すことで、世界からお金が入ってくる仕組みをつくるという夢は持っているのですけれども、夢すぎますかね。
飯田)ダイナミックな話ですよね。シンガポールやマレーシア、インドネシアからならば、沖縄まで4~5時間で来ることができますからね。
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の拠点を沖縄に置く
渕辺)自立的経済のためには、いつまでも政府に財源的な依存をしていてはいけません。30年~50年先を見たときに、沖縄が本当に自立するにはどうすればいいのかということです。
飯田)先を見据えて。
渕辺)例えばシンガポールが1つのモデルとしていいのであれば、プラスアルファが必要ではないかと個人的には思いますが、それが「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」ではないかと思っています。
飯田)FOIP。
渕辺)価値観を共有するということです。岸田総理が外遊でも一生懸命、「FOIPの価値観を共有した枠組みを」ということをおっしゃっていますけれども、沖縄は世界大戦で大変な被害を受けたところです。沖縄こそ、平和を発信するにはふさわしいところだと思うのです。ただ、平和発信だけではなく、その枠組みをどうつくっていくかということにおいて、FOIPの拠点を沖縄に持ってくる。国防だけではなく、経済安全保障もありますし、コロナ禍の経験から医療安全保障もあると思います。そういったものをまとめて沖縄に拠点をつくり、アジアを中心にして人々が定期的に集まり、意見交換をしたり、共有価値を確認し合い、またそれぞれに動いていく。
ダボス会議のアジア版を沖縄で開催する
渕辺)沖縄では2000年にサミットがあったので、国際会議の経験があります。世界の枠組みでの民間主導であれば、ダボス会議があります。ダボス会議のアジア版を沖縄でできないかと思うのです。
飯田)ダボス会議のアジア版が。
渕辺)もう1つは、沖縄だからこそ、台湾との交流はより深められると思うのです。日本にとって台湾はとても大事です。近い地域である沖縄から台湾との連携を強化する。政治的にはいろいろ難しいところがあっても、民ならそれなりのことはできると思います。民の連携ができれば、大きな力になると思います。
開業率が全国1位の沖縄
飯田)いかがでしょうか?
経済アナリスト ジョセフ・クラフト)いままで知らなかったこともご指摘されていて、おもしろいと思います。これまで沖縄は観光と米軍のイメージが強くて、経済の潜在能力に関しては、あまり注目されていませんでした。
飯田)これまでは。
クラフト)しかし、沖縄は開業率が8.8%と、全国1位なのです。日本全国の平均は5.1%くらいです。多くの若者が沖縄に行って企業を立ち上げているというところからも、経済のポテンシャルは大きいと思います。
飯田)出生率も日本でいちばん高いですし、若い人たちも多く、起業するのにいい環境がある。沖縄科学技術大学院大学(OIST)については、英シュプリンガー・ネイチャー発表の「質の高い論文ランキング2019」で9位になった。このランキングでは、東大が40位、京大は60位でした。ですから日本国内では1位なのですよね。
クラフト)すごいですよね。
飯田)知りませんでした。
クラフト)日本一どころではなく、世界トップ10です。
飯田)ここの研究がスタートアップに結び付いて、お金が入ってくる可能性があります。将来的にも非常に有望です。
観光から脱皮するタイミング
飯田)特区の話をされていましたけれども、規制でなかなか進まないところをうまく行う方法が必要ですか?
クラフト)観光特区なのですよ。観光という呪縛を解いて、経済全般でやっていかなければならないということだと思います。
飯田)観光で稼ぐということは、かつての基地経済から脱却するためには必要なことだったのですが、そこから「さらに脱皮する」というタイミングなのかも知れません。
沖縄を拠点にしてアジアの安全保障をどう守るか
クラフト)もう1つ、鍵となるのはアジアの安全保障なのです。沖縄は台湾に近く、アジアの中心にある。沖縄を拠点にどうアジアの安全保障を守っていくか。そういう意味では、アジア版ダボス会議というのはおもしろい案だと思います。
飯田)中国で「博鰲(ボアオ)アジアフォーラム」をやっていますけれども、中国でこの先やるのはどうなのかと。まさに「レピュテーションリスク」ですよね。
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