「物価高を賃金上昇につなげるにはどうすればいいのか」という議論をするべき 岸田政権はどう対応しようとしているのか

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ジャーナリストの佐々木俊尚が7月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。7月19日に行われた岸田総理とIMF専務理事との会談について解説した。

「物価高を賃金上昇につなげるにはどうすればいいのか」という議論をするべき 岸田政権はどう対応しようとしているのか

2022年7月14日、記者の質問に答える岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202207/14kaiken.html)

岸田総理、物価高騰についてIMF専務理事と協議

岸田総理大臣は7月19日、国際通貨基金(IMF)のゲオルギエバ専務理事と会談した。ロシアのウクライナ侵略による世界的な物価高騰について、主要7ヵ国(G7)をはじめとする国際社会とともに対応し、国内でも機動的な経済財政運営を行っていく考えを示した。

飯田)会談は約20分間だったということです。冒頭では銃撃、暗殺された安倍元総理への弔意を示したということですから、表敬という感じですかね。

日本と欧米では同じインフレでも事情が違う

佐々木)気を付けなければいけないのは、確かにウクライナ侵攻でエネルギー危機になり、食料も調達が難しくなって、インフレになっているという背景・理由は同じです。しかし、インフレになっている、物価が上がっていることについて、日本と欧米諸国ではまったく事情が違うということは考えておかなければいけない。

飯田)日本と欧米では。

佐々木)アメリカやヨーロッパに関して言うと、コロナ禍の後半戦くらいから一気に加速して景気がよくなり、消費市場も活性化していたのです。そこにコストプッシュインフレが重なってきて、物価が上がっている。だからある程度、物価高を抑制しなければいけないということになるわけです。

飯田)欧米の場合は。

佐々木)ところが日本の場合は、そこまで景気がよくなっていなかった。しかも、バブル崩壊からの長い30年くらいの歴史を考えると、平成の30年、デフレが続いて景気がよくならない。物価もまったく上がらない。

飯田)日本の場合は。

佐々木)だからアベノミクスの金融緩和で、2%の物価上昇目標を掲げてやってきたわけです。でも2%にさえ達していない状況で、今回ようやく、よいことなのか悪いことなのかは別にしても、物価が上がっている。

「この物価高を賃金上昇に持っていくにはどうすればいいのか」という議論をするべき ~物価が上がったことを大騒ぎしすぎ

佐々木)コストプッシュのインフレなので、単純に喜ぶことはできない。ただし、物価が上がらない限り賃金も上がらないし、賃金が上がらなければ景気はよくならない。物価高というのは、景気が回復し、みんなの給料が上がるための「まず第1歩だ」という認識が本来あったはずなのです。

飯田)給料が上がるための第1歩。

佐々木)しかし、なぜか現状を見ていると、物価が上がったことだけを取り上げて「けしからん」と騒ぎ、政権批判の材料にしてしまっている部分もある。でも、本当にそれでいいのか。いままで我々は物価が上がらず、賃金が上昇しないことに苦しんできたわけです。だから物価が上がることを攻撃するのではなく、この物価高は所詮コストプッシュインフレにしか過ぎないので、何とか賃金上昇に橋渡ししていくというか、「賃金上昇に持っていくためにはどうすればいいのか」ということを議論すべきだと思うのです。その議論がされていないのは、いったいどういうことなのか。物価が上がったことに大騒ぎしすぎではないかと思うのです。

飯田)総合の数字だとプラス2%台までいっているということですけれど、エネルギーや生鮮食品など変動の激しいものを除いてしまうと、1%にもいかない。

佐々木)相変わらずということですよね。

人件費削減で価格を上げないということでは賃金が下がるだけ

飯田)価格上昇の部分は手当てしながら、全体を回すということを考えなければいけませんね。

佐々木)物価が上がることをメディアが批判しすぎると、「物価を上げてはいけないのだ」というマインドになり、コストカットして「人件費を削減し、物価上昇を抑えましょう」ということになる。

飯田)価格を上げないために。

佐々木)コストが上がっているから、エネルギーや電力などの上がっている部分を、人件費削減で何とかうまくならし、値段が上がらないようにしましょうと。そういうことをする企業を「企業努力で値下げに対抗」などとテレビのワイドショーが報じて、結果的にみんな賃金が下がるだけという、同じ道をまた繰り返してしまうことになると思うのです。

飯田)人件費削減のために賃金が下がり。

佐々木)それではダメだと思います。それに対して岸田政権はどう対応するのか、相変わらずよくわからない。「機動的な経済財政運営を行っていく」と言いますが、「機動的」とはいったい何なのか。しばらく前も同じようなことを言っていました。骨太の方針でも「機動的な財政運営」と言っているのだけれど、何を言っているのかわからない。

財政出動が中途半端に終わってしまったアベノミクス

佐々木)第2次安倍政権のアベノミクスに関して言うと、金融緩和、財政出動、構造改革という3本の矢があって、金融緩和はこれまでもやってきました。これに対しての評価は極めて高いわけです。経済学者のポール・クルーグマン氏も高く評価していました。

飯田)アベノミクス。

佐々木)ただ、それだけやったにも関わらず、2度の消費増税でかなり打ち消されてしまった。本来は消費増税に対抗できるくらい、積極的に財政出動すべきだったのだけれど、その財政出動が中途半端に終わってしまったのがアベノミクスの残念なところだったと、多くの人が指摘しています。

岸田政権の「機動的な経済財政運営」とは、財務省に言われたらすぐに緊縮する「機動的」なのか

佐々木)第2次安倍政権を後継した岸田政権としては、金融緩和にプラスして財政出動と構造改革をどうするのか、もっと対策を具体的に打ち出して欲しい。財政出動について「機動的な経済財政運営」とは何なのか。財務省に言われたら、すぐ緊縮する「機動的」なのか……。その辺りが未だに微妙だなと思うのです。

飯田)「引き締めは機動的」ということなのでしょうか。

佐々木)「引くときは、すぐに引くぞ」というような感じです。

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