週刊誌報道だけを根拠に「衆院議長不信任案」提出は許されるのか
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ジャーナリストの須田慎一郎が6月13日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。立憲民主党が提出した細田衆院議長に対する不信任決議案について解説した。
通常国会15日会期末、政府提出法案すべて成立へ
通常国会は6月15日に会期末を迎える。政府が今国会に提出した61法案はすべて成立する見通しで、国会閉会後は夏の参院選へと向かう。
飯田)参院選の正式決定はまだ先ですが、6月22日に公示され、7月10日に投開票の見通しだということです。
須田)もともと7月に参議院選挙があるということが大前提だったので、提出する法案も絞りに絞り込んで、61法案という少ない数でした。安全運転ということで、すべて成立するのは当然だったわけです。
岸田内閣不信任案に日本維新の会、国民民主党が反対、れいわ新選組は棄権 ~乱れた野党の足並み
須田)それに対して「野党がもっと存在感を示したらどうなのか」ということが問題になるのですが、最後の最後に出したのが岸田内閣と細田博之衆院議長の不信任決議案でした。岸田内閣不信任案に関して、野党のなかから脱落組が出てきたということが、今国会を最も大きく象徴したものではないでしょうか。
飯田)脱落組。日本維新の会と国民民主党は不信任案に反対にまわり、れいわ新選組が棄権でした。
須田)特に国民民主党の場合は、通常国会のメインである予算案に賛成している以上、不信任案に賛成すると矛盾して理屈が通らないので、そこはそうなのだろうと思います。ただ野党の不信任案提出が、参院選を強く意識した対決姿勢、特に立憲民主党にとって対決姿勢を露わにするためだけのものだったのだと思いますが、それ以外に実は大きな効果があったのです。
飯田)効果があった?
須田)どうしてかと言うと、採決の日が憲法審査会の当日だったのです。
飯田)毎週木曜日に定例で行われていました。採決の日は6月9日の木曜日でしたね。
憲法審査会の最後の日と重なり、憲法改正のスケジュールに影響
須田)最後の憲法審査会の日だったのです。いま憲法審査会では国民投票法をめぐっての議論をしている真っ最中で、一定程度の方向性を出して今国会で決着させておかないと、憲法改正のスケジュールに大きな影響を与えるのです。
飯田)今国会で決めないと。
須田)しかし、最後の審査会がなくなったということは、改正スケジュールに向けて大きなダメージを与えるという点で、結果論ではありますが、立憲民主党は一矢報いたのだと思います。
飯田)もともと憲法審査会は毎週木曜日に行われるのが定例になっていた。不信任案が提出されると、最優先でそれを採決することになるので、他の予定が全部止まる。6月15日が会期末なので、今回の9日が最終日と。そう考えるとよくできているのですね。
6月9日の本会議に細田衆院議長の不信任案をぶつけた理由 ~週刊文春の発売日
須田)そういう意味では、木曜日というのも微妙な日で、首都圏においての週刊文春の発売日なのです。要は「細田衆院議長の不信任案」です。なぜ木曜日でなくてはいけなかったのかと言うと、週刊文春の発売日なので、最新の情報がその号に掲載される。それを踏まえた上での行動だったのです。
飯田)週刊文春の最新号の発売日であるということを。
須田)週刊誌報道、週刊文春が書いているものが嘘だとは言いませんが、本当かどうかはわからず、現時点で真偽は不明です。今回の不信任案を出すにあたり、プラスアルファで国会、野党が国政調査権などを使って調べ直して新たな事実が出てきた、あるいは事実に足るという確信を得て不信任案を出すのであれば、納得のいくところだと思います。
週刊誌報道だけを根拠に衆院議長不信任案を提出することが正義にかなうことなのか
飯田)国政調査権を使って確信を得た情報であれば。
須田)衆議院議長は三権の長であり、立法府の長なので、総理大臣や最高裁判所長官とともに並び立つ存在です。それに対して、ただ単純に週刊誌報道だけを根拠に不信任案を出すということが、果たしてよかったのか悪かったのか。正義にかなうことなのかと考えると、とてもそうは思えません。あまりにも軽くなってしまった。もっとよく考えて行動するべきではないでしょうか。
週刊誌報道だけを根拠として衆院議長不信任案を提出することは「国会の劣化」である
飯田)国会には国政調査権もあるし、国会を閉じたあとでも、手続きを取れば、閉会中の審査もできます。そう考えると今回、報道が出てからここまで、特に議長不信任に関しては展開が速かったですね。
須田)そのようなことで言うと、立憲民主党としては軽い気持ちで出したのでしょう。選挙を控えているから内閣不信任案だけではなく、衆院議長もという考えで出したのかも知れませんが、それによって立法府の権威が大いに傷つけられた。不信任案を出すことは憲法で認められた権利であり、国会の重要な役割なので、それを行使したということを否定するつもりはありません。ただ、その背景、根拠としてどのようなものがあったのかと考えると、「週刊誌報道だけだ」ということです。これは「国会の劣化」としか言いようがありません。
飯田)本来であれば、細田さんの発言のなかで、例えば定数配分「10増10減」に対しての発言。あるいは「国会議員は月100万円しかもらっていない」というような発言など、掘り下げられる話があったにも関わらず、そうではなく、週刊誌報道や女性記者との関係性などを出してしまったことがいいのかどうかということですね。
須田)そのような問題がなかったとは言いませんが、それを中心とした理由で出すということはどうなのでしょうか。
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