ジャーナリストの須田慎一郎が6月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。夏の参議院選挙の日程について解説した。
自由民主党の茂木幹事長、参院選公示は6月22日と明言
自由民主党の茂木幹事長は6月4日、山梨県甲府市で開かれた党の会合に出席し、夏の参議院選挙について「間違いなく6月22日に公示になる」と明言した。政府・与党は通常国会を会期末の15日に閉じる方針で、投開票日は7月10日となる見通しだ。
飯田)もともとこういう日程だろうとは言われていましたが、まだ閣議決定されていないので、報道では「見込み」などと書いていたのですけれども。
須田)これしかないでしょうね。今通常国会は参議院選挙を控えているだけに、「会期延長はない」という状況から考えると、スケジュールとしては、これしかないということになるのだろうと思います。特に6月23日は沖縄県の慰霊の日を控えていますから、それとは重ならないように考えると、消去法でこの日程になるのだと思います。
今回の参議院選挙の最大の特徴は「争点がない」こと
飯田)23日は、先の大戦で沖縄の組織的な戦闘が終了したという日ですので、ここはさすがに外さなくてはいけない。参院選に関しては、情勢分析なども出てきていますけれども、今回、「何が論点になるのか」ということが浮かびあがってきませんが。
須田)「争点がない」というのが、今回の参議院選挙の最大の特徴になるのではないでしょうか。やはり先の補正予算によって、2兆7000億円しかお金を出さないという方針になった。それに対して、「景気・経済対策が不十分である」と野党が批判しました。私は野党としては、経済問題、景気対策問題で争点を立ててくるのがいちばん王道ではないかと思ったのですが、どうもそうなっていないというか、センスがないなという感じがします。自民党にとっては、プラスなのではないかと思いますけれど。
もっと考えて公約や政策を練るべき
飯田)立憲民主党が公約を先週末(3日)に出していました。「消費税を時限的に下げる」や「ガソリン減税を行う」というところの対策はあるのですが、一方で、「円安放置の金融政策の見直し」と書いてあって、これはむしろ「引き締めるのか」という。
須田)むしろ、これは日銀の専管事項ですからね。「円安放置」と政府に言われても、と思います。もちろん政府と日銀は一体だけれども、それを「放置しません」ということになってしまうと、日銀の独立性はどうなるのかという辺りも、よく考えて公約や政策を練るべきではないかと思います。
飯田)いろいろな分析はありますが、物価が上がっている問題のなかには、エネルギーの値段上昇が大きくのしかかっているということも言われています。
3日に行われた政調会では「積極財政派」と「財政再建派」の間で大バトルに
須田)野党なのだから公約を掲げるのはいいけれども、もっと現実性を欠いているくらい跳ねた方がいいと思うのです。「本当に実現できるのか」というくらいの大風呂敷を広げた方が、有権者の心を掴みます。選挙に勝つための公約なのだから。その意味で言うと、権力に対する執着心が自民党などに比べると極めて希薄だなという感じがします。
飯田)選挙前ですので、自民党のなかの経済に対する議論も活発ではありますけれども、ガチンコでぶつかるという姿勢がいままでは見えてきませんでした。
須田)それはどちらかというと、メディアの取材不足です。3日の政調会では、2023年度予算案をどうするのかということが話題になりました。いま、骨太の方針という、予算案の最初にやらなければならない議論をスタートさせているのですが、「積極財政派」と「財政再建派」の間で怒声があがるほどのガチンコの大バトルになったのです。
飯田)怒声があがるほどの。
須田)財政慎重派の方は、やはり財務省の意向に忖度して、ものすごく緊縮財政の方向に持って行こうとしているのです。それに対して、積極財政派の本部を率いている西田政調会長代理が激怒して、「これでは政調会を開いている意味がないではないか」と言ったのです。
飯田)補正予算も2兆円余りという。GDPギャップからすると、あまりにも少なすぎるのではないかというところから、不満が溜まっているところがありますか?
2023年度予算の上限をはめようとする財務省 ~内閣府を代表して出た委員が認めてしまった
須田)しきりに財務省は、2023年度予算について上限をはめようとしているのです。当初予算で非社会保障費……年金、介護、医療を除いた分に関しては、年間3百数十億円しかプラスにならないのですよ。
飯田)そうなのですか。
須田)このキャップをはめられてしまうと。
防衛予算のGDP比2%などは夢のまた夢となる
飯田)それはプラス1%どころか、0.01~0.001%くらいの勢いですね。
須田)そうすると防衛予算のGDP比2%などは夢のまた夢です。
飯田)そうですよね。これから5兆円を積み増そうとしていますものね。
須田)これは私が勝手に推測で言っているわけではなく、そのような質問が3日の政調会で出たのです。それに対して、内閣府を代表して出た委員が認めてしまった。それで紛糾したわけです。
飯田)そうなのですね。
須田)この辺りもメディアはきちんと伝えようとしませんが、西田政調会長代理はこう言ったのです。「私は(党内)政局にしたくないから、譲歩に次ぐ譲歩を重ねてきた。それに対する答えがこれか。裏切られた」というようなことです。
飯田)なるほど。骨太の方針が、その先の予算編成に影響し、本予算が決まっていくから、ここの書きぶりでもだいぶ違うという。その書きぶりに関しても、積極財政派の安倍さんと、規律派と言われる麻生さんの間でかなり詰めて行ったようですけれども、火種はまだ残っている。
須田)そうですね。落としどころをつくったのだけれども、それに焦った財務省が霞が関文学を用いて、毒を忍び込ませたのです。それにみんなが気付いてしまったのです。
過去と同様に「3年間で1000億円」というキャップをはめる ~年間300億円余りのプラスにしかならない
飯田)骨太の文言としては、経済あっての財政だというような書き方をして、プライマリーバランスの黒字化に関しても25年という年限にこだわらないというような、財政規律よりも積極財政なのかと思いきや……。
須田)その部分は落ちたのです。2025年度プライマリーバランス黒字化の文言は落ちたので安心したら、他のところでごまかしの文言が入ってきた。それをよく分析してみたら、過去と同様に「3年間で1000億円」というキャップをはめるのだということでした。「これは本当か」と聞いたところ、内閣府サイドは認めてしまったのです。
飯田)内閣府のなかの陣容を見ても、決して財政規律派一辺倒というわけではないですからね。
須田)一色ではありませんね。
6日午後に再び開かれる政調会 ~どのような議論になるのか
飯田)なかには本当に財政出動をやりたいし、やるべきだと思っているけれども、立場上は言えないという人もいるわけですものね。
須田)その辺りの思惑が働いたでしょうし、それで3日に決着がつかず、きょう(6日)へ持ち越しになったのです。きょうの午後に再び政調会が開かれますから、どういう議論になるのかをしっかり見ていかないといけません。やはり2023年度の予算、あるいは景気・経済というところに大きな禍根を残すことになると思います。
「防衛費の増額」は日米首脳会談で出た話
飯田)防衛費に関しても、バイデン大統領との間で日米首脳会談を行い、そこで出た話です。やらないとさすがにまずいですよね。
須田)ある意味では国際公約ですから、政治の意志なのです。それを政治的に責任を負わない財務官僚が、勝手に書き換えていいのかということです。役人の矩(のり)をこえているではないかと思います。
防衛費増額の代わりに「増税」の可能性も
飯田)あるいは防衛費を増やすけれども、その代わりに「ここを減らす」、「ここを増税する」などというところで担保しようしているということですか?
須田)私が心配しているのはそこなのです。増税というところです。「増税した分はプラスアルファを認める」ということになると、国民生活にとってどうなのかということです。
飯田)考えてみれば消費増税も、当時の菅(直人)政権が言い出した国際公約だという話から始まっていました。どんどん巧妙になっている気がするのですけれども。
須田)岸田総理は、その辺りに意識がないものですから、主計局長の説明で首を縦に振ってしまったらしいのです。それを盾に財務省はいろいろなところへ持ち込んでいるようです。
飯田)財務省としては「総理のご意向ですから」という。総理はそれを表立って説明することはないのですか?
須田)ありませんね。ただ、これも先週の経済財政諮問会議での総理の発言で出てくるのです。なぜその辺りをきちんとメディアは報道しないのかという問題があります。
飯田)総理の発言に出てきているのですね。
須田)出てきているのです。
飯田)しかも、そのうち議事録が出るでしょうし、議事要旨はもうある程度出ている。この先の5年~10年を決めるような話が、いまされているわけですよね。
須田)そうなのです。このまま進んだら、それこそ自民党内から内閣不信任案を出してもいいのではないかという……100%出ませんけれども。それくらいのことだと思います。
飯田)過去を紐解けば、宏池会政権で不信任案に非主流派が乗ったということがありましたからね。
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