戸籍記載「キラキラネーム容認」の背景にあるもの
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ジャーナリストの佐々木俊尚が5月18日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。戸籍の名前に読み仮名をつけるための法改正について解説した。
戸籍記載「キラキラネーム」容認へ
戸籍の名前に読み仮名をつけるための法改正について議論してきた法制審議会は5月17日、中間試案を取りまとめ、いわゆるキラキラネームも認められる見通しとなった。現在、戸籍には名前の読み仮名が記載されていないが、行政手続きのデジタル化のため、読み仮名を記載する法改正に向けて法務省は今後広く意見を募り、2023年の通常国会に改正案を提出する方針だ。
飯田)キラキラネームは、社会面で取り上げられることが多いですね。
佐々木)定期的に必ず話題になりますね。検索していたら、「絶対に読めないキラキラネームランキング」という記事があって、1位が衝撃的です。「男」と書いて「アダム」と読む。
飯田)アダム。
佐々木)あと、「皇帝」と書いて「シーザー」と読む。
飯田)シーザー。
異体字が多く存在する漢字
佐々木)キラキラネーム容認ということで、「何を考えているのだ」と不思議に思っている方もいるかも知れません。背景には、「行政手続きのデジタル化のために、読み仮名を戸籍に記載する」という目的があります。なぜ読み仮名が必要なのかと言うと、異体字が日本には多すぎるのです。例えば「渡辺」という苗字は無数にありませんか? 「渡邊」「渡部」など。あとは「斉藤」の「斉」とか。
飯田)確かにそうですね。
佐々木)いろいろな説がありますが、異体字は5万字くらいあるそうです。デジタル化するということは、基本、文字の表示はJISコードなど、世界共通のコードで表示しているわけですけれども、「Unicode(ユニコード)」という、漢字や英語など世界各国の文字が全部使用できるコード体系があるのです。Unicodeには、異体字が以前は入っていなかったのです。
飯田)そうなのですか。
佐々木)異体字を表示する場合、例えばパソコンの画面などで1個1個別々に特注するなど、はんこの特注のような感じでつくっていた。しかし、コードに使用できないから、表示するデバイスによっては表示できないのです。
飯田)文字化けしてしまったり。
佐々木)その5万字くらいある異体字を、全部Unicodeに収容するというルールを新しくつくったりと、苦労しているのです。
戸籍をデジタル化で対応するために読み仮名で保存する ~「アダム」と書いてあれば「アダム」が中心となり、漢字は付いているだけ
佐々木)そんなことに全部対応していたら、いつまで経ってもデジタル化は進まない。戸籍は未だに漢字で書いて、紙で保存しているわけです。これをデジタル化し、もっとスッキリ使うためには、異体字にこだわらず、ひらがなやカタカナで保存した方がいいのではないかということです。つまり、読み仮名です。
飯田)読み仮名で。
佐々木)今回の話は、最終的には漢字で記載されている「漢字中心の戸籍から読み仮名中心の戸籍に移そう」という、壮大な構想なのです。基本はひらがな、カタカナで記載されてあり、ついでに漢字が付いていると。だから名前が「アダム」と書いてあれば、極論、漢字は何でもいいということです。
飯田)システム上は紐付けにすぎない。
佐々木)いままでは漢字の「男」が中心だったのだけれども、戸籍だけだと、これを何と読むかわからない。しかし、カタカナで「アダム」と書いてあれば「アダム」が中心である。それにどういう漢字を付けるかは、そのときどきで勝手に考えればいいのではないかという、そういう考え方に変えようという話なのですよ。
どこまでルールをつくるか ~公序良俗に反する場合は除く
飯田)闇雲に紐づけるわけにもいかないので、どこまでルールをつくるか。
佐々木)「公序良俗に反する場合は除く」ということです。以前、「悪魔ちゃん命名騒動」というものがありました。子どもに「悪魔」とつけようとした。
飯田)あれは認められませんでした。
佐々木)公序良俗に反する場合は除くと。この前も、公序良俗とは関係ないけれども、「王子様」という名前の男性がいて、本人が家庭裁判所に申し立てて改名が認められたというニュースがありました。
ある程度想像できるものであればいい
飯田)「光宙」と書いて「ピカチュウ」など、「本当にいいのか」という話になるのですが、大元を辿ればシステムのところの議論なのですね。
佐々木)「ピカチュウ」も光が「ピカ」というイメージだし、宙は「チュウ」と読むのでいいだろうと。意味合いなどが連想できるならいいという考え方です。「騎士」と書いて「ナイト」や、「天使」と書いて「エンジェル」なども、一応は連想できます。「男」で「アダム」、「皇帝」で「シーザー」も連想できるかなと思います。
飯田)これを「男」で「イブ」と読んだらバツだと。
佐々木)そうですね。
飯田)意味が通らないということになる。
佐々木)まったく関係ない、イメージのものに読み仮名をつけてはいけないけれども、ある程度想像できるものであればいいと。相当、幅は広くなりますよね。
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