岸田総理「最大9基の原発稼働」に対して「反応の悪くない」日本国民
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東京大学先端科学技術研究センター特任講師の井形彬が7月28日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。チェニジアで行われるTICADの出席に合わせて調整に入った岸田総理のサウジアラビア訪問について解説した。
岸田総理、8月にサウジアラビア訪問へ
岸田総理は8月27~28日にチュニジアで開かれる「TICAD」の出席に合わせ、サウジアラビアを訪問する方向で調整に入った。アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなどへの訪問も検討している。
新行)近く、総理が最終判断する意向とのことですが、エネルギーの安全保障も大切になってきています。
井形)日本はエネルギーでは中東への依存度が高いので、「TICAD」などを通じて中東やアフリカにアプローチすることは重要だと思います。
国によって違うひっ迫するエネルギーへの対応
井形)どの国もエネルギー需要がひっ迫しているのですが、国によって対応や考え方が違うのです。
新行)国によって。
井形)ヨーロッパの人たちと話していて「どうするのか」と聞くと、「石炭や石油を燃やす火力発電に戻すのは論外だ」と言います。
新行)論外。
井形)「気候変動を止めなければならない」という意識が強いのです。そうなると原子力発電なのか、ソーラーエネルギーなのかということで、再生可能エネルギーに注力するのがヨーロッパです。
新行)ヨーロッパは。
井形)インドの人と話すと、「そんなもの火力発電で燃やせばいい」と言います。環境には短期的に犠牲になってもらうと。「経済が伸びているから仕方ない」という見方です。
岸田総理の「原発稼働」発言に関して反応の悪くない日本国民
井形)では日本はどうするのか。原発稼働に対して、日本国民はかなり反発するのではないかと思っていたのですが、先日、岸田首相が「最大9基の原発を稼働」と言ったことに対して、反応がそれほど悪くなかったのです。となると、日本としても今後どのようにエネルギーミックスを考えていくのか。選挙も終わったことですし、日本政府には腰を据えてエネルギー安保を考えて欲しいと思います。
新行)いまは暑いですし、冬になると寒くなり、命に関わる問題になりますよね。
井形)経済安全保障という点で見ても、日本が他国に依存しすぎてしまっている特定の重要物質に関しては、日本政府がある程度の補助金をつけたりして、サプライチェーンを多様化するという「経済安全保障推進法」が通っています。当てはまるものとして、半導体や医療品、バッテリー、レアアースや鉱石などの4分野が挙がっているのですが、こうなるとエネルギーも重要物資に当てはまるのではないかという議論が、今後出てくるのではないでしょうか。
エネルギーは1国に依存しない。また、権威主義国や過去に外交上の問題があり、供給を止めたことのある国からは輸入しない
新行)ヨーロッパでは脱炭素という考え方もあって、石炭火力発電を縮小してガス火力への依存が高くなり、ロシアに依存していた。そんななかで、今回のようにエネルギーを武器として使われると大変なことになります。
井形)特にドイツはロシアからかなりのエネルギーを輸入していて、ドイツ人のなかでも「まずいよね」と言っている人たちはいたのですが、依存を続けてしまった。そして今回のロシアによるウクライナ侵攻が起こり、ロシアに対して制裁を行ったら、ロシアから「エネルギーを止める」と言われてしまった。
新行)ドイツは困っています。
井形)「ノルドストリーム1」というロシアとヨーロッパを結ぶパイプがあるのですが、ロシアが急にそのタービンが壊れてしまったと言い出した。そのために売る分が8割減ると。それに対して、メンテナンスしているのはドイツのシーメンスという会社なのですが、「直すよ」と。「新しいタービンを送る」と言っているのに、ロシアはなかなか対応しない。明らかに恣意的に止めているのです。
新行)1つの国にエネルギーを依存してしまうことの怖さがあります。
井形)2つあって、1つは1国、あるいは少数国だけに依存しすぎてしまっているという数の問題。もう1つは、依存している対象の国が、民主主義国や自由経済の国であれば、恣意的に止めることが国内法上難しいのです。
新行)国内法上。
井形)特定の国に関しては、権威主義である、あるいは過去の政策を見て「外交上の問題がある場合には止めてきている」など、トラックレコードがある国に対しては依存しない。量と質の両方で見ていく必要があると思います。
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