台湾有事が起きても「弾薬も弾薬庫もない」日本の現状

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青山学院大学客員教授でジャーナリストの峯村健司が9月20日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。防衛省が独自製造の検討に入った輸血用血液について解説した。

台湾有事が起きても「弾薬も弾薬庫もない」日本の現状

陸上自衛隊「富士総合火力演習」に参加した19式装輪自走155mmりゅう弾砲(右)。手前は87式砲側弾薬車=2022年5月28日午前10時33分、静岡県御殿場市の東富士演習場 写真提供:産経新聞社

防衛省が輸血用血液の独自製造を検討

防衛省は、自衛隊員のための輸血用血液製剤を自前でつくり、長期保存する検討に入った。日本周辺での有事への対応を想定し、外部調達しているこれまでの血液製剤とは別に、隊員らから採血して冷凍状態で保管しておく。

血液の確保に防衛省が動いたことは大きな進歩

飯田)冷凍赤血球をつくるということのようですが、こういうものを独自につくり出すのですね。

峯村)このニュースは地味ですが非常に重要なニュースです。負傷した兵士の血液がなければ戦えないので、血液の確保に防衛省が動いたのは小さな一歩に見えますが、私は大きな進歩だと思います。

飯田)血液の確保に動いたことは。

峯村)アメリカなどはそうですが、他の国では国民から献血を募り、それをストックして有事に使うという体制ですけれど、日本はそのような態勢は整っていません。血液製剤という形で確保しておくことは、1つの新しいやり方だと思います。

尖閣や台湾で有事が起きても、弾薬もなければ弾薬庫もない日本の現状 ~弾薬の多くは北海道に保管

峯村)また最近の別の記事では、「火薬がまったく足りていない」という内容が記されています。我々の業界では当たり前の話なのですが、さまざまなウォーゲームやシミュレーションを行うと、日本はすぐに弾切れしてしまう。

飯田)弾がない。

峯村)冷戦期、ソ連による侵攻を備えるため、ほとんどの弾薬は北海道に保管されているのです。尖閣有事や台湾有事が起きた際、北海道から南西諸島に弾薬を運ぶときに、どの船はどの船なのか。自衛隊の輸送艦では足りず、民間の船もみんな嫌がってやらない。過去に参加したシミュレーションでは、弾薬が十分に運べずに、「中国軍に負けました」という結果になったこともあります。

飯田)ウォーゲームのシミュレーションで。

峯村)そういう意味では、弾の問題は重要なのです。

飯田)そうですね。

峯村)では現在、南西諸島にどれだけの弾薬を置けるか。必要ならば「どんどん置けばいいではないか」と言う方もいらっしゃいます。しかし、「火薬類取締法」が厳しく、弾薬庫を新設するのも難しい。弾もなければ置く場所もないというのが、日本の現状です。

飯田)弾もなければ置く場所もない。

峯村)おそらく、戦争になったら「2ヵ月で弾が切れる」と言われています。いまのウクライナがあの状況で頑張れるのは、弾があるからなのです。

飯田)ウクライナには。

峯村)だからロシア軍の猛攻撃にも耐えられますが、あのような量は、いまの日本にはありません。

司令部を地下につくる、滑走路を強くするということは重要な抑止力になる

峯村)もう1つ重要なのが、今度の予算にも入っていますが、敵から攻撃を受けた際に滑走路や司令部が壊れず耐えられるか……抗堪化と言いますが、これを盛り込んだことも重要です。司令部を地下につくる、滑走路を強くする。また、攻撃されてもすぐに修理できるようにすることは重要です。「台湾有事は日本の有事である」と亡くなった安倍元総理がおっしゃっていましたが、「日本も一緒に攻めていくぞ」というイメージがあるけれど、日本がやらなくてはならないのはむしろ守りの話が重要なのです。

飯田)守る方。

峯村)そうです。習近平氏的な言葉を借りると、「戦える軍にならなければいけない」ということです。いまのままでは正直、まったく戦えません。この戦えない状況を敵国が見た場合、攻めたい衝動に駆られます。そうさせないためにも、これは重要な抑止力の1つです。

「日本は下手に手を出すと厄介だ」と思わせることが抑止力になる ~面倒な存在になること

峯村)「日本は下手に手を出すと厄介だ」と、「攻撃されるかも知れない」と思わせる反撃能力が必要です。現状では攻撃されてもやり返せないわけですから、あっさり台湾侵攻や尖閣奪取に動きかねません。

飯田)いまの日本の状況では。

峯村)私が習近平氏だったら、きょうにでもやります。そのぐらいいまの日本ならば、まったく戦えないですから。そうではなく、手出しができないような、面倒くさい存在になれるか。これが抑止力なのです。

飯田)面倒くさい存在にどうなるか。

抑止が破られないようにするためには防衛費2%では足りない ~防衛費は保険であり、無駄なものではない

峯村)我々は、抑止が破れるとどうなるかをウクライナで見ているわけです。対応するためには、GDP比2%の防衛費ではとても足りません。

飯田)足りない。

峯村)2%ありきではなく、「どれだけの予算が必要なのか」ということを計算しなくてはいけないのです。もちろん福祉のため、また学校をつくるためにお金を使うことも大事です。できれば両方必要ですが、予算が足りない。

飯田)両方はカバーできない。

峯村)そうなった場合、いくら学校をつくったとしても、今回のウクライナ情勢を見ればわかる通り、抑止が破れてしまえば何億円、何兆円かけたものが一晩で壊れてしまいます。

飯田)抑止が破られれば。

峯村)それを守ることも重要な国益になるわけです。ですから、そういうところにもお金を割く必要がある。防衛予算は無駄なものではありません。保険なのです。

飯田)防衛予算は。

峯村)もしかしたら掛け捨て保険になるかも知れない、でも、それはそれでいいのです。そういう発想で見直さなければならないと思います。

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