プーチン大統領のトルコ訪問は「終わりの始まり」になるのか

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月3日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。プーチン大統領のトルコ訪問について解説した。

プーチン大統領のトルコ訪問は「終わりの始まり」になるのか

2022年4月25日、モスクワでの会議に出席するロシアのプーチン大統領(タス=共同) 写真提供:共同通信社

ロシアのプーチン大統領がトルコ訪問を検討

ロシア大統領府は、プーチン大統領がトルコへの訪問を検討していると明らかにした。実現すればウクライナへの侵略後、初の外国への訪問となる。ウクライナのゼレンスキー大統領と会談する可能性については否定した。

飯田)5月30日にプーチンさんとトルコのエルドアンさんは電話会談をしています。トルコは仲介に熱心ですね。

戦況が動いている証拠

宮家)仲介などできませんよ。相手は核を持ったプーチン大統領ですから。残念ですが、戦争は彼がやめたいときにやめるのです。しかし、おそらくプーチンさんがトルコに行くという発表をしたこと自体が、戦況が少しずつ動いている証拠だと思います。

飯田)トルコに行くということが。

宮家)私は停戦の問題に関して、常に戦場での状況を見なければいけないと思っています。いまの状況は、我々が感じているほどウクライナが善戦しているわけではないと思います。

飯田)現状は。

宮家)戦争とは非情なものですから、人をより多く投入し、より高度な武器を投入した方が勝つ部分があるのですけれど、ウクライナが常に勝っているわけではありません。現状、おそらくロシアは東部へ集中的に兵を動かしています。北はもう捨てましたし、南部も手薄になっています。

東部を獲って勝利宣言をしたいロシア

宮家)ロシアが獲りたいのはやはり東なのです。それで勝利を宣言して、長期戦になることを避けようとしている部分が出てきているのではないでしょうか。

飯田)東部を獲って。

宮家)そのようなものを反映して、プーチンさんはトルコに行くのかどうか……行くのでしょうね。ゼレンスキーさんと会うかは別として、何らかの取引を始めたいのかなという気がしないでもない。

「終わりの始まり」の可能性も

宮家)ただ、ゼレンスキーさんからすればとんでもない話ですし、エルドアンさんはスウェーデンとフィンランドのNATO加盟にも反対しています。トルコだって必死なのです。EUに入れないトルコがNATOには残っているけれど、ロシアとは黒海を挟んで対峙している。もともとトルコとロシアは、長年戦争をやっていた国同士ですから。そういう意味では、エルドアンさんは政権とトルコの利益を最大化するために、いろいろと画策している。これもその一環なわけです。

飯田)プーチン大統領と会うことも。

宮家)国連を巻き込んでいるわけですけれども、国連がいくら騒いでも、残念ながら国連にはプーチンさんを説得するだけの力もないし、納得するはずもありません。終わりの始まりかなと思いたいけれども、まだそこまで言い切る自信がない、そんな感じです。

ロシアがデフォルトになったからといって物事は動かない ~この戦いはまだ続く

飯田)西側は結束してロシアに制裁を掛け続けています。いよいよ債務不履行になるという報道も出ています。侵略が始まってから100日になりますが、経済制裁は効いているのですか?

宮家)経済制裁は特効薬ではありません。漢方薬のように効いてくるはずです。ただ、デフォルトになったからといって、すぐに物事が変わるかというと、必ずしもそうではないでしょうね。

飯田)デフォルトになったからといって。

宮家)ある程度、石油もガスも売れるわけですから。今だにヨーロッパも一部では石油を買っているし、ガスについては禁輸すらしていません。冬に向かってそんな決断をできるわけがありません。

飯田)そうですね。

宮家)現金収入があるということです。今後ルーブルが買われるかどうかは別として、経済制裁は徐々にしか効いてこない。となると、プーチンさんは中長期的には、厳しいことはわかっているけれど、短期的にはまだ勝負できると思っているでしょう。そういう状況で双方が素直に停戦に応じるかと言ったら、正直分からない。どちらもまだ負けているとは思っていないですからね。
飯田)どちらも。
宮家)ウクライナの方は、これから高性能の武器がくるので、6~7月がチャンスだと考えているはずです。そうなると、仮にプーチンさんが近日トルコに行ったところで、すぐに物事は動かないのではでしょうね。残念ですが。

ウクライナが激しく抗戦すれば、ロシアが化学兵器を使用する可能性も

飯田)そうすると、6~7月にウクライナが反転攻勢をかけるのかどうか。そして反転攻勢をかけられたロシアは、化学兵器や核など、別の兵器に手を出すのか。

宮家)核はともかくとして、化学兵器は十分あり得るでしょうね。それからいまロシアは、「他の国に波及する」などと言っていますが、あれは威嚇だと思います。しかし、そのオプションを使う可能性はゼロではありません。そこは我々も頭に置いておくべきでしょう。

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