外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。韓国の統一地方選挙と国会議員の補欠選挙の結果について解説した。
大統領選では僅差だった韓国の与党と野党の差が広がった理由
6月1日の韓国統一地方選挙と同時に行われた国会議員の補欠選挙は、保守系与党「国民の力」の5勝2敗であった。依然、国会では少数与党だが、「国民の力」の権性東(クォン・ソンドン)院内代表は2日、勝利の勢いを背景に「(与野党が)協力する政治は国民の命令だ」と野党側に譲歩を迫り、法案審議などで重要な役割がある国会の法制司法委員長のポストを要求した。
飯田)統一地方選も圧勝だということですが。
宮家)17戦12勝ですからね、大統領選での僅差から一体今はどこが変わったのか。あの僅差が大きな意味を持っていたという見方もあるし、いまの野党側、前政権の進歩系の人たちが戦術を間違えたのではないかという見方もあります。内部はバラバラのようですが。
「共に民主党」による過去5年間の失政への信任投票
宮家)これにはいろいろな理由があると思います。私は韓国の専門家ではありませんが、世代の大きな流れを常に考えています。前にも申し上げたことなのですが、日本では全学連や全共闘の世代がありましたね。
飯田)全共闘世代が。
宮家)あの反米、親共産主義の彼らが日本の進歩系と言うか、革新系を担ってきた部分があるのですが、いま日本ではその方たちが引退されているわけです。実は少し遅れて似たようなことが韓国でも起きているのではないかと思います。それが「386世代」と呼ばれる、「光州事件」で弾圧された学生運動の人たちです。
飯田)386世代。
宮家)あの人たちはいま50代ですから、「まだあと20年ありますよ」と、これまで言ってきました。
飯田)まだ20年は現役で。
宮家)ただ、今回の状況を見ていると、北朝鮮が核兵器を持ち、中国がこれだけ台頭してきた。これについて進歩系の人たちは、ここが絶好のチャンスだと思ったのかも知れません。トランプさんを使って金正恩さんと会わせ、「米朝首脳会談」を実現しましたが、結果はまったく効果はなかった。
戦術を変えなければならない「386世代」の人たち ~女性党首に交代したが
宮家)過去5年間は、私に言わせれば失政です。今回の選挙はこれに関する信任投票の部分があって、本来であれば韓国の386世代の人たちは、戦術を変えなければいけないと思うのです。
飯田)戦術を変える。
宮家)実際に新しい女性の党首を立てて、いろいろ試みをしたのでしょうけれど。しかし、新聞に書かれていることしかわかりませんが、どうも内部にいままでの旧来の革新、進歩的な考え方の人たちが残っていて、女性の新たな党首は苦労したと言われています。
戦術を変えなければならない「386世代」の人たち ~女性党首に交代したが
宮家)この5年間は、私に言わせれば失政です。これに関する信任投票の部分があって、本来であれば韓国の386世代の人たちは、戦術を変えなければいけないと思うのです。
飯田)戦術を変える。
宮家)実際に新しい女性の党首にして、いろいろ試みをしたのでしょうけれど。しかし、新聞に書かれていることしかわかりませんが、どうも内部にいままでの革新、進歩的な考え方の人たちが残っていて、女性の新たな党首は苦労したと言われています。
韓国は今後、どちらの方向へ向かうのか ~世の中は少しずつ変わっている
宮家)彼女のやり方は、民意が少しずつ変わってきているのだから、あまり左には行かず、少し中道に向かおうとしたのだけれど、そこで「守旧派」から非常に強い反発を受けたと報じられました。日本でもありましたから、それも当然だと思うのです。そんなことをやっているうちに、相対的に「保守の方が安心できる」ということで、有権者の票が保守系に集まったのではないでしょうか。だとすると、かなり構造的な話になり得ることなので、注目はしています。
飯田)「386世代」とは、1990年代に言われた言葉です。当時30代で、1980年代の「光州事件」などの民主化運動にかかわった人たちを指し、「6」は1960年代生まれという意味です。30、80、60で「386」と。
宮家)私は1950年代生まれですから、その方々は少し下の世代なのですけれども、まだまだ彼らは元気で絶好調です。その意味では、いま日本で起きているような「世代交代」がまだ起きるわけではない。しかし、世の中は少しずつ変わっている。韓国がこれからどちらの方向に行くかは非常に大事ですよね。
日韓関係は本当に改善されるのか
宮家)そして「日韓関係がよくなるのではないか」という見通しもありますが。
飯田)保守系与党「国民の力」の圧勝で。
宮家)そうであってくれればいいのですけれど、少なくとも韓国の新聞を読んでいると、今回は統一地方選挙ですから、別に日韓関係が争点ではないのです。
飯田)この選挙において。
宮家)当然そうなのですが、「オール・ポリティックス・イズ・ローカル(全ての政治はローカルだ)」と言いまして、有権者が気にするのは国内のこと、生活のこと、経済のことです。ですから、これですぐに日本との関係がよくなると期待するのは少し早い。ただ、状況は悪い方には動いていないと見るべきではないでしょうか。
飯田)依然として少数与党であることは間違いないですものね。
宮家)ですから、次の総選挙までは、まだ十分力を発揮できないような状況だとは思います。まだ安心してはいけないと思います。
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