「貿易ルートの遮断」を武器として使うロシア  中東やアフリカで再び「アラブの春」のような騒乱が起こる可能性も

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地政学・戦略学者の奥山真司が5月31日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシアのウクライナ侵攻によって起こる食糧不足について解説した。

「貿易ルートの遮断」を武器として使うロシア  中東やアフリカで再び「アラブの春」のような騒乱が起こる可能性も

2022年2月7日、モスクワでの記者会見に臨むロシアのプーチン大統領(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアの侵攻で食糧不足懸念

ロシアによるウクライナ軍事侵攻の長期化で、世界の小麦輸出量の約3割を占める両国の輸出が停滞し、世界的な穀物不足と食料価格の高騰が進んでいる。

奥山)ウクライナ情勢で最も注目しなくてはいけないのは、黒海情勢だと思います。戦略的には、南シナ海に比べると注目されるところではないのですけれども、今回は世界経済にとっての致命的な役割を果たしていると感じます。

飯田)黒海の情勢が。

奥山)いまはロシアが黒海そのものを支配しているという状況です。ウクライナ側は侵攻が始まった時点で、1度、ウクライナ海軍を捨てているのです。自分たちが持っていたいちばん大きな船を自沈させています。

飯田)そうなのですね。

奥山)いきなり沈めて、「もう海の方には我々は手を付けない」という意思を示しているのです。そのため、黒海そのものがロシア海軍によってコントロールされてしまっています。ウクライナの小麦は、クオリティ的には日本へ入ってくるようなものではないのですが、特にエジプトはウクライナ産の小麦を大量に必要としているのです。その小麦は、ポーランドを抜けて鉄道など、陸路で輸送するということもありますが、基本的には船で運び出されます。しかし、ロシア海軍に海をブロックされている状況なので、外に運び出せないのです。

飯田)オデーサ周辺は機雷を撒かれてしまっているというような話もあり、民間の商船はまったく立ち入れないということです。

中東やアフリカで再び、「アラブの春」のような騒乱が起こる可能性も ~小麦などの値段が上がり

奥山)2011年~2012年くらいにかけて、「アラブの春」という民主化運動が起こりました。あのときも小麦などの値段が高騰して、民衆からの不満が上がり、そこから政府を倒す運動につながったのです。

飯田)アラブの春。

奥山)今回もエジプトで小麦の値段が上がることがわかっています。これから中東やアフリカの方で物価が上がることによって、政治不安が出てくる可能性を我々は注視しなければなりません。

「貿易ルートの遮断」を武器として使うロシア

飯田)一方でロシアは収奪した小麦を外に出そうとしていて、この間、エジプト側が地中海沿岸で入港拒否したというような話も出ていました。

奥山)果たしてこれから、他のアフリカや中東の国はどうするのかというところが注目されます。小麦のルート、貿易ルートは閉めてはいけません。ロシアはそれを逆に武器として使っているのが怖いところです。

飯田)貿易ルートということでは、中国が扱っている一帯一路も、まさにあそこに入ってきますよね。

奥山)そうですね。ルートが大事だということはいつも思います。

飯田)武器にもなる。

奥山)なります。道を塞いでしまうというやり方です。

シーレーンを持つ日本も他人事ではない

飯田)シーレーンのことを考えると、日本も他人事ではないわけですよね。

奥山)これに関しては本当にそう思います。

飯田)黒海の状況と同じことが、東シナ海や南シナ海で起こるようなことがあれば。

奥山)1つの最悪のシナリオを、我々はいま見ているのだということです。ここから教訓を得なくてはいけないと思います。

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