外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が9月9日、ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」に出演。逝去したエリザベス女王について解説した。
イギリスのエリザベス女王が逝去
イギリス王室は9月8日、女王エリザベス2世が逝去したと発表した。96歳だった。女王の逝去を受けて、長男のチャールズ皇太子(73)が新国王として即位した。
新行)ロンドンからの共同によると、トラス首相は8日に首相官邸前で演説し、「女王は私たちに必要な安定と強さを与えてくれた」と功績を称え、「女王は英国の精神そのものであり、その精神は今後も続くだろう」と強調しました。またチャールズ新国王は声明を発表し、「私たちは大切な君主であり、多くの人に愛された母の死を深く悼みます。英国民や世界中の人々が喪失を感じるだろう」と哀悼の意を表明されました。
宮家)トラスさんのおっしゃる通り、素晴らしい仕事をされたと思います。同時に大英帝国の終わりというか、美しい最後を象徴するような君主でもあったと思います。
エリザベス女王の宮殿は基本的に王族の私有財産
宮家)日本にも皇室がありますし、イギリスは同じ議会制民主主義国家のお手本なのですが、よく見ると微妙に違うのです。エリザベス女王の宮殿は、どこまでかわかりませんが、基本的に王族の私有財産のはずです。日本とはずいぶん違います。
新行)宮殿は王族の私有財産。
ロンドン五輪ではジェームズ・ボンドとも共演
宮家)昔、オーストラリア外交官の友人がいたのですが、彼はいつの間にかバッキンガム宮殿の広報官になっていたのです。
新行)そうなのですか。
宮家)同じ英連邦とはいえオーストラリア人ですよ。優秀な人なのですが、「なぜあいつがなるのだろう?」と思いました。彼らはしっかりとものを見ていて、優秀な人材であれば、イギリス以外からでも人を取ってくるのです。すごい王室だなと思いました。日本では考えられません。
新行)考えられませんね。
宮家)また、イギリス人のいいところだと思うのですが、女王はジェームズ・ボンドと共演しているのですよね。
新行)ロンドンオリンピックで。
宮家)オリンピック以外でもいろいろなところで共演しています。日本であれば、ゴルゴ13と天皇陛下がテレビに一緒に出るようなものですからね。あり得ないですよ。そういうことを平気でやるのもイギリスらしいと思います。広い意味でのオープンさが、イギリス王室を強くしているのだと思います。
政治的な発言も多かった
宮家)しかも彼らは結構政治的な発言もするのです。エリザベス女王も比較的、政治的なことに触れる発言が多い。ヨーロッパの君主として不思議なことではないと思うのですが、驚いたのは習近平さんがイギリスを公式訪問したときの発言です。報道によれば、エリザベス女王がオフマイクで「あの人たちは失礼ね」と言っていたそうです。
新行)「大使にとても失礼でした」とおっしゃっていたそうです。
宮家)彼女も自らの意志を持って、「おかしい。失礼だ」と思ったことに対しては、きちんと発言するのだなと思いました。中国の代表団が来たときには当然ながら、イギリス警察の関係者が警護するわけです。その警察の人たちと会ったときに「あなたたち大変だったわね」と言っています。それはオンマイクで言っていました。日本とは違う意味で、本来のヨーロッパ的な君主としての仕事をしていた感じがしました。
新しいイギリスをつくることを受け入れた
宮家)トラス政権ができたわけですけれど、報じられている通り、主要閣僚に白人男性がいません。考えてみたら、彼女が引き継いだ大英帝国は世界中に植民地があり、徐々に大英帝国が衰えていくわけですが、彼らに市民権を与えましたから、アフリカ系もいるしインド系もいます。いろいろな人が育つ中でなかで新しいイギリスをつくり、それを彼女は受け入れていった。トラス政権ができて主要閣僚に非白人を多く登用しても、イギリスがきちんとやっていけるような「安定と強さ」をつくったのだと思います。
新行)謹んで哀悼の意を表します。
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