中間選挙後に求心力を失いかねないバイデン大統領
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ジャーナリストの須田慎一郎が6月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。米労働省が発表したアメリカの5月の雇用統計について解説した。
アメリカの5月の雇用統計、就業者数が39万人増加
米労働省は6月3日、5月の雇用統計を発表した。景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数は4月と比べて39万人の増加、失業率は4月と同じ3.6%となっている。
飯田)市場の予想を上回ったそうですね。
須田)大前提として、アメリカの雇用統計は、景気の温度感を測る上でベストの統計とも言われていて、この雇用統計が株価に大きな影響を与えるのです。
飯田)株価に影響を与える。
須田)連邦準備制度理事会(FRB)もこの辺りを横目で睨みつつ、利上げに踏み切っているのだろうと思います。微妙なバランスを保ったなかでのタイミングといい、利上げ幅といい、「FRBはうまいな」と思います。
教科書通りの展開
飯田)5月の連邦公開市場委員会(FOMC)の意思決定の会議のなかで、0.5%の利上げを決めただけではなく、6月、7月も連続してやるのではないかということが、議事要旨として出てきました。この辺りも絶妙なところですか?
須田)そうですね。サプライズ的なものはせず、きちんとマーケットと向き合って、利上げを決めています。景気を冷やしすぎることなく、インフレを抑えていく。中央銀行としては、教科書通りの展開だろうと思います。
「利上げしても大丈夫」というメッセージ
飯田)FRBは2つの政策目標を負わされていると言われています。1つが雇用で、もう1つがインフレ率、物価。雇用がこれだけ強いということは、「利上げしても大丈夫だ」というようなメッセージになりますか?
須田)利上げしてもさほど景気を冷やすことはなく、成長は持続していけるという結果だと思います。
飯田)引き締めすぎると景気を殺してしまうところがありますものね。
須田)FRBのアナウンスメントがあまりにも強すぎると、産業界も雇用を絞ろう、あるいは生産を少し抑えておこうという動きになるのです。そうすると途端に雇用も減っていくことになりますから、「そうではない」というところを出したのだと思います。
産油国の増産が「お付き合い程度」で、原油先物価格が上昇
飯田)他方で物価、インフレ率の方ですけれども、原油先物の値段がまた上がっています。先行きをどう見ますか?
須田)ただ、この辺りは政策的な要因が強く、サウジアラビアを含めて産油国がどれだけ増産に応じてくれるのか。バイデン大統領が直々にサウジに要請したのだけれども、やはりお付き合い程度の増産でしかなかったために、先物がこれだけ上昇したのだろうと思います。
飯田)お付き合い程度の増産だったため。
須田)サウジとしては、同じエネルギー産出国として、マーケット価格の維持という点では、ロシアへも配慮しなくてはならない。だからと言って、アメリカの意向を無視するわけにはいかず、非常に難しい立場になっているのだろうと思います。
飯田)先週末(2日)、OPECプラスで増産を決めたというニュースが入りましたけれども、結局、それを反映せずに原油価格が上がったというのは、「このくらいであれば、たいしたことはない」という判断になったのですか?
須田)繰り返しになりますけれども、増産の枠があまりにもお付き合い程度という。需給を緩めるようなインパクトはまったくないというように受け止めたのだろうと思います。
ガソリン価格がアメリカの中間選挙の結果に大きく影響する
飯田)アメリカでは、ガソリン価格が選挙に影響すると言われます。今年(2022年)は中間選挙がありますが、いかがですか?
須田)バイデン大統領としては、中間選挙に向けて、原油価格というよりもガソリン価格をどう抑えていくのかというところが大きいと思います。それだけではありませんが、アメリカは車社会ですから、庶民感覚としては敏感に反応します。それをどう抑えていくのかというところに、中間選挙の結果がかかっているのではないかと思います。
飯田)アメリカはあれだけシェールオイルを持っているのだから、もう少し増産すればいいのにと思うのですけれども。
須田)「すぐさま増産」ということにはならないのです。オイルは1度出てきてしまうと、それを調整するわけにはいかないのです。掘り出したら、出し続けなければいけない。これは産油国、サウジアラビアなども同じ状況です。だから、将来的な需給を見通さないと、おいそれと増産体制には入れないということなのです。
中間選挙後に求心力を失いかねないバイデン大統領 ~内向きになる可能性の高いアメリカ
飯田)バイデン政権が中間選挙で負けるということになると、海外に対しての発信力もまた変わってきてしまいますよね。
須田)中間選挙が終わったら、バイデン政権はレームダック状態に陥っていくのではないかと言われています。普通は2期目の大統領に適用されるのですけれども、バイデン大統領の場合は、次の大統領選挙に出ない可能性が極めて高い。中間選挙後に一気に求心力を失いかねない状況です。
飯田)なるほど。
須田)次の2年は、アメリカの政治にすれば、微妙なタイミングになってくるのではないでしょうか。これからアメリカは内向きになっていく可能性が高いのではないかと思います。
共和党、民主党共に「対中強硬路線」で議会が牽引するアメリカ
飯田)それをインド太平洋にいる我々がどう見るかですよね。一方で、中国は党大会があり、もしかすると習近平体制がまた強化されるというなかで、アメリカがそうなっていく可能性もある。
須田)対中政策に関して言うと、私はさほど心配していません。アメリカのここ何年かの対中政策は、どちらかというと議会主導で進んできた経緯があります。アメリカの議会は共和党と民主党の両方とも、「対中強硬派」で結束しています。政権がリードするというよりも、議会が牽引(けんいん)していく形になるのだろうと思います。
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