ジャーナリストの須田慎一郎が8月1日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。7月28日に初会合が開かれた関係府省庁の幹部でつくる葬儀実行幹事会について解説した。
葬儀実行幹事会
参院選の街頭演説中に銃撃を受け暗殺された安倍元総理の国葬に向けて、政府は7月28日、関係府省庁の幹部でつくる「葬儀実行幹事会」の初会合を開いた。外国の要人を含めて多くの参列者が見込まれることから、警備体制の構築など、万全の準備を進めていくことを確認した。
新行)9月27日に日本武道館で行われる安倍元総理の国葬について、7月28日の葬儀実行幹事会には、各省庁の官房長や局長ら約30人が出席。国葬に向けた準備が本格化していくということです。
須田)国葬をめぐっては賛否が分かれていることもあって、いま国会の方でも大きく揉めているというような印象が広がっていると思います。
立憲民主党が主張しているのは国葬問題ではなく、臨時国会を開いて「議論すべきことを議論しよう」ということ
須田)その辺りで、野党第1党の立憲民主党と自民党が対立を深めているという報道が相次いでいるのですが、そのような見方は一面的すぎています。特に立憲民主党サイドに対して、きちんと取材しているのかなという疑問があります。メディアはこれ一色なのだけれども、私は必ずしもそうは見ていません。
新行)国葬をめぐっての対立ではない。
須田)これは自分が取材した結果なのだけれども、大きな問題になっているのは、今回の臨時国会がたった3日間しか開かれないことなのです。もっと十分な会期を持ち、特に立憲民主党が主張しているのは、「夏休み返上で臨時国会を開き、議論すべきことを議論しましょう」ということなのです。
新行)議論すべきことを。
須田)国葬問題については、そんなに時間が必要ではない。国会での審議は必要だし、説明することも必要だけれども、「そんなことよりも、もっと重要なことがあるではないか」というのが立憲民主党サイドの思いなのです。
「物価高騰対策」が節電ポイントと肥料代についての2571億円だけという問題 ~金銭的にも少なすぎる
須田)いま予備費が5兆5000億円あるのだけれども、「ここから2571億円を物価高騰対策に使いましょう」ということが、29日に開かれた閣議で決定されたのです。
新行)物価高騰対策に。
須田)2571億円の内訳は、例のあまり評判のよくない節電ポイントについて1783億円を使う。そしていま肥料価格が高騰していて、農家の方々が大変な思いをされています。その上昇分の7割を補填する新たな仕組みをつくる。これに787億円を支出し、合計2571億円が物価高騰対策に使われるということです。
新行)2571億円。
須田)それだけかという。金額的にもわずかなものだし、「節電ポイントと肥料代の高騰対策しかやらないのか」ということです。この夏は、いろいろなものの値段が上がってきているなかで、「あとは何も手を打たないのですか」という問題があります。
野党が主張するのは「物価高騰対策についての議論が必要」だということで、国葬問題についてではない
須田)いま決めておかないと、秋の臨時国会まで待たなければ、物価高騰対策に代表される景気経済対策が何もなくなってしまいます。「それでは困るでしょう」というのが、立憲民主党などの野党が主張しているところなのです。本丸はここなのです。
新行)野党が主張しているのは。
須田)つまり国葬問題は政争の具的なものであって、これに関して与党を追及していけば、与党の支持率が下がるだろうという思惑です。そのような技術的な部分で使っている側面もあります。本丸としては、やはり国民生活に直結する物価高騰対策があまりにも不十分であり、「これはおかしい」というのが野党の主張しているところです。
新行)物価高騰対策が不十分。
須田)それに対してきちんと向き合わない与党もおかしいと、私は思います。この問題に関する多くのメディアの報道の仕方は、ずいぶんと取材不足で中身のないものになっていると思います。国葬問題で揉めているわけではないということです。
新行)物価高騰対策が不十分であって、3日間では足りないだろうという。
須田)全然足りないですよね。
「黄金の3年間」で与野党ともに「国民が反対しても必要な政策」を進めていけるのかどうか ~真価が問われる
新行)共同通信が30~31日に実施した全国電話世論調査によると、安倍元総理の国葬に対して「反対」が53%出たのだという結果も、大きく報じられている印象です。
須田)この問題については、メディアのキャンペーンもだいぶ効いているのだろうと思います。ただ、国葬問題がそうであるかは別としても、これから岸田政権は、国政選挙のない3年間という「黄金の3年間」を迎えます。
新行)そうですね。
須田)与野党ともにそうなのだけれども、その間、何をやらなければならないのか。選挙が近いと、やはり世論を気にしてある種、ポピュリズム的な政策にばかり進んでしまう。そうではなく、じっくり腰を落ち着けて、例えば有権者が反対するような政策に対し、「でも、これは中長期的には必要だ」というところを進めていける3年間になるのです。
新行)世論を気にせずに。
須田)国民の声を聞かないとか、世論の声を聞け、というような批判の通りにやっていると、ポピュリズムになってしまい、やるべきことができない状況になります。この3年間は与野党ともに「国民の反対するようなこと、でも必要な政策」があるはずなのです。そういうことをきちんと進めていけるのかどうか。その真価が問われる3年間だと思います。
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