「分断が進むアメリカの現状」宮家邦彦が解説

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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が7月29日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。分断が進むアメリカの現状について解説した。

「分断が進むアメリカの現状」宮家邦彦が解説

米連邦議会議事堂前に集結したドナルド・トランプ大統領支持者=2021年1月6日、アメリカ・ワシントン 写真提供:時事通信

定点観測

新行)宮家さんはワシントンへの出張から帰られたところですが、アメリカの現状について話を伺えますでしょうか?

宮家)1981年に留学してから、これまで私は41年間、ワシントンで「定点観測」を行ってきました。ワシントンは政治の街だから、4年に1度人が変わるわけです。でも、そういう目先のものを追いかけていると結局、毎回振り回されるだけです。「ワシントンで何が起きているか」ということは、そこにずっと住んでいられるようなある程度「力のある」人で、右も左も上も下も男性も女性も含め、いろいろな形で情報を取れるように友達をつくって定期的に話を聞くことがいちばんいい。私はそれを「定点観測」と言うのです。私はそうした友人たちを「百葉箱」と呼んでいるのですが、百葉箱を知っていますか?

新行)校庭にあった白い箱ですよね。

宮家)そうです。あのなかに温度計や湿度計が入っていますよね。ワシントンに高い山はないのだけれども、例えば、高い山の上に住んでいるような友人の百葉箱を開けると「きょうは風が強い」と言うのです。山の上だから風が強いに決まっているのですが。

新行)山の上だから。

宮家)しかし、谷底に住んでいる人もいるわけです。谷底に住んでいる友人の百葉箱を開けて、「きょうは風が強い」ということであれば、それは地域全体に大風が吹いているということです。そのような形で、経験則なのだけれども、ワシントンの天気図を描こうと、41年間、毎年こんなことをやってきたわけです。

アメリカの民主主義自体に悲観的になっている人が多い ~その典型が米議会議事堂乱入事件

宮家)もともとアメリカはバラバラな国だから、ある程度の分断は進んでいたのだけれども、今回現地に行ってみて、アメリカの民主主義自体に悲観的になっている人が多いことに驚きました。

新行)そうなのですか。

宮家)私はアメリカの民主主義は、ある程度持つのではないかと思っていたのだけれども、必ずしもそうではないらしい。その典型がトランプさんをめぐる騒ぎですよ。

新行)米議会議事堂乱入事件ですね。

宮家)2021年1月6日に起きた事件です。2020年11月の大統領選挙でトランプさんは負けたのですが、彼は「あの選挙は盗まれたのだ」と言って負けを認めない。それで1月6日に副大統領が議会に行って最終的な結果を確定するときに、トランプさんを支持する人が暴徒となってアメリカ議会に乱入し、下手をしたら副大統領が何とかしろという動きまであったくらい危険な状況だったのです。

新行)そうでした。

宮家)それに対し民主党主導で下院の特別委員会が設けられ、現在も調査しているのです。その調査が佳境に入り、トランプさんに不利な情報が次々と出てきています。「あの空白の3時間数分にトランプ元大統領は何もせず、暴動をやめろとも言わず、1人でテレビ中継を見ていたのは一体何なのだ」というような議論があります。

共和党も民主党も内部分裂し、「4大政党」のアメリカ ~アメリカの内政の混乱は当分続く

宮家)分断という観点で言えば、アメリカは2大政党制と言われるではないですか。しかし、いまは2大政党ではなく、4大政党だという印象です。

新行)4大政党。

宮家)共和党はトランプ派と非トランプ派、それから民主党の方もリベラル強硬派とそうでない人に分かれてしまっています。両党とも中道の人たちが抜けてしまっているわけです。

新行)中道の人たちが。

宮家)これまで私たちが付き合ってきたような人たちが、みんないなくなってしまったという意味では、もう2大政党ではない。共和党も割れ、民主党も割れ、4大政党だというような議論もありました。そんな状況で、残念ながらアメリカの内政が今後、当分混乱することは間違いないだろうなというのが、今回大きく感じたことです。

中間選挙で民主党が勝てる要素が見えない

宮家)このあとどうなるかということですが、結論から言うと、中間選挙が11月にあるわけですが、正直に言って民主党が勝てる要素が見えてきません。

新行)民主党が勝てる要素が見えない。

宮家)やはりインフレと経済がいちばん大きな問題になっています。日本も同じだけれど、アメリカ国民は外交のことなどに通常、関心はないのです。ガソリンが1ガロン当たり2~3ドルいくらだったのが、今や5ドルになってしまっている。それにはみんな驚いています。

新行)車社会ですからね。

宮家)そうなると、民主党は下院では負けるでしょう。上院は勝つか負けるかわからないという状況だと言われているので、下手をしたらバイデンさんはレームダックになってしまうかも知れません。

2023年夏以降、トランプ氏でもバイデン氏でもないまったく違う人が出てくる可能性は常にある

宮家)では2024年の大統領選挙はどうなるのか。トランプさんが出るのか……。本人は出たくて仕方ないのだけれども、いま世論調査をやってみると、だいたい民主党も共和党も60%~75%くらいの人が「もうバイデン氏でもないしトランプ氏でもない」と言っているのです。

新行)どちらでもない。

宮家)いまの段階では、まだあの2人の名前が出てくるかも知れないけれども、2023年夏以降になれば、どこかからまったく違う人たちが出てくる可能性が常にあると思います。その意味では、まだ2024年の大統領選挙を占うのは早すぎる。鬼が笑うどころか、「先を読むのは早すぎるかな」という気がします。

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