アメリカとの「核の共同運用」についての議論をまずしなければならない

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数量政策学者の高橋洋一が6月22日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。核兵器禁止条約の締約国会議について解説した。

アメリカとの「核の共同運用」についての議論をまずしなければならない

岸田文雄首相と日米共同記者会見を行うバイデン米大統領=2022年5月23日午後2時42分、東京・元赤坂の迎賓館 写真提供:産経新聞社

核兵器禁止条約の初会合が開幕

2021年に発効した核兵器禁止条約の今後の運用を話し合う初めての締約国会議が、日本時間の6月21日午後5時過ぎからオーストリアの首都ウィーンで始まった。アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアの核保有5ヵ国は条約に反対し参加しておらず、日本も今回の会議には出席していない。

飯田)会議は最終日の23日に、行動計画や核兵器の非人道性を訴える政治声明をまとめる見通しだそうです。日本からは広島市の松井市長、長崎市の田上市長がそれぞれ演説したということです。

高橋)日本の論調だと、「日本は被爆国なのだから核兵器禁止は当たり前だ」と言う人がいます。基本的には、核兵器保有国が禁止に反対するのは当たり前ですが、それ以外のところでも、NATOなどの核の傘があるところも参加できません。参加してしまうと、NATOから出ろということになってしまいます。

飯田)整合性が取れなくなってしまう。

核共有のドイツ、オランダなどがオブザーバーとして参加 ~共同運用するということは自分の意見が通る

高橋)守ってもらっている国は情けないのですが、参加できない。できないのだけれど、オブザーバーとして行くことはどうなのでしょうか。オブザーバーで行くようなときには、それなりの覚悟も必要です。

飯田)覚悟。

高橋)日本の場合は日米同盟がありますが、核攻撃からアメリカが本当に守ってくれるかどうかわからないという状態です。オブザーバーとして参加している国は、ドイツ、オランダ、ベルギー辺りですが、これらの国は実は核共有の国です。核共有の国では、基本的な考え方として、核を共同運用するということです。

飯田)核共有の国は。

高橋)共同運用するということは、一方的に守ってもらうのではなく、ある程度、自分の意見が通るのです。そのように自分の意思が通るところだと、オブザーバーとして参加できる余地があるのです。

アメリカと核の共同運用をしていない日本は独自の意見を言いにくい

高橋)日本の場合は、「アメリカに一方的に守ってもらう」という形なので、勝手に参加してしまい、アメリカに「あとは好きにやれ」と言われたら困りますよね。新しい時代のアメリカとの核共有の議論でもあれば、アメリカと対等に議論できるのですが。

飯田)核共有の議論があれば。

高橋)ある程度、対等に自律的に議論するためにも、日米同盟について、核共有のレベルで意見を言える方がいいのです。日本の場合は、まったく意見を言えていません。アメリカで「拡大抑止協議」が行われているということですが、あれは事務レベルの話です。もう少し上のレベルで議論をするためには、「核共有」をテコにしながら、同盟強化についての議論が必要です。

飯田)政治レベルで意思確認や情報共有をしないといけない。

高橋)有事についての話になるので、いくら事務レベルで協議しても、実際にGOサインを出すのは責任のある人でなければできません。その意味では、日米同盟を強化するためにも、同盟のなかに核共有の話を入れた方がいいのです。そうするとトップレベルで、必ず共通の意思形成ができます。

飯田)核共有の話を。

高橋)そうなれば、一方的な話ではないので、自分の意見をもう少し言えるようになり、核兵器禁止条約にオブザーバーで参加することもあり得るのです。アメリカに「参加したからもう守ってあげないよ」と言われても、「核共有しているし、共同運用でしょう」と意見が言えるのです。いまの日本ではまったく言えません。現在の日米関係だと、一方的にアメリカに守ってもらっているので、日本が独自の意思を言いにくいのです。

まずは核共有についての議論を国内でするべき

飯田)核共有について、核をどのように扱うのかという、その議論自体が日本ではあまりされていませんよね。

高橋)そもそも議論をしていないのです。「非核三原則」ならぬ「非核五原則」で、「つくらず、持たず、持ち込ませず」以外に、「考えてはいけない、言ってはいけない」ということで大変ですよね。核共有について、かつてのヨーロッパのような古いタイプの議論をしていると言う人もいるのですが、そのような議論すら、いまはありません。「核兵器を共同運用する」ということはコアなコンセプトなのですが、日本国内で意見交換をしていないので、「古いかどうか」という議論すらできません。もしアメリカに言っても、「日本国内で全然議論をしていないのに、誰が代表として来ることができるのか」と言われたらアウトです。

飯田)まずは国内で議論しなければいけませんね。

高橋)どのような答えになるかわかりませんが、議論しなければ始まりませんよね。そのための議論も封じられています。

「被爆国だからこそ核を持つのだ」というロジックで言えることはできる

飯田)核共有をするとなると、いままで被爆国だと言っていたけれど、今度は撃つ覚悟を我々が持つ必要があるかも知れません。

高橋)「被爆国だから嫌だ」というロジックで言えることはできます。「やられないために持つのだ」と。もうあのようなことは嫌だ、あなたたちは1回もやられたことがないでしょうと。我々はわかるのです、だから、撃たせないためにも持つのですと。

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