東芝の失敗が示すものは「会社は株主ではなく人である」ということ
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ジャーナリストの須田慎一郎が7月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。6月28日に行われた東芝株主総会について解説した。
東芝株主総会
東芝の株主総会が6月28日に行われた。「物言う株主」の投資ファンドから幹部2人を社外取締役に受け入れるという人事案が賛成多数で可決された。しかし総会の直後、2人の選任に反対していた社外取締役が辞任し、経営の混乱が続いている。
飯田)物言う株主の方々との間で、ずっと揉めている印象があります。
企業としての成長戦略についてまったく見通しが立っていない ~東芝の大きな問題
須田)経営が不安定化していることに加えて、株主やマーケットのおもちゃになっているような気がしてなりません。東芝の本当の意味での事業は一体何なのかと言うと、本業がまったくないのです。
飯田)本業がない。
須田)将来、どういうところで企業の成長戦略を描いていくのかどうか、まったく見通しが立っていないというのが、東芝のいちばん大きな問題です。その基盤となる株主や資本が固まってこないと、その辺りについても、成長戦略が描けないという状況になるのではないかと思います。
技術者や専門家はほとんど社外流出してしまっている ~経営資源である人がいない
飯田)一方で原発についての技術やレーダーの技術、量子技術など、さまざまな成長の素は持っているのですよね?
須田)ただ、半導体事業についても別会社に移していますし、いま言われたのは東芝メモリ(キオクシア)ですけれども、そこにいる技術者や専門家はほとんど社外流出してしまっているのです。このように混乱した状況が続いていると、器はあるのだけれども、経営資源である「人がいない」という状況になっているというのが、いまの東芝の実態ではないかと思います。混乱が長引けば長引くほど、人はいなくなるのではないでしょうか。
「東芝はない」ということを前提に日本の経済安全保障を考えるべき
飯田)これは経済安全保障上、どうなのですか?
須田)「東芝が必要なのか」というところも考えていかないといけません。2つポイントがありますが、1つはこういう状況下において、東芝を経済安全保障上の重要な企業に位置付けられるかというと、答えは「ノー」です。
飯田)重要な企業ではない。
須田)2点目に、実態としてそこにあるのか。東芝の実業があるのかどうかということです。私ははっきり言って、もう東芝は役割を終えた会社だと思います。
飯田)なるほど。
須田)「もう東芝はない」ということを前提に、日本の経済安全保障を考えていくべきだと思います。
会社は株主ではなく人である
飯田)原発に関しても、小型モジュール炉など新しい技術も出てきていますが、そういうものは別の日本の会社がプレーヤーとして頑張るということですか?
須田)そうですね。
飯田)かつて重電メーカーというと、日立や東芝など何社もあったわけですけれども、皮肉なところがありますね。
須田)会社を分割する、あるいは資本に外資を入れ込むなど、テクニカルなところで経営の立て直しを図ったからこういうことになるのです。
飯田)何とか国内で頑張るという感じでもなく、メモリなども切り売りしてしまったし。
須田)反発される方がいると思いますけれども、会社は誰のものなのか。「株主である」などとよく言うけれども、やはり「人」なのです。それを東芝の失敗が示しているのではないかと思います。
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