キャスターの辛坊治郎が6月9日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。ロシアがウクライナに停戦交渉の再開を求めたことについて持論を展開した。
ロシアのラブロフ外相は8日、トルコのアンカラで記者会見を行い、停戦交渉の再開に応じるようウクライナ側に求めた。
辛坊)ここにきて、状況が変わりつつあります。というのは、西側各国がウクライナに対する武器援助を続々と決めていますよね。もちろん、ウクライナもそれを要望しているから、決まっているわけです。ミサイルを連射できるアメリカの兵器であるとか、ドイツの対空戦車とか。対空戦車とは、要するに空を飛んでいる物を撃ち落とす強力な兵器です。ドイツは日本と長年似たような政策を続けていて、海外に武器を出すことには消極的だったんですよ。特に、NATO(北大西洋条約機構)の外には武器を出すことは。
軍事的な協力はNATOの内側でしかできないというスタンスだったドイツですら今回、武器を供与するという状況の中で、何となくウクライナに西側の各国がみんな協力して、ロシアに対する戦線を固めているんだなあ、というような印象なんです。けれども、これ、ウクライナにとっては自国が物事を判断する範囲をどんどん狭められている状況ではありますよね。
こうなってくると、西側の国々による兵器の援助で戦線が維持されているわけですよ。そういう現実が日々、明らかになってきています。ということは、「もういいから、どこかで手を打てよ」というのが西側です。バイデン政権も本音のところでは、ウクライナに最後まで突っ張ってほしいとは思っていないだろう。アメリカは、プーチン政権を倒すつもりはないし、ロシアの国内に届く兵器は供与しないっていうことも明言しているわけで、「どこかの時点で手打ち式をしたい」と、バイデン政権は本音で思っているよ。
このまま東西の対立が激しくなっていったら、全世界の経済も落ち込むばかりで、アメリカがこの状況から何か利益を得られるということでもないわけだから、「どこかで手を売てよ」と思っているはずです。でも、ウクライナの国民やゼレンスキー大統領にしてみたら、自分の国は守りたいと思っているわけです。2010年に奪われたクリミア半島だって取り戻したいし、2014年に占拠されて新ロシア派が支配するという形になったけども、実質的にはロシアの支配下に入ってしまった東部の占領地帯を奪い返したいと思っています。
西側の国々の本音としては、「ウクライナに妥協させて、クリミア半島も東部もロシアにくれてやって、このあたりで戦争を止めさせたい」と仮に思ったとしたら、できますからね。なぜなら、「ウクライナに、これ以上の武器供与はしません」と西側の国々が足並みをそろえた瞬間に、ウクライナはそれ以上、戦えないのがはっきりしてきたわけですから。つまり、この停戦の行方の主人公として、当事国のウクライナとロシアがよく挙げられますが、現実に停戦を決めるのはウクライナじゃなくてアメリカなんです。
小さい子には気の毒だけれども、それが世界の現実なんですよ。我々は、そのことをきちんと見ておかないといけません。だからこそ、「自分のことは自分でね」っていうことになりますね。
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)