「満点に近い」岸田外交 防衛費をどれだけ増額できるか
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外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が8月12日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。岸田改造内閣の外交・安全保障について解説した。
岸田改造内閣の外交・安全保障
第2次岸田改造内閣が8月10日に発足した。岸田総理は「有事に対応する政策断行内閣」と掲げている。
飯田)岸田総理も内閣発足後の会見のなかで「政策断行内閣」として、外交・安全保障や新型コロナ、あるいは経済などさまざまなテーマを挙げていましたが、まずは顔ぶれをご覧になっていかがですか?
バランスが取れている岸田外交 ~ペロシ氏の訪台後の状況が証明
宮家)顔ぶれを見る限り、よく考えられたバランスではないかと思います。ただ、内政の問題はともかくとして、立場上言いにくいのだけれども、お世辞抜きで申し上げて、最近の外交自体は「満点に近い」と言ってもいいと思います。
飯田)外交は。
宮家)安倍外交が続いているからではないのです。2012年の尖閣事件以降、日本周辺の安全保障環境が激変したことに対応して、日本の外交も変わらざるを得なくなり、それに沿った形であるべき外交が過去10年行われている。そうした環境の激変を証明したのが、今回のペロシさんの台湾訪問後の状況です。
飯田)環境が変わったことを証明したのが。
宮家)こういうことが起こり得るから、政策を少しずつ変えていかなければいけなかったわけです。その意味では1つの流れに乗っていて、正しいと思います。
飯田)1つの流れに乗っている。
宮家)顔ぶれはともかく、やり方としては「官僚組織をうまく使っているな」という気がします。安倍さんの外交は統治方法そのものなのですけれども、どちらかと言うと大統領制のようなところがあって、側近がいてスピーチライターがいて、上からのトップダウンで政策決定を行う。
飯田)安倍元総理の外交は。
宮家)それに対して、官僚組織のいい面を上手く使い、オーソドックスながらよく考えられた外交をするのも1つのやり方です。どちらもメリット、デメリットがあると思うけれど、その意味では、バランスの取れた外交だと思います。
浜田防衛大臣になり、「防衛費の抜本的な増額」はどうなる ~社会保障費などとバランスを取り、できるだけ増やしていただきたい
宮家)その上で、「ではどうなのですか」と言われると、「おや?」 と思ったのは、防衛省に前事務次官の島田さんがいるではないですか。これまで彼は省顧問で、かつ政策参与をやっていました。それが浜田新大臣になり、顧問としては残るけれど参与は外れるということになった。
飯田)政策参与は退職すると。
宮家)これを見て、財源の問題もありますから、「防衛費を無茶苦茶に増やすわけにもいかないな」という印象を持った人は多いと思います。
飯田)防衛費を。
宮家)確かに多ければ多いほどいいという話ではないし、まず数字ありきではないと思うけれども、日本がやらなければいけないこととして、お金が掛かるのは事実なのです。5年以内に抜本的に増やすと。しかし、具体的な財源をどうするのかということを考えると、林さんと浜田さんが外務・防衛になってどうなるのか。
飯田)浜田防衛大臣になり。
宮家)当然ながら、経済産業相も極めて重要です。そして経済安保は高市さんでしょう。経産相は西村さんです。このような政策に詳しい経験者がうまく連携を取って、あるべきところに落としていくという意味では期待しているし、それはやらざるを得ない。どのくらい増やせるのかは、社会保障費などとのバランスを取らなければいけないわけですから、できるだけよく考えて増やしていただきたいと思います。
防衛費5.5兆円では足りない
飯田)ペロシ氏訪台と、そのあとの台湾周辺での演習直前に、自民党の部会では5.5兆円という数字が概算要求の段階で出てきました。このあと事項要求があって、全体の額はもう少しあるかも知れませんが。
宮家)もう少し増えないとまずいでしょうね。無茶苦茶に増やすわけにもいかないとは思いますが、中国が判断ミスをしたおかげで増やさざるを得ない状況への理解が深まってきたのは事実です。ミサイルを5発も撃ち込まれて、「防衛費が全然増えません」というわけにはいかないだろうと。
飯田)逆のメッセージが出てしまいますね。
宮家)いろいろな要素を考えて、しっかりとした額を決めていただきたいと思います。
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