これでは賃金は上がらない 消費者物価指数2.8%上昇も「サービス」上昇は0.2% 

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ジャーナリストの佐々木俊尚が9月21日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。前年同月から2.8%上昇した8月の消費者物価指数について解説した。

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

8月の消費者物価指数2.8%上昇、およそ31年ぶりの伸び率

家庭で消費する物やサービスの値動きをみる8月の消費者物価指数は、天候による変動が大きい生鮮食品を除いた指数が2021年の同じ月を2.8%上回った。2.8%の上昇率は7年10ヵ月ぶり。消費税率引き上げの影響を除くと1991年9月以来、30年11ヵ月ぶりの水準となる。

飯田)ただ、生鮮とエネルギーを除いた数字は1%台だという報道も出ていますが。

佐々木)「物価高」と言うと、メディアの考え方は1970年代くらいからあまり変わっていないと思います。1970年代は石油ショックなどで「狂乱物価」などと言われ、「物価高で大変だ」と騒がれました。

飯田)1970年代は。

佐々木)あの時代から、「物価高はよくない」という思い込みだけで生きているのがメディアの人の習い性で、未だに物価が上がると「〇〇企業は企業努力で値上げを抑制」とか、「生活防衛のために野菜を食べ切りましょう」などという報道があります。しかし、問題は物価が上がることそのものではなく、物価が上がっても賃金が上がらないことなのです。

物価が上がらないので賃金も上がらない、賃金が上がらないので物価がさらに下がる ~デフレから脱却するためには物価を上げて賃金が上がらなければならない

佐々木)平成30年間のデフレ時代に何が起きたかと言うと、物価が上がらない故に賃金も上がらない。賃金が上がらないとものが買えないので、さらに物価が下がるという繰り返しがデフレを招き、それがずっと続いたわけです。

飯田)そうですね。

佐々木)デフレを脱却するためには、物価が上がらなければいけない。物価が上がって、それに伴って賃金が上がれば、初めてデフレから脱却できるというのが、日銀とアベノミクスがやってきたリフレ政策だったのです。

飯田)賃金が上がってデフレから脱却することが。

佐々木)しかし、その議論を完全に無視して、未だに「物価が上がるのはけしからん」とだけ言い続けているのはおかしいのではないでしょうか。

ガス代や電気代が値上がっても賃金に反映されない ~人の手がかかるサービス部分は0.2%しか上がっていない

佐々木)読売新聞が取り上げていましたが、値上げ分のうち、ものとサービスをそれぞれ分けてみましょうと。ものは食料品やガソリン、ガスや電気などです。ウクライナ侵攻の影響もあって、食料やエネルギー価格が上がっています。実際に電気は21%、ガスは26%も上がっている。

飯田)食料やエネルギーの値段が上がっています。

佐々木)それに対してサービス。家賃や運賃など、要するに人間の手がかかるものです。その上がり方は僅か0.2%しかない。

飯田)サービス関連は。

佐々木)結局、コストプッシュインフレ……コストが上がったことによる値上がりなので、いくらガス代や電気代が上がったとしても、賃金には反映されないわけです。コストに吸収されてしまいますから。賃金が上がるためにはサービス部分、人の手がかかっているところが値上がりしなければいけないのだけれど、そこが0.2%しか上がっていない。これでは賃金は上がりようがありません。

いかにインフレマインドにして購買力を上げるか

佐々木)もう1つのポイントとして、全体の物価が上がっていくと、「仕方がないから買うか」とならなければ企業に反映されません。いままでは近所のスーパーで卵が100円だったものが150円になると、「これはけしからん」と。「別の遠くのスーパーまで行って120円の卵を買おう」としていたのだけれど、「これだけ値上がりしているのだから仕方がないし、高くても買うか」とマインドが変われば、近所のスーパーで150円の卵を買うようになるわけです。

飯田)「高くても買おう」とマインドが変われば。

佐々木)マインドが変化すると、おそらく全体の物価が上がっていって、企業側も余裕ができ、「賃金を上げよう」という話になる。どこまで行ってもマインドの問題なのでしょう。「デフレマインド」という言葉がありますが、デフレマインドから脱却して、「いかにインフレマインドにしていくか」が大事だと思います。

欧米でサービス部分の値段も上がっているのは雇用の流動化が進んでいるため ~日本では簡単に雇用流動化できない

佐々木)欧米は値上がりで大騒ぎしているのだけれど、向こうも同じようにエネルギーや食料のコストプッシュインフレのはずなのに、同時にサービスの値段も上がっているのです。

飯田)日本とは違って。

佐々木)「こんなに安い給料では働けない」と離職する人がたくさん現れて、仕方がないから企業側も物価に合わせて給料を上げようという話になっているのだけれど、日本はなかなか離職しない。

飯田)難しいですね。

佐々木)これは雇用の流動化が乏しいことも背景事情にあると思いますが、かと言って一気に「仕事を辞めさせることを自由に」とやってしまうと、また混乱を招くので、簡単には雇用流動化できないと思います。

「サービスの価格も上げ、それが賃金に還元される構造をどう描くか」が政治の課題 ~まだ描けない岸田政権

佐々木)物価が上がっていくなかで、「サービス価格も上がっていき、それが賃金に還元されるか」という構造をどう描くのか。ここが政治の課題ではないかと思うのですが、いまのところ岸田政権はその構造を描けるところまではいっていないわけです。

飯田)総合経済対策に関しても、「10月になってから臨時国会でやるのだ」と。随分と悠長なことを言っているなと思います。

佐々木)いつも後手後手で、検討ばかりしている検討使さんですからね。

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