外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が6月17日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。フランス、ドイツ、イタリアの首脳によるキーウ訪問について解説した。
フランス、ドイツ、イタリアの首脳がキーウを訪問、ゼレンスキー大統領と会談
フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのドラギ首相が6月16日、ウクライナのキーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した。会談にはルーマニアのヨハニス大統領も出席した。ゼレンスキー氏は会談後の共同記者会見で「歴史的な意義がある」と歓迎し、「国を再建するために私たちがしなければならない仕事について協議した」と成果を述べた。これを受けフランスのマクロン氏は「勝利するまで欧州連合(EU)はあなたたちの味方だ」と述べ、「我々4人はウクライナを『加盟候補国』として速やかに認定することを支持する」と強調した。
飯田)EUは来週に首脳会議を控えていて、これについて議論するということです。
ウクライナ問題をめぐり、4つのグループがある ~「ロシア」「アメリカ、イギリス」「ドイツ、フランス、イタリア」「ポーランドなどの東欧の小さな国」
宮家)ウクライナ問題については、もっと大きな構図を見なければならないと思います。私の頭のなかには4つのグループがあります。まずロシアとその仲間が1つ。残りの3つは、イギリスやアメリカなどの海洋国家「シーパワー」のグループ。そして大陸ヨーロッパがあります。大陸ヨーロッパは2つに分かれていて、まさにドイツ、フランス、イタリア。この3つは西欧ですが、ヨーロッパ大陸のなかでは伝統的に強い国々ですね。
飯田)ドイツ、フランス、イタリア。
宮家)そして最後のグループは、そういう国々とロシアに挟まれた東欧の小さな国々です。バルト三国からポーランドも含め、チェコ、スロバキア等々ですね。ヨーロッパと言っても、大きな国と小さな国でまったく違いますから。
それぞれのグループにはそれぞれの思惑がある
宮家)小さな国は、いままで散々、ロシアとドイツに挟まれて煮え湯を飲まされてきたわけです。そういう不信感がある。逆にヨーロッパ大陸の大きな国、フランスなどがそうですけれども、最終的に「ロシアは怖いから、どこかで手を打たなければいけない」と思っているわけです。フランスはそういう動きをこれまでもしているでしょう。
飯田)なるほど。
宮家)それに対してイギリス、アメリカなどの海洋国家、シーパワーの方は、とにかく大陸を安定させたい。今回はロシアがウクライナへ侵攻したので、ロシアに対しては厳しいですよね。それで東欧の小さな国を支援すると。こういうNATO諸国内でも戦略的な利益の違いがあって、その調整がうまくいっていないわけです。
ウクライナ問題をどのように収束させるか ~ロシアとの関係を改善しなければならない仏独伊
宮家)今回、フランスとイタリアとドイツがキーウに行きましたが、大陸の大きな国にとってはウクライナとの関係を改善しなければいけない。どうしてもやらなければならない動きだったのだと思います。うまくいったかどうかはわかりません。しかし、この問題の本質は、ただ単に偉い人が3人行ったという話ではなく、NATO全体で、ウクライナ情勢をどのように収束させるのかという戦略的な問題の一部なのです。
飯田)出口を。
宮家)出口を考えなければいけないのだけれど、フランスのように、ロシアとある程度話をつけてでも安定させなければいけないという人たちと、ポーランドのように、ロシアは何をするかわからないから、徹底的に叩くべきだという国もある。
飯田)次に矢面に立たされるのは自分たちではないかと。
宮家)次は自分たちだと思っている。そんな状況のなか、イギリスやアメリカはまた別の思惑で動いているのです。
飯田)海洋国家はまた別に。
宮家)ウクライナ情勢をしっかり安定させないと困るので、今回の会談がウクライナとロシアの和解の方向、またはある程度の方向性をつくる上で意味があったのかどうかは重要です。まだ、これだけの発表ではわかりません。ウクライナに対して「あなたたちの味方です」、「見捨てません」などと言っていますが、その次はどうするのか。ここがポイントになるのだろうと思います。
EUの加盟候補国となるウクライナ ~ロシアにとっては簡単な話ではない
飯田)NATOではなく、EUの加盟候補国となっていますね。
宮家)EUは基本的に軍事同盟ではないですからね。でもEUに入れば限りなくNATOに近づくし、そもそも自分たちの衛星国だと思っていたロシアがウクライナに侵攻したのです。そのウクライナがヨーロッパ、EUに入ってしまうわけですから。トルコだって入れないのにね。これは大きな意味があります。
飯田)大きな意味が。
宮家)NATOの東方拡大とはまた違う意味で、EUの東方拡大です。これをロシアがどう受け止めるかは別の話です。しかし、NATOに入れないのは仕方ないけれど、EUには入るのならいいだろうと、当然、ウクライナは考えますよね。
飯田)EUと国境を接しているとなると、フィンランドとロシアがまさにそうです。
宮家)フィンランドですらNATOに入ろうとしているわけですから。ロシアにとっては簡単な話ではないと思います。
はNATOに入ろうとしているわけですから。ロシアにとっては簡単な話ではないと思います。
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