ジャーナリストの有本香が7月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。安倍元総理大臣が街頭演説中に銃撃され暗殺された事件について解説した。
安倍元総理大臣銃撃事件の容疑者、犯行を示唆する手紙を投函か
安倍元総理大臣が街頭演説中に銃撃され暗殺された事件で、無職の山上徹也容疑者が島根県の男性に送ったとみられる襲撃を示唆する手紙について、事件前日に岡山市内で安倍元総理の演説会場付近から投函されたとみられることがわかった。手紙には「安倍の死がもたらす政治的意味、結果、最早それを考える余裕は私にはありません」などと記されていた。
飯田)岡山で演説があった際、そこに行こうとしていたということが既に報じられています。ただ、いろいろな理由があって会場に入らなかった、あるいは入れなかった。
有本)会場で氏名・住所を求められたために断念したようです。いわゆる箱での演説会はハードルが高いと判断したのでしょう。
霊感商法のようなことを行う宗教団体と政治は距離を置くべき ~名前の出ている議員との関係を綺麗にするべき
飯田)犯人の人物像がいろいろな形で報道されています。
有本)こういう捜査の経験がある方に聞くと、いまマスコミに出ている情報は大体、捜査関係者にとって都合のいい情報から出ているということです。それと、容疑者が逮捕されてすぐに自分の動機に関わることを積極的に喋っているので、「むしろ怪しい」と考える人もいます。
飯田)なるほど。
有本)容疑者の背景に家庭的な問題があり、旧統一教会との関係が取り沙汰されています。テレビの情報番組などでは、ほとんどが「統一教会とは何だ?」という方向に行ってしまっていますよね。
飯田)そうですね。
有本)確かに統一教会には、いろいろな問題が挙げられ、裁判にもなっている。新興宗教にはありがちですが、特にここでは「信者からの強引な金集め」が行われ、政治とのつながりが問題視されている。これは問題ではあるのですが、これを機に各会派、特に自民党や他の会派の議員の名前も出てきていますけれど、それを綺麗にすべきだと思います。やはり霊感商法のようなものと政治は距離を置くべきです。普通の宗教団体から推薦を貰うのとは話が違いますから、スッキリさせるべきでしょう。
病院からの弾丸の入り方の発表も2通りの情報があり、わかりにくい ~これだけ影響力のあった政治家の功績をきちんと知らせるべき
有本)しかし、それと「この事件の顛末が何だったのか?」ということは別の形で掘り下げなければいけません。あの現場で何が起きていたのかということも、未だに情報が錯綜していますよね。
飯田)わからないところもあります。
有本)病院から発表された、致命傷になったと言われる弾丸の入り方にも、2通りの情報があって、わかりにくい。この辺りは私もいま取材していますが、納得がいくような、いかないようなところがあります。だから今回の殺害事件、テロや暗殺と言ってもいいものですが、報道としては、この顛末をさらにいろいろな方面から掘り下げていくべきではないかと思います。
飯田)報道としては。
有本)政治家には誰しも功罪がありますが、安倍元総理に関しては、外国からの大きな反応があり、これだけの弔意が示されました。また、一般の方々が奈良の西大寺の現場だけで10万人ほど献花に訪れているわけです。
飯田)そうですね。
有本)これはかなり大変なことだと思います。国内外からこれだけ愛され、支持された政治家。一方で強烈にこの人を嫌う向きもあります。これだけ大きな影響力のある政治家の死は、もっときちんと総括すべきです。いまはまだ四十九日の前で、10日ほどしか経っていませんが、安倍さんの功績ももっときちんと知らせる必要があると思います。
当日、自分たちの不祥事の対応をしていた奈良県警 ~警備の土台を外していたのではないか
飯田)ことの顛末の部分に関しても、国家公安委員長が週末に現場を視察しました。
有本)少し遅いと思いますけれどね。
飯田)「なぜ背後を誰も見ていなかったのか」ということや、警備について一部報じられているのですが、あまり詳しくは報じられていません。
有本)前日に急遽、安倍さんが奈良に入ることが決まって、そこからバタバタと警備計画が立てられた。これは余分なことかも知れませんが、奈良県警はその日、それどころではなかったと。自分たちの不祥事への対応をしていました。
飯田)会見が予定されていました。
有本)「翌日に会見が予定されていたから、それどころではなかった」と言いますが、いままで奈良に要人が入ったことはいくらでもあったわけで、政治家だけでなく皇室関係者や皇族の方々も、奈良には相当いらっしゃっているわけですよね。
飯田)経験はある。
有本)だから警備の土台はあるわけで、それを今回外したのではないかと言われています。そこはもう少しはっきりさせるべきです。
通常は警察から民間警備を出すよう指示がある ~その警備の人数が少なかったのではないか
有本)今回のような遊説のときは、警察から「民間警備を数十人用意してください」という指示が出るそうです。自民党のなかでも取り沙汰されているのですが、他の地域へ安倍さんが遊説に行ったときは、所轄だけではなく、それぞれの県警から「これぐらいの人数を出してください」と。そうすると支持者のなかからかき集めるのです。プロでなくても人の目があることは大事ですからね。
飯田)支持者のなかから。
有本)それが今回は少なかったのではないかと言われています。それも含めて、警察は一体どういう指示を陣営に対して出していたのか。この辺りがメディアで問題にされていません。もちろん私たちも声を上げていくのですが、事件そのものをもう少し掘り下げないといけないですよね。
日本の総理大臣の警護
飯田)安倍さんとは、有本さんもさまざまな場面でお会いすることがあったと思います。
有本)何度もインタビューや番組出演もさせていただきましたし、それ以外の場面でも、いろいろな取材をさせていただきました。
飯田)安倍さん自身も冗談めかして語っていらっしゃいましたが、特に総理を引き継ぐときは、「行きはSPに囲まれて行くのだけれど、帰りは1~2人だけなのだよ」とおっしゃっていました。
有本)身軽になっていいという面もありますよね。「SPに囲まれている生活が本当に大変だ」と他の方から聞いたことがあるので、それはそうなのでしょう。
飯田)身軽になって。
日本の警備を全面的に見直すべき ~海外で総理経験者が街頭で応援演説することはない
有本)総理をお辞めになってから、例えば夕刊フジで今年(2022年)の4月にシンポジウムがあり、一緒に登壇させていただきました。
飯田)シンポジウムに。
有本)そのときに私のアメリカ人の友人も来たのですが、警備が薄いので驚いていました。夕刊フジ側を責めるわけではないのですが、安倍晋三ほどの人物が登壇するのに「この警備でいいの?」と。日本の場合は銃社会ではないので、あまりピリピリしていないのですが、申し込んでいる人の属性がわかっていることもあり、あの種のイベントでは手荷物検査もほとんどないのです。
飯田)手荷物検査もない。
有本)諸外国では考えられないことです。米軍関係者なども「日本は警備を全面的に見直すべきではないか」と言っています。遊説という1つの日本的習慣も、外国では日本のようにはやらないですよね。
選挙のあり方も含めて見直さなければならない
有本)ヨーロッパなどでも、あのような街頭演説をたくさんやることはなく、しかも総理経験者もやるということはありません。その辺りを含めて、いろいろな反省点があるのではないかとおっしゃっています。
飯田)例えば、アメリカで現職や元職の大統領が来るとなったら。
有本)警備の数がまったく違います。
飯田)スタジアムのようなところにたくさん人を集めますが、入り口には手荷物検査が当然ありますね。
有本)例えば、総理を辞めると一議員に帰られるので、議員会館のなかのセキュリティとしては、部屋に入るとSPが1人いるわけです。しかし、特にそこで何かあるわけではなく、通常の議員の部屋に行くセキュリティと変わらないわけですよね。あれは私も多少の違和感がありました。
飯田)そこに行って厳重なチェックがあってしかるべき。
有本)面倒になるので、ない方が我々としてはいいのですよ。でも、「これはどうなのかな」と感じることはありました。
飯田)選挙の在り方も含めてということですね。
有本)その反省はあるでしょうね。
安倍元総理の功績をきちんと振り返るべきである
有本)もう1つは、自民党やいまの政権も含めて、安倍さんの功績をどう受け継いでいくのかということはとても大切です。先程も申し上げたように、西大寺の現場だけでも10万人が献花に訪れ、世界中から弔意が示されました。国葬儀を行うことも決まりました。
飯田)秋にも行う予定だということです。
有本)一方で、メディアによっては、例えば朝日新聞の川柳が取り沙汰されています。亡くなって間もないときに、惨殺された元首相の死を愚弄するような報道というのも、私は表現の自由は最大限あっていいと思いますが、クオリティペーパーが「それを行うのはないな」とも思います。
飯田)前提としての節度が問われているのですね。
有本)外国からのこれだけの評価も踏まえれば、「安倍晋三が遺したものは何だったのか?」ということをかみ砕いて、いろいろな人に伝えていくべきです。そのよいレガシーはきちんと引き継いで発展させていく必要があると思います。
飯田)東アジアだけでなく、世界全体で価値観を基にする外交を行いましたからね。
有本)そうですね。いまこれだけ世界情勢が不穏になっている。あるいは日本国内で言うと、例えば集団的自衛権の行使を一部認めた。これが90年代だったら、言及しただけで閣僚の首が飛ぶほどのことだったのです。そういうところも含めて、もう1度きちんと振り返る必要があると思います。
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