「マクドナルド撤退」が物語るロシア社会の「変化」
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防衛省防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄氏が6月14日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ウクライナ情勢の今後について解説した。
ロシアの元首相がウクライナ侵略について「2年続く恐れ」との見解を示す
ロシアのカシヤノフ元首相はAFP通信のビデオインタビューに応じ、ロシアのウクライナ侵略について、最高で2年続く恐れがあるとの見解を示した。カシヤノフ氏は2000年~2004年までプーチン政権の初代首相を務め、首相解任後に反政権派に転じた。
セベロドネツクをめぐる包囲戦
飯田)ウクライナ東部セベロドネツクをめぐって包囲戦が続いていますが、この情勢をどうご覧になりますか?
高橋杉雄)セベロドネツクでの攻防戦は、セベロドネツクという街そのものと、セベロドネツクにつながるウクライナの補給線をめぐる攻防の2つが展開されています。ロシアが補給線を切ることができれば、おのずとセベロドネツクの街も陥落します。そのため、ポパスナという街の周辺での戦いがいちばん大きな局面を迎えているところです。
飯田)ポパスナが補給の肝になっているということですか?
高橋杉雄)そうですね。そこから食料・武器・弾薬がセベロドネツクに届けられています。
飯田)地図で見ると、セベロドネツクから南に約30キロというところです。ここを守るために、いまウクライナ側はどういうことをしているのですか?
高橋杉雄)ロシアのロケット砲や榴弾砲などの火力に押されているのですが、それに対して撃ち返すことも含め、粘り強く対応しています。
優位な火力を活かした戦いを展開するロシア
飯田)ここ数日、火力についての報道も出てきましたが、一説によると、10対1ぐらいで数的にはロシアが圧倒しているという話もあります。高橋さんの分析でもこのような感じですか?
高橋杉雄)そうですね。いろいろな情報を見る限り、地面が穴だらけになっている映像がありますが、ロシアがそれだけの弾を撃ち込んでいるということです。ロシア軍はもともと火力が重視されている陸軍ですが、その本領を発揮する戦い方をしているようです。
飯田)2~3月辺りの戦い方と比べて、ロシアは対応を変えてきていますか?
高橋杉雄)そうですね。ロシア本土に近いので、補給状態がよいのだと思います。キーウ近郊の戦いでは、ここまでの火力は使っていなかったと思います。今回は特に火力という優位を活かした戦い方をしていると観察できます。
米国からウクライナに供与された高機動ロケット砲システム「ハイマース」の存在
飯田)ウクライナのゼレンスキー大統領は、3~4月の時点から「火力が必要だ」と話していましたが、実際にはまだ十分に行き渡っていないのでしょうか?
高橋杉雄)局面によっては行き渡っているところもあるでしょうし、ロシア側の数がもともと多いので、まだ数が十分でないところもあると思います。
飯田)高機動ロケット砲システム「ハイマース」と呼ばれるものがありますが、これはポイントになりそうですか?
高橋杉雄)使い方次第ですね。多連装ロケットシステム自体はウクライナも持っているのですが、あまり命中精度がいいものではなく、面を制圧するような撃ち方を行う兵器なのです。ロシア側も同じです。
飯田)命中精度がよくない。
ピンポイントで弾薬の集積地などを攻撃できる
高橋杉雄)それがハイマースでは、ピンポイントで攻撃できます。逆に言うとピンポイントしか攻撃できないので、ピンポイントで効果がある目標を探し出して攻撃するということです。これまでウクライナが使ってきたロケットランチャーとは違う使い方をしなければいけません。違う使い方をうまく編み出して、現場で応用することが必要になります。
飯田)ピンポイントということになると、例えば指揮官を狙うなどの対応になりますか?
高橋杉雄)指揮官や弾薬の集積地ですね。相手の砲そのものではなく、弾薬を溜めている場所を狙うことが必要になるので、ドローンとの密接な連携が重要になります。
飯田)ドローンで敵の弾薬の集積地まで精密に誘導するということですか?
高橋杉雄)誘導自体はGPSなので、ドローンで相手の弾薬がある場所を探し出し、そこを撃つという方法です。
飯田)情報プラス機動性も問われるということですか?
高橋杉雄)そうですね。
「マクドナルドがある国同士は戦争がない」 ~マクドナルドが撤退するほどロシアが変わってしまった
数量政策学者・高橋洋一)マクドナルドがロシアからなくなってしまうということですが、どのような様子ですか?
高橋杉雄)国際政治における面白い話として、「マクドナルドがある国同士は戦争がない」と言われてきたのです。もちろん、マクドナルドが世界を平和にしているわけではなくて、マクドナルドが出店するような国は安定した民主主義体制だから、そのような国同士では戦争をしていないということです。それを最初に破ったのが2008年のロシアによるジョージア侵攻でした。ロシアにもジョージアにもマクドナルドはあったのです。今回も言説は破られたのですが、破られただけではなく、ついにマクドナルドがロシアから撤退しました。
飯田)そうですね。
高橋杉雄)これまではマクドナルドによる平和を裏付けるようなロシア社会だったのが、ついにマクドナルドが撤退するほどロシアが変わってしまったということを、今回のマクドナルド撤退は物語っています。
飯田)なるほど。高橋洋一さんも「民主主義国同士はリスクが低い」と話していましたね。
高橋洋一)確率の話です。300年くらいのデータ分析で戦争確率を出したのですが、マクドナルドは300年のデータには入れられなかったのです。興味はあったのですけれどね。
高橋杉雄)そうですか。
高橋洋一)ロシアの民主主義指数は3程度なので、戦争確率の高い国なのです。
飯田)一応、選挙など表向きの部分はあったけれども、名実ともにマクドナルドの撤退が象徴的に表してしまったということですか?
高橋杉雄)マクドナルドによる平和は、民主主義による平和を揶揄するのに使われる小話のようなものですが、それでもロシア社会の変化が出てきたということが言えると思います。
少なくとも、この戦争は年単位で続く
飯田)この先の展望はいかがですか? ロシアの元首相は「2年続く」などと言っていますが。
高橋杉雄)まだ100日少ししか経っていないのです。100日で終わった戦争は多くありません。
飯田)なるほど。
高橋杉雄)既に両軍の兵力が20万を超えています。もう30万くらいになっているでしょうか。それだけの大戦争が簡単に終わるわけはないのです。これまでの100日間を見ると、ロシアやウクライナが大きく勝利しそうになった局面が何度かあるのですが、その都度、相手側がうまく反応して大勝利を収めることができなかったのです。
飯田)その都度上手く反応して。
高橋杉雄)戦争には相手がいるので、一方が勝ちそうになると、それを防ごうとするのです。この形が続くとすると、ある程度の膠着状態になっていくと思います。そうなると年単位で続くことは十分にあり得る話だと思います。
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