マクドナルド、ルノー……大きな損失を負っても欧米企業がロシアから撤退する理由

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経済アナリストのジョセフ・クラフトが5月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。相次ぐ欧米企業のロシアからの撤退について解説した。

マクドナルド、ルノー……大きな損失を負っても欧米企業がロシアから撤退する理由

ロシア極東ウラジオストク中心部に昨年12月にオープンしたマクドナルド極東1号店。若者や家族連れ、高齢者らが次々と訪れていた=2021年4月23日 写真提供:産経新聞社

ルノー、マクドナルドが相次いでロシアから撤退

米ファストフード大手マクドナルドは5月16日、ロシアのウクライナ侵攻を踏まえ、30年以上展開していたロシア市場から撤退する方針を発表した。地元の買い手への事業売却を検討している。

飯田)ロシアによるウクライナ侵攻が経済にも影響しています。経済制裁もありますが、欧米企業がかなりロシアから退いていますね。

クラフト)フランスのルノーの全面撤退に続いて、マクドナルドも撤退します。米ソ冷戦の象徴であったマクドナルドが撤退するということです。

飯田)冷戦が終わって、「ついにマックが進出したか」と言われましたからね。

クラフト)その象徴が撤退するということになると、冷戦の終わりの終わり。つまり、また冷戦の始まりということになります。本当に象徴的だなと思いますね。

飯田)製造業のテコ入れをロシアは行ってきたのですが。

クラフト)長期的に外資が撤退することは、ロシア経済にとっては大きい。目先の経済制裁よりも厳しいですね。

1800億円の損失を負ってもマクドナルドが撤退する理由 ~信用リスク

クラフト)マクドナルドは約1800億円の損失を被ってでも撤退する。英BP……ブリティッシュ・ペトロリアムに関しては、撤退すると数兆円規模での損失になります。なぜそこまでするのかというと、裏にあるのは外資系企業のレピュテーションリスク、信用リスクです。

飯田)信用リスク。

クラフト)消費者、投資家、または取締役からの批判がいままでのレピュテーションリスクだったのですけれども、直近では、レピュテーションリスクに政府や従業員が加わっているのです。従業員に関する影響は大きいです。アメリカ企業の従業員が、「なぜ我々はロシアで事業をしているのだ」と反発しているのです。そういう従業員からの突き上げで経営陣が撤退するケースが多い。

飯田)経営陣からすれば、四面楚歌状態ですね。「周りのみんなが私たちを批判する」と。

クラフト)従業員の不満は全世界の営業に影響します。従業員が誇りをもって働けるようにしなければならない。ロシアで事業を展開するのはいかがなものかという突き上げがあり、アメリカ政府にも睨まれる。そうなると、ロシアでのビジネスは損失を被ってでも撤退した方がいいという結論になる。

飯田)なるほど。

クラフト)いまは欧米企業が対応を問われていますが、日本企業にもこの問題が問われると思います。数ヵ月先には、日本企業の撤退のニュースが出てくるのではないでしょうか。

「サハリン1・2」の権益を安易に捨てる必要はない

飯田)BPの話が出ましたけれども、これは石油メジャーの1つで、ロシアに関しても石油や天然ガスの権益を持っていた。その部分の損失が兆円単位になるということですよね。日本企業でも「サハリン1・2」や「アークティックLNG2」の権益を持っているところがありましたが。

クラフト)日本の商社が持っています。ただ、BP、シェル、エクソンは自国へのエネルギー輸出のための権益ではなく、単なるビジネスです。日本の場合は国策としてのエネルギー政策と直結してやっているわけです。ですから日本の場合、少なくともサハリンに関しては、安易に権益を捨てる必要はないと思います。

飯田)権益を捨てる必要はない。

クラフト)しかし、その他の事業、自動車メーカーや医療メーカーなどは今後、ロシアでのビジネスが問われていくことになると思います。レピュテーションリスクもある一方で、単にルーブルの下落、あるいはサプライチェーンの停滞など、経済面での問題もありますが。

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