防衛費の増額は補正予算でやるべきだった 岸田政権初の骨太方針

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数量政策学者の高橋洋一が6月8日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。政府が閣議決定した経済財政運営の指針「骨太の方針」について解説した。

防衛費の増額は補正予算でやるべきだった 岸田政権初の骨太方針

陸上自衛隊富士総合火力演習で、離陸するV22オスプレイ=2022年5月28日午前11時56分、静岡県御殿場市の東富士演習場 写真提供:産経新聞社

「骨太の方針」と「新しい資本主義」実行計画を閣議決定

政府は6月7日、経済財政運営の指針「骨太の方針」と、その中核となる成長戦略「新しい資本主義」の実行計画を閣議決定した。岸田政権で初となる骨太の方針で、夏の参議院選挙で与党が訴える公約の骨格となる。

飯田)総理は両案を協議する合同会議のなかで、「防衛力を5年以内に抜本強化する」と述べています。

防衛費の増額は補正予算でやるべきだった

高橋)防衛費に関しては、補正予算でやるべきだったと思います。喫緊に強化する必要がありますから、補正予算がいちばんいいのです。補正予算というのは、「予見せざるもの」として起こった話なのだけれども、本予算が編成されたのはウクライナ侵攻の前です。当然のことながら、織り込んでいないのですよ。

飯田)編成したのは去年(2021年)の年末までということです。

高橋)ウクライナ関係については、補正予算の補正事由に当たります。

飯田)確かにそうですね。

高橋)なぜやらないのでしょうか。理解に苦しむところです。

飯田)日米首脳会談のなかで防衛力の強化に言及したのは、ある意味の国際公約です。さすがに数字は織り込んだ方がいいと、いろいろなところから声が出ています。今年度としても、6~8兆円くらいはやらなければならないのではないかと言われていますが。

ウクライナ侵攻が始まった時点で補正予算として用意しておいて、日米首脳会談で「日本の意思で対応した」と言うべきだった

高橋)この話は日米首脳会談で初めて出たわけではなく、ロシアによるウクライナ侵攻が始まってからの議論です。補正予算で用意しておいて、日米首脳会談で「補正予算を用意しました」と言うべきですよね。

飯田)向こうから言われる前に。

高橋)「日本の意思として対応しました」というのが望ましい。

飯田)その方が目玉にもなるし。その辺りは受け身の形ですね。

高橋)「骨太の方針」に書いてあるのは、来年度の話でしょう。

飯田)そうですね。この基本指針は、来年(2023年)の本予算の編成に反映させるということです。

高橋)遅くないですか?

飯田)半年ズレた感じがあります。

高橋)補正予算で用意すべきものだと思うのですが。

補正予算で10兆円くらい防衛費を積むべきだった ~債務償還費を組み替える

飯田)防衛力の抜本的な強化について、骨太の方針では「5年以内に閣議決定する」という旨の報道が出ていますが、よく考えたら半年ズレている。

高橋)予見し難いものがあったときには、仕方がないでしょうと。

飯田)これだけ大きな予算を組むのだから当然、すべてを網羅できるわけではない。

高橋)できませんよ。政府案を決定しているとき(2021年)に、防衛費の増額を盛り込んでいなかったのは仕方がないと思います。仕方ないと思ったら、改むるに憚ることなかれと対応すべきなのです。補正予算で10兆円くらい防衛費を積み増しておけばよかったのではないかと思います。本予算のなかに債務償還費が16兆円くらいあるのです。

飯田)債務償還費。

高橋)債務償還費は、国債の償還がと言われるでしょう。でも、過去にも償還費を積まない予算というのはあるのです。実は債務償還費としてではなく、補正予算として防衛費の方に組み替えたところで、本予算の執行にはまったく影響がありません。

防衛費の増額は補正予算でやるべきだった 岸田政権初の骨太方針

2022年5月24日、バイデン大統領との写真撮影~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/24quad.html)

債務償還費を積まなくても借り換えには支障がない

飯田)債務償還費を積んでおいて、結局、利率が少し違うとか、借り換えてしまって、そこで使わなかったということですか?

高橋)まったく意味がありません。債務償還費というのは、「国債残高の1.6%は繰り入れろ」という法律があるので繰り入れているものです。これを償還に回すというのは建前だけれども、政府は一方で借換債というものを出せるから、「債務償還費を積まなくても借り換えには支障がない」ということなのです。

飯田)支障がない。

高橋)過去にも前例のある話だから、この16兆円をどうやって補正で防衛費に取り込むかということを、国会議員の人は考えて早くやるべきです。来年度予算を待つということは、来年の3月くらいに決まるのでしょう。遅すぎないですか?

飯田)そうですね。いまから半年以上も先の話になって。

高橋)国際情勢を考えたときに、そこまで悠長にやっている暇はないと思います。弾切れになってしまってはいけないでしょう。

飯田)いろいろな意味でね。人に対しても、装備品を揃えるにも、訓練にもお金がかかります。積み増しておかなければいけないわけですよね。

将来の便益 ~「割引率4%」では投資などうまくいかない

高橋)投資が入っているのはいいのだけれども、投資判断をする場合、「将来の便益」と「当面のコスト」の2つを考えて投資判断を行うのです。コストがかかりすぎるものは投資判断にならないわけです。便益が大きいものをやるのですが、GX(グリーントランスフォーメーション)は便益が大きいというのはわかります。わかるのだけれども、将来の便益を見るときに「割引率」が重要なのです。

飯田)割引率。

高橋)これがないと、きちんとした便益が計算できません。いまはデータベースの政策ばかりですから、こういうものは絶対にやらなければいけないのです。

飯田)やらなければならない。

高橋)そのときの割引率が、いま4%に設定されているのですが、おかしいと思います。4%の設定では、割引率がいまの金利とほとんど変わらないのです。4%の収益がないと投資できないということになるから、1人の投資などはうまくいきません。

飯田)4%の収益率など、そうそう上がるものではないですよね。

15年以上「割引率」を見直していない日本 ~「4%」のまま

高橋)公的だから特に上がらないでしょう。どこの国もそうなのですが、割引率は金利情勢と一緒なので、通常はそれに応じて毎年見直すのです。しかし、日本は15年以上見直していないのです。

飯田)そんなに見直していないのですか。

高橋)「4%」のままです。この数字は私が国交省にいたときに意見を聞かれて、国債利回りから計算したのです。それから見直されていません。15~16年前にやったのに、そのまま。

飯田)リーマンショック前の景気がよかったころ。

高橋)そういうものを直さないと、「投資の話もうまくいかない」ということを、警告しておきます。

飯田)骨太の最後に「令和5年度予算編成に向けた考え方」というものがあり、「予算をどうするか」について、自民党の部会では揉めたというところだったのです。2つ目の項目に、「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針2021に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する。ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」と。この「骨太方針2021に基づき」というところが「強い制約ではないか」と。

高橋)「黒字化目標2025」と書いてある話ですから。これを原案のときに見たら、「2025年度の目標を落とした」と言うのだけれども、入っているではないかと思いました。

飯田)文言としての「2025年」は落としたかも知れないけれど、ここにきちんと入っている。

高橋)中身として入っています。「ただし」と書いてはありますが。もう少し言うと、2020年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化の話は、2010年か2011年の閣議決定にありますから。それが取れない限り、ずっと同じなのです。民主党のときにやったので、それを直さない限りダメです。

飯田)これを取らない限り。

高橋)抜本的に直すなら、閣議決定を見直さなければいけません。

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